第4王子は中途半端だから探偵することにした

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第7回活動報告:通貨危機を回避しろ

債券貸借取引(その5)

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(7)債券貸借取引 <続き>

俺はジャービス中央銀行での会議を終えて、内部調査部に戻ってきた。他のメンバーの作業進捗を確認するためだ。
まず俺は、ホラント証券会社に訪問していたスミスとポールから状況を聞いた。

「ホラント証券はどうだった?」

「感触は良好でした。スプレッドが小さいとは言え、為替取引で莫大な手数料が発生します。それに、額面3,000億JDの国債についても売却と買戻しを手伝わせてほしいと言っていました」とポールは言った。

※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円としています。

「まあ、手数料が大きいから断る理由はないよね。ところで、ホラント証券には国債売買について何かいいアイデアがあるの?」

「こういうことらしいです・・・」

そう言うと、ポールは資料(図表7-16)を取り出して俺に渡した。

【図表7-16:ホラント証券の提案した国債売買】
 



「ホラント証券が言うには、取引先の米銀に買戻し条件付きでジャービス国債を売却したいようです」

「へー。どうやるの?」

「まずジャービス・ドルの金利を3%から1%に下げます。そうすると、部長が説明したように、ジャービス国債は評価額が額面の118.9%(図表7-13)になりますよね?」とポールは俺に聞いた。

「そうだね」

【図表7-13:国債の評価(割引率1%の場合)(再掲)】
 


※DFは割引現在価値係数のことです。ここでは『1÷(1+金利)^年数』で計算しています。

「ジャービス・ドル・ベースでは評価額が額面の100%から118.9%に上昇します。でも、米ドルでは為替レートの影響で逆の結果になります」

「あー、そういうことか・・・」

俺は取引内容を理解した。
ポールは他のメンバーのために説明を続ける。

「そうです。金利を1%に引き下げるとジャービス・ドル安になります。為替レートが1米ドル=140JDから1米ドル=190JDになったとしましょう。いま額面3,000億JDのジャービス国債を購入すると、時価評価額3,000億JDを1米ドル=140JDで購入するので、21.4億米ドル(=3,000億JD÷140JD/米ドル)必要です」

「そうだね」

「金利が1%に下がった時点で額面3,000億JDのジャービス国債を購入する場合、時価評価額3,568億JD(=3,000億JD×118.9%)を1米ドル=190JDで購入するので、18.8億米ドル(=3,568億JD÷190JD/米ドル)です」

「ジャービス国債の評価額はジャービス・ドル・ベースでは高く(3,000億JDから3,568億JDに変化)なっても、米ドル・ベースでは安くなる(21.4億米ドルから18.8億米ドルに変化)のか・・・」

「そういうことです。次に、金利を4%に引き上げたときの国債の時価評価額は額面の91.9%(図表7-14)ですよね?」

「そうだね」

【図表7-14:国債の評価(割引率4%の場合)(再掲)】
 


※DFは割引現在価値係数のことです。ここでは『1÷(1+金利)^年数』で計算しています。

「金利を4%に引き上げて、為替レートが1米ドル=110JDになったとしましょう。額面3,000億JDの国債の時価評価額2,757億JD(=3,000億JD×91.9%)を1米ドル=110JDで売却するので、25.1億米ドル(=2,757億JD÷110JD/米ドル)で売れます」

「ジャービス・ドル・ベースでは時価評価額が3,568億JDから2,757億JDに下がっていても、米ドル・ベースでは18.8億米ドルから25.1億米ドルに上がるのか・・・」と俺は言った。

「さっきの資料(図表7-16)を見て下さい。i6は3,568億JDで米銀に国債を売却して、2,757億JDで米銀から国債を買い戻すので811億JD儲かります。米銀は18.8億米ドルで国債をi6から購入して、25.1億米ドルで国債をi6に売却するので6.3億米ドル儲かります」

俺はいいスキームだと思った。
合法的なインサイダー取引で、ジャービス王国にも米銀にも利益が出る。

「どっちも儲かるね」と俺は言った。

「Win-Winでしょ?」

「Win-Winだなー」

「やりますか?」

「やるかー」

こうして、債券貸借取引でジャービス中央銀行から借りる国債は、米銀との間で買戻し条件付売買をすることになった。
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