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第5回活動報告:仮想通貨の詐欺集団を捕まえろ
連鎖倒産(その1)
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(7) 連鎖倒産
内部調査部に戻った俺とガブリエルは、他のメンバーの様子がいつもと違うことに気付いた。騒がしく電話している。
どうしたのだろう?
近くにいたミゲルに聞いてみる。
「みんな忙しそうだけど、どうしたの?」
「暗号資産交換業者の連鎖倒産が起きそうです。XFTの破産で、投資家が資金を引き上げ始めたようで、暗号資産交換業者の口座から急激に資金が流出しています。」とミゲルは言った。
「資金繰りが厳しくなってる、ということかな?」
「そうです。幾つかの会社に連絡したら、暗号資産の売却オーダーが顧客からひっきりなしに入ってきていて、資金の確保が難しいと言っていました。暗号資産交換業者の保有している暗号資産の時価が下がっているから、いまは売りたくないようです。売却すれば多額の売却損が発生しますし。」
「顧客の注文を受けるために、カバー取引(顧客からの買取りを、そのまま同業者に売却すること)はできないの?」
「今のタイミングで暗号資産交換業者が暗号資産を売却すると、時価がさらに下がります。そうすると、狼狽した投資家がさらに暗号資産を売却するようです。」
「何となく想像できる。時価が急激に下がると、損切りしてくるからなー。」
「はい。結果として、どうにも対処できない状況になっているようです。」
「結構、厳しそうだね。」と俺は言った。
「そうです。業界があまりに危険な状況で、ジャービット・エクスチェンジの調査どころの話ではなくなっています。」とミゲルは興奮して俺に言った。
「そういえば、ジャービット・エクスチェンジはどうなの?状況を聞いている人いる?」と俺はメンバーに確認した。
すると、「1時間ほど前に、電話しました。」とスミスが言った。
「どうだったの?」と俺はスミスに確認する。
「私が電話をした段階では、社長のホセが何人かの投資家がジャービット・コインの売却の件で電話してきた、と言っていました。ただ、他の暗号資産に比べると、影響は小さいはずだと言っていました。
ジャービット・エクスチェンジで取り扱っているのは、ほとんどがジャービット・コインです。ジャービット・コインは他の暗号資産のようにカバー取引ができません。売り圧力が強まると、危険だと思います。」
「そうか。じゃあ、まだ大丈夫そうだね。」と俺が言った瞬間、スミスが「あれ?」と言葉を発した。
「どうしたの?そんなに驚いて。」と俺はスミスに聞く。
「いまジャービット・エクスチェンジのホームページを見ていたのですが・・・。」とスミスは言った。
「ホームページがどうしたの?」
「ジャービット・エクスチェンジは、ジャービット・コインの取引を停止しているようです。表示されている買い気配も、1時間前から暴落しています。ちなみに、これがジャービット・エクスチェンジのホームページに掲載されている、本日の5分足(あし)の日中チャートです。」と言って、スミスは俺に画面を見せた。
【図表5-4:ジャービット・コインの日中チャート(5分足)】
「あら、1時間前は6万~7万JDだったのが、3万JDまで落ちているね。何かあったのかな?」
※本書では、ジャービス・ドル(JD)は1円としています。
「ちょっと値動きが異常ですね。急に投資家の売りが殺到したんでしょうか?ちょっと、電話して聞いてみます。」と言って、スミスはジャービット・エクスチェンジに電話しはじめた。
俺はその間に、他のメンバーにも状況を聞いた。どの暗号資産交換業者もなかなか厳しい状況のようだ。こういう取り付け騒ぎは数日で収まるだろうから、1週間くらい耐えられれば、生き残ることができるだろう。
大企業の子会社は問題ないだろうが、資金力のない独立系の暗号資産交換業者は難しいかもしれない。
内部調査部に戻った俺とガブリエルは、他のメンバーの様子がいつもと違うことに気付いた。騒がしく電話している。
どうしたのだろう?
近くにいたミゲルに聞いてみる。
「みんな忙しそうだけど、どうしたの?」
「暗号資産交換業者の連鎖倒産が起きそうです。XFTの破産で、投資家が資金を引き上げ始めたようで、暗号資産交換業者の口座から急激に資金が流出しています。」とミゲルは言った。
「資金繰りが厳しくなってる、ということかな?」
「そうです。幾つかの会社に連絡したら、暗号資産の売却オーダーが顧客からひっきりなしに入ってきていて、資金の確保が難しいと言っていました。暗号資産交換業者の保有している暗号資産の時価が下がっているから、いまは売りたくないようです。売却すれば多額の売却損が発生しますし。」
「顧客の注文を受けるために、カバー取引(顧客からの買取りを、そのまま同業者に売却すること)はできないの?」
「今のタイミングで暗号資産交換業者が暗号資産を売却すると、時価がさらに下がります。そうすると、狼狽した投資家がさらに暗号資産を売却するようです。」
「何となく想像できる。時価が急激に下がると、損切りしてくるからなー。」
「はい。結果として、どうにも対処できない状況になっているようです。」
「結構、厳しそうだね。」と俺は言った。
「そうです。業界があまりに危険な状況で、ジャービット・エクスチェンジの調査どころの話ではなくなっています。」とミゲルは興奮して俺に言った。
「そういえば、ジャービット・エクスチェンジはどうなの?状況を聞いている人いる?」と俺はメンバーに確認した。
すると、「1時間ほど前に、電話しました。」とスミスが言った。
「どうだったの?」と俺はスミスに確認する。
「私が電話をした段階では、社長のホセが何人かの投資家がジャービット・コインの売却の件で電話してきた、と言っていました。ただ、他の暗号資産に比べると、影響は小さいはずだと言っていました。
ジャービット・エクスチェンジで取り扱っているのは、ほとんどがジャービット・コインです。ジャービット・コインは他の暗号資産のようにカバー取引ができません。売り圧力が強まると、危険だと思います。」
「そうか。じゃあ、まだ大丈夫そうだね。」と俺が言った瞬間、スミスが「あれ?」と言葉を発した。
「どうしたの?そんなに驚いて。」と俺はスミスに聞く。
「いまジャービット・エクスチェンジのホームページを見ていたのですが・・・。」とスミスは言った。
「ホームページがどうしたの?」
「ジャービット・エクスチェンジは、ジャービット・コインの取引を停止しているようです。表示されている買い気配も、1時間前から暴落しています。ちなみに、これがジャービット・エクスチェンジのホームページに掲載されている、本日の5分足(あし)の日中チャートです。」と言って、スミスは俺に画面を見せた。
【図表5-4:ジャービット・コインの日中チャート(5分足)】
「あら、1時間前は6万~7万JDだったのが、3万JDまで落ちているね。何かあったのかな?」
※本書では、ジャービス・ドル(JD)は1円としています。
「ちょっと値動きが異常ですね。急に投資家の売りが殺到したんでしょうか?ちょっと、電話して聞いてみます。」と言って、スミスはジャービット・エクスチェンジに電話しはじめた。
俺はその間に、他のメンバーにも状況を聞いた。どの暗号資産交換業者もなかなか厳しい状況のようだ。こういう取り付け騒ぎは数日で収まるだろうから、1週間くらい耐えられれば、生き残ることができるだろう。
大企業の子会社は問題ないだろうが、資金力のない独立系の暗号資産交換業者は難しいかもしれない。
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