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第4回活動報告:不正融資を取り締まれ

不正融資の行方

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(9) 不正融資の行方

俺たちが競売に参加するようになって、1年が経過した。過去1年間に競売で取得した物件数は300件を超えた。金額にすると約40億JDだ。稼いだ利益も10億JDを超えた。
残念なことに、Lシリーズは競売にはまだ出てきていない。

今期は不動産取引が順調で年間予算をクリアすることができた。いい案件だったと思う。


ところで、最近は、内部調査部のメンバーが全国に出張することが、ほとんどなくなった。

まず、提携している現地の不動産仲介会社に実査を依頼するようになったのが理由の一つだ。
また、裁判所が実施する競売についても、以前は現地に訪問して入札しなければいけなかったのだが、今はオンライン入札ができるから出張する必要がない。
毎週出張するのが面倒になってきたガブリエルとポールが、オンライン入札制度を開始するように俺に直談判してきた。オンライン入札のシステムは既に存在していたのだが、参加者の本人確認・反社会的勢力の排除などがネックになっていて、稼働していなかっただけだ。

次に、俺たちが競売に参加するようになって、落札価格は少し上がったと思う。ただし、参加者は劇的に増加したわけではない。
理由は、ジャービス王国の競売物件は、かなりの確率で占有者がいて、立退かせるのに手間が掛かるからだ。俺たちは、内務省に連絡して占有者を立退かせることができるが、普通の不動産会社には荷が重い。不動産会社は自社が管理している物件など、素性が知れている物件に対しては入札するものの、それ以外の物件は怖くて手が出せないらしい。主な占有者が反社会的勢力だからだ。

ところで、不正融資に関しては、内務省が追加で調査したところ、俺たちが調べた結果と大きく違うところはなかったようだ。不正融資に銀行員も関与していたということで、内部統制に不備が問題となった。銀行と不動産会社には業務改善命令が出されたようだ。担当者のリードとスティーブンは解雇されたらしい。

なお、今回の事件の本質は、個人投資家に対する過剰融資が問題だったと言えるだろう。
この点に対応するために、総務省が主導して、収入の3分の1を超える融資を禁止する総量規制が制定した。これで、過剰融資が少なくなるはずだ。
ただし、本人が収入を偽装していたら、何の効果もないのだが。

そういうわけで、俺たちの不正融資の調査は終了した。
少しだけ状況は改善しただろう。
どういうところが?と聞くのはやめてくれ。

今回は事件と言えるかどうか分からないのだが、今期予算が達成できたから勝ちとしよう。
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