僕と猫と米沢牛 ― 勝手に他人の半生を書いてみた

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僕と猫と米沢牛

米沢戦争

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(16)米沢戦争

聡(さとし)が米沢派のスパイの息子だとすると、米沢南警察が必死に追っているはずだ。
シン米沢派は、リーダーの息子を殺害した米沢派のスパイを許さないだろう。

「聡は犯人として捕まるのか?」と武は猫に聞いた。

「どうだろう?もう北に逃げたんじゃないのか?」

「北に?」

「米沢市の北部は米沢北警察の管轄だ。米沢南警察は米沢市の北部を捜査できない。米沢北警察は米沢派だから、聡が北に逃げていたら捕まることはないだろうな。」と猫は言った。

「殺人でも逮捕されないのか・・・」武はつぶやいた。

「残念ながら、まだ日本は法治国家とは言い難いからな。戦後のごたごたに乗じて、いろんな勢力が交錯している。」

「いつになったら日本はまともな国になるんだろうな?」

「戦後の混乱期はそんなもんだ。治安も法律もあったもんじゃない。時間が経てば、少しずつ変わるとは思うけどな。」猫は冷静に言った。

「話を戻すけど、シン米沢派が聡を捕まえるためには、自分たちのテリトリー、つまり米沢市の南部でないと逮捕できないんだな?」

「もちろんだ。それよりも、聡に北部に逃げられると面倒なことが起こる。」と猫は言った。

「何が起こるんだ?」武は猫に聞いた。

「米沢戦争・・・」猫は静かに言った。

「米沢戦争?」武は思わず大声を出した。

「ああ。シン米沢派のリーダーの息子を殺害したんだぜ。シン米沢派が米沢派に報復しないわけがないよな?シン米沢派が米沢派に報復したら、今度は米沢派の怒りを買う。そうしたら、米沢派がシン米沢派に報復する。」猫は言った。

「復讐が復讐を呼ぶ・・・。復讐の連鎖ってことか。」

「ああ。世界中で起きている紛争と同じだ。どちらが最初に殺したかなんて関係ない。一線を越えると元に戻れない。米沢戦争が起きたら米沢市は崩壊するかもな。」と猫は言った。

「聡が捕まれば、米沢派とシン米沢派が手打ちにできる可能性はあるんじゃないのか?」と武は猫に言った。

「捕まえられたらな。『シン米沢派のリーダーの子供の命』と『米沢派のスパイの子供の命』の釣り合いが取れるかという問題はあるけど。」

「命の価値が違うとか、間違ってる・・・」武は猫に言った。

「そうだな。貧富の差、人種、宗教が違ってもの命の価値は同じだ。それに、人と猫の命の価値も同じだぞ。忘れんなよ!」猫は協調した。

「そうだね。気を付けるよ。猫の命の価値は人間と同じか・・・。」

「それはそうと、米沢戦争の前に米沢狩りが始まるだろうな。」と猫は言った。

「米沢狩り?」武は猫に聞いた。

「シン米沢派がスパイの米沢派を炙り出そうとする。例えば、お前の学校に、聡みたいなスパイが隠れているかもしれないだろ?米沢派のスパイを見つけるための米沢狩りだ。お前も学校にはしばらく行かない方がいいかもな。誤認されると拷問されるぞ。」猫は脅してきた。

「米沢狩りか・・・物騒だな。」

「それと、米沢市の北部ではシン米沢狩りが行われるだろうよ。シン米沢派が米沢狩りをし始めたら、米沢派もシン米沢狩りを開始する。一種の報復だな。」

「報復が報復を呼ぶ・・・。報復の連鎖ってことか。」

「そう言えば、お前の父ちゃんの勤務先、米沢市立第一高校って言ってたよな?」

「うん。そうだけど。」

「米沢市立第一高校は北部にあるよな。お前の父ちゃん、危険じゃないのか?」と猫は言った。

「危ないな・・・。父さんには早く知らせないと。」

「そうだな。お前が知らせに行くわけにはいかないから・・・、父ちゃんに危険を知らせる手紙を書け。俺が父ちゃんに手紙を持っていってやるよ。」

「分かった。ありがとう。直ぐに書くよ。」と武は猫に言った。

武は猫のナカムラに言われるまま警察署に泊まることになった。父親には何も知らせていない。今頃になって心配していないか気になってきた。

「そういえば、僕が警察署に泊まることを父さんに伝えてなかったけど、大丈夫かな?」

「それは大丈夫だ。警察署長が説明したから。」

「それは良かった。問題はいつまで米沢戦争が続くかか・・・」

「俺たちが悩んでも米沢戦争は終わらないぞ。夜も遅いし、そろそろ寝るか。」

そう言うと猫は地下牧場の藁の中で眠り始めた。

武もしかたなく牛舎の藁で眠ることにした。
藁の上に寝転ぶと、光にさらされた藁のいい匂いがした。
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