僕と猫と米沢牛 ― 勝手に他人の半生を書いてみた

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僕と猫と米沢牛

竹村の話の矛盾点

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(29)竹村の話の矛盾点

武は疑問を一言で表現した。

「父さんはタイムマシンでも作ったの?」

しばらく考えた後、竹村は武の疑問の意味を理解した。

「あー、そういうことかー。武の疑問が分かった。クローンの肉体年齢はオリジナルの人間とは考え方が違うからだよ。」と竹村は言った。

「どういうこと?」

「クローンは遺伝子的に不安定だから、個体が安定するまでに時間が掛かるんだ。例えば、クローン個体を赤ちゃんの状態から育てようと思っても、クローン個体が安定していないから難しい。だから、個体が安定する年齢まで培養するんだ。」

「クローンの死亡率が高いということだよね?」

「そうだ。人間以外の動物、例えば牛は1~2年で成牛になるから、少し培養すればいい。でも、人間は安定するまでに他の動物よりも時間が掛かる。信子は最初の人型クローンだったから個体の肉体年齢が10歳まで培養した。」と竹村は言った。

「培養か・・・。じゃあ、母さんは生まれた時から10歳?」

「そういうこと。武は肉体年齢5歳まで培養したから、生まれた時から5歳だ。5歳までの記憶がないはずだよ。」

「小さい時のことは覚えてないな。有るかもしれないし、無いかもしれない。よく分からない・・・。」

「そうだね。人間は小さい時の記憶は大多数の人が覚えてないから、記憶が有っても無くてもどちらでもいいんだ。実生活で普通に生活する上では、小学校に入る前の5歳からスタートしても支障ないはずだ。」

「幼少期の記憶は有っても無くてもどちらでもいい・・・。確かにそうかもね。」

「もし5歳までの記憶が欲しかったら作ってあげるよ。」と竹村は言った。

「別にいい。特にメリットなさそうだし。」と武は答えた。

「僕もそう思う。」

「僕の肉体年齢は10歳だけど、僕が生まれたのは5年前・・・。ややこしいな。」

「そう難しく考えることないよ。例えば、クマさんは10歳まで培養した。」

「え?俺は10歳スタートなの?」とクマさんは驚いて言った。

「クマさんの肉体年齢は25歳だけど、生まれたのは15年前。クマさんは10歳からスタートしたけど、実生活の上で10歳までの記憶がないとさすがに不自然じゃないかな?」

「そうだね。みんな小学生の入学式とか運動会の記憶はあるね。」と武は言った。

「だからクマさんには5歳から10歳までの記憶を作った。クマさんは5歳から10歳までの出来事を覚えているけど、その記憶は実際には僕が捏造したデータだ。クマさんの実体験は10歳以降の15年間の記憶ということになる。」

「え・・・、俺の幼少期の記憶って嘘なの?」とクマさんが言った。

「そうだね。6歳までおねしょ(夜尿症)していた記憶があるでしょ?」

「あるな。おねしょの度に母ちゃんに怒られた。よくケツを叩かれたなー。」

「あれは僕の捏造だ。実際には10歳スタートだから、クマさんは生まれてから一度もおねしょしたことないはずだ。」

「おねしょはしなくていい・・・。」クマさんは恥ずかしそうだ。

「あとね、小学生低学年の時、何度も担任の先生に廊下に立たされたでしょ?」

「あれも?」

「まぼろしー」竹村は楽しそうだ。

「人の記憶だと思って、酷いことするなー。」

「ごめん、ごめん。僕は小学生の時にガキ大将に虐められてたから、その仕返しだ。」

「俺がやったんじゃねーよ。」クマさんは笑いながら言った。


竹村とクマさんが遊んでいる間、武は自分の置かれた状況を整理していた。

「ちょっと整理していいかな?」と武は言った。

竹村はクマさんと遊んでいたのを息子に遮られて少し恥ずかしそうだ。

「どうぞ。」と竹村は気を取り直して言った。

「父さんは母さん(クローン)を18年前に作った。母さんは生まれた後、肉体年齢10歳まで培養された。そして、母さんは肉体年齢23歳の時に僕を生んだ。生まれた僕を肉体年齢5歳まで培養して山田家に養子に出した。そういうこと?」

「そういうこと。」と竹村は言った。

「お前頭いいなー。やっぱり天才型クローンだったのか。」クマさんが感心して言った。

武は褒められてまんざらでもなさそうだ。
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