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第5回活動報告:仮想通貨の詐欺集団を捕まえろ
連鎖倒産(その2)
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(7) 連鎖倒産 <続き>
しばらくすると、ジャービット・エクスチェンジに電話をしていたスミスが戻ってきた。
「やはり、急にジャービット・コインの保有者が、買取りを求めてきたようです。しばらくは買い気配を引き下げながら、ジャービット・コインを買取っていたようですが、売りが収まらず、一旦、取引を停止したようです。
社長のホセが言うには、ジャービット・エクスチェンジの決済資金は、今のところ問題ないようです。ただ、ジャービット・コインの時価が下がり過ぎると、顧客に迷惑が掛かるからなるべく下げずに買取りを続けたい、と言っていました。」
「顧客に迷惑かけたくないのは分かるけど、ジャービット・コインを安く買わないと、ジャービット・エクスチェンジの資金が持たないよね?」と俺はスミスに言った。
「そう思います。投資家は価格が下がって損するでしょうが。ジャービット・エクスチェンジが幾らでも高値で買い支えるだけの資金力があるとは思えません。ジャービット・エクスチェンジが買取りに使える資金は、ジャービット・コインの発行額が上限でしょうから。」
「そうだよね。ところで、誰が売ってきているか聞けた?」
「ある投資サロンに参加している人が、一斉に売ってきたようです。電話対応した会社の担当者が言うには、その売却した投資家たちは『Xデーが迫っているから』と言っていたようです。」
「Xデーって意味深な言葉だ。その投資サロンの情報は聞けた?」
「ホセはその投資サロンを知っているようで、エミリーが運営している投資サロンだと言っていました。」
「エミリーって、フォーレンダム証券のエミリーかな?」
「そうじゃないですか。」とスミスは言った。
「エミリーに話を聞きに行った時に、内部調査部がいつ調査に入るか聞いてきたよね。初めから、内部調査部にジャービット・エクスチェンジの調査をさせるように、誘導していたのか。投資家にジャービット・エクスチェンジの口座を解約させて、自分の商品を売り込もうとしていたのかな。」
それにしても、余計な風評を立ててくれたものだ。投資サロンに集まる個人投資家に内部調査部の情報をリークして、ジャービット・コインを売らせている。暗号資産は今のところインサイダー取引には該当しない。Xデーはいつと言っているのだろう?
俺が一人で考えていると、スミスが話しかけてきた。
「エミリーに連絡をとって、状況を確認しましょうか?」
確かに、投資家をどのように誘導しているか知るためにも、エミリーに確認しておくべきだろう。
「そうだね。どれくらいのジャービット・コイン(金額)を、いつまでに売却させようとしているか、聞けたら聞いてほしい。」と俺は言った。
俺が言うと直ぐに、スミスはエミリーの名刺に書いている連絡先に電話し始めた。
他のメンバーも、全員各社の状況を確認するために、電話している。
今日は、内部調査部始まって以来、一番騒がしい日になりそうだ。
活気がある、と言って良いかは不明だが・・・。
個人投資家が損するとしても、暗号資産交換業者を俺たちが助けるというのは、ちょっと違うだろう。投資は自己責任だし、国外に流れていく資金を国が補填することはできない。
今回は、暗号資産の状況を調査して、できる範囲で動くしかないだろう。
と、俺が一人思い耽っていたら、スミスが話しかけてきた。どうやら、エミリーとの電話が終わったらしい。
「部長、エミリーに状況を聞きました。1週間前に投資サロンを開催した際に、エミリーは参加者にジャービット・コインの調査を我々が開始することを伝えたようです。ただ、その時は誰もが半信半疑だったようで、直ぐに売却しようと動いた投資家はいなかったようです。」
「そりゃそうだ。内部調査部が調査するだけで、ジャービット・コインが値下がりするわけでも、ジャービット・エクスチェンジが破産するわけでもないからね。」
「ただ、エミリーが参加者に伝えた内部調査部の調査日と同日に、偶然にもXFTが破産しました。今日になって、投資サロンの参加者がエミリーの話をインターネットで拡散しています。そして、ジャービット・コインが無価値になる日をXデーとして、予想しているサイトも出てきました。」
「そうすると、エミリーが1週間前に投資サロンで話した内容が、XFTの破産で尾鰭がついて、ジャービット・コインに売りが殺到している、ということ?」
「そうみたいです。エミリーは投資サロンの参加者にジャービット・コインを売らせて、自社の投資信託を販売したかったようです。でも、今のところ投資サロンの参加者には投資信託を販売できていません。」
「自業自得だ。」
「1週間前の投資サロンで参加者の不安を煽ったから、今日は終日電話が鳴り止まないようです。投資家はエミリーがジャービット・エクスチェンジの内部情報を知っているんじゃないかと思っていて、いろいろ聞かれるから、どう対応したらいいか、困っている様子でした。」
「余計なことするから、こういうのはことになるんだよ。」と俺は言ったものの、良い解決策は思いつかない。
結局、その日は暗号資産交換業者の情報収集だけで終わった。
XFTの倒産騒ぎは数日で落ち着くだろう。現時点の対応としてはマーケットの状況をウォッチする方針でいこう、と俺は考えた。
しばらくすると、ジャービット・エクスチェンジに電話をしていたスミスが戻ってきた。
「やはり、急にジャービット・コインの保有者が、買取りを求めてきたようです。しばらくは買い気配を引き下げながら、ジャービット・コインを買取っていたようですが、売りが収まらず、一旦、取引を停止したようです。
社長のホセが言うには、ジャービット・エクスチェンジの決済資金は、今のところ問題ないようです。ただ、ジャービット・コインの時価が下がり過ぎると、顧客に迷惑が掛かるからなるべく下げずに買取りを続けたい、と言っていました。」
「顧客に迷惑かけたくないのは分かるけど、ジャービット・コインを安く買わないと、ジャービット・エクスチェンジの資金が持たないよね?」と俺はスミスに言った。
「そう思います。投資家は価格が下がって損するでしょうが。ジャービット・エクスチェンジが幾らでも高値で買い支えるだけの資金力があるとは思えません。ジャービット・エクスチェンジが買取りに使える資金は、ジャービット・コインの発行額が上限でしょうから。」
「そうだよね。ところで、誰が売ってきているか聞けた?」
「ある投資サロンに参加している人が、一斉に売ってきたようです。電話対応した会社の担当者が言うには、その売却した投資家たちは『Xデーが迫っているから』と言っていたようです。」
「Xデーって意味深な言葉だ。その投資サロンの情報は聞けた?」
「ホセはその投資サロンを知っているようで、エミリーが運営している投資サロンだと言っていました。」
「エミリーって、フォーレンダム証券のエミリーかな?」
「そうじゃないですか。」とスミスは言った。
「エミリーに話を聞きに行った時に、内部調査部がいつ調査に入るか聞いてきたよね。初めから、内部調査部にジャービット・エクスチェンジの調査をさせるように、誘導していたのか。投資家にジャービット・エクスチェンジの口座を解約させて、自分の商品を売り込もうとしていたのかな。」
それにしても、余計な風評を立ててくれたものだ。投資サロンに集まる個人投資家に内部調査部の情報をリークして、ジャービット・コインを売らせている。暗号資産は今のところインサイダー取引には該当しない。Xデーはいつと言っているのだろう?
俺が一人で考えていると、スミスが話しかけてきた。
「エミリーに連絡をとって、状況を確認しましょうか?」
確かに、投資家をどのように誘導しているか知るためにも、エミリーに確認しておくべきだろう。
「そうだね。どれくらいのジャービット・コイン(金額)を、いつまでに売却させようとしているか、聞けたら聞いてほしい。」と俺は言った。
俺が言うと直ぐに、スミスはエミリーの名刺に書いている連絡先に電話し始めた。
他のメンバーも、全員各社の状況を確認するために、電話している。
今日は、内部調査部始まって以来、一番騒がしい日になりそうだ。
活気がある、と言って良いかは不明だが・・・。
個人投資家が損するとしても、暗号資産交換業者を俺たちが助けるというのは、ちょっと違うだろう。投資は自己責任だし、国外に流れていく資金を国が補填することはできない。
今回は、暗号資産の状況を調査して、できる範囲で動くしかないだろう。
と、俺が一人思い耽っていたら、スミスが話しかけてきた。どうやら、エミリーとの電話が終わったらしい。
「部長、エミリーに状況を聞きました。1週間前に投資サロンを開催した際に、エミリーは参加者にジャービット・コインの調査を我々が開始することを伝えたようです。ただ、その時は誰もが半信半疑だったようで、直ぐに売却しようと動いた投資家はいなかったようです。」
「そりゃそうだ。内部調査部が調査するだけで、ジャービット・コインが値下がりするわけでも、ジャービット・エクスチェンジが破産するわけでもないからね。」
「ただ、エミリーが参加者に伝えた内部調査部の調査日と同日に、偶然にもXFTが破産しました。今日になって、投資サロンの参加者がエミリーの話をインターネットで拡散しています。そして、ジャービット・コインが無価値になる日をXデーとして、予想しているサイトも出てきました。」
「そうすると、エミリーが1週間前に投資サロンで話した内容が、XFTの破産で尾鰭がついて、ジャービット・コインに売りが殺到している、ということ?」
「そうみたいです。エミリーは投資サロンの参加者にジャービット・コインを売らせて、自社の投資信託を販売したかったようです。でも、今のところ投資サロンの参加者には投資信託を販売できていません。」
「自業自得だ。」
「1週間前の投資サロンで参加者の不安を煽ったから、今日は終日電話が鳴り止まないようです。投資家はエミリーがジャービット・エクスチェンジの内部情報を知っているんじゃないかと思っていて、いろいろ聞かれるから、どう対応したらいいか、困っている様子でした。」
「余計なことするから、こういうのはことになるんだよ。」と俺は言ったものの、良い解決策は思いつかない。
結局、その日は暗号資産交換業者の情報収集だけで終わった。
XFTの倒産騒ぎは数日で落ち着くだろう。現時点の対応としてはマーケットの状況をウォッチする方針でいこう、と俺は考えた。
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