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Dance! Dance Bon-Dance!
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村上春樹さんのダンス・ダンス・ダンスとは何の関係もありません。
直訳すると、『踊れ! ぼん踊りを踊れ!』
駅前で盆踊り大会をやっていたので、その話です。
盆踊り大会といっても、なんせ規模が小さい。
駅前の道路2車線を封鎖して、中央に高さ3メートルくらいの櫓(やぐら)を設置。櫓の周りを人が踊りながら進んでいく。
人は多くないけど、なんせ狭い。櫓はそれなりに大きいのに、道路2車線分のスペースしかないから、櫓の横は1人~2人通れるくらいしか空いていない。
せっかくなので私も久しぶりに踊ってみた。
おじさんは若者よりも羞恥心が薄いから、こういう時は楽でいい。
盆踊りにはいろんな曲があるらしい。
東京音頭、〇〇音頭、シン〇〇音頭のような感じで曲が流れていく。
スピーカーから流れてくる東京音頭。
丁度お手本になりそうなマダムが私の斜め前で踊っていた。
マダムを見ながら必死に音頭についていく私。グダグダだ。でも、必死にマダムについていく。
曲が3回ループしたところで、私はなんとか東京音頭をマスターした。
私の前では私よりもグダグダな妻が踊っている。
私の真後ろには小さな子供(幼稚園児?)が2人ほど踊っている。
妻と他所(よそ)の子供に挟まれる私。
後ろの子供たちは盆踊りが何かを知らない。とりあえず円になって櫓を回るゲームだと思っているのだと思う。だから、前に進むものだと思って私をグイグイ押してくる。進まない私を蹴りそうな勢いだ。
そんな中、妻はお手本マダムに倣って後ろにステップする。私が後ろに下がると子供に当たってしまうから、「ちょ、危ないって!」と言いながら必死に妻を押し戻そうとする。
抵抗する私にイラっとしたのか、私を力強く押す妻。子供も前に行こうとして私を押す。
状況は、前門の妻・後門の他所の子供
この繰り返しが曲の終わりまで続いた。
東京音頭が終わったタイミングで私は前門の妻・後門の他所の子供から脱出を試みた。
つまり、ちょっと横にずれた。
曲が変わった。「〇〇音頭」と女性がマイクで言っている。
ちなみに、〇〇のところには駅名が入る。ローカルな音頭だ。
東京では各駅に〇〇音頭があるのか?と思いつつ、マダムを手本に〇〇音頭についていく。グダグダなりにも徐々に動きに慣れていく。
2曲目だから、それっぽく踊れた気がする。
マイクを持った女性が叫ぶ。
「シン〇〇音頭!」
さっきと同じで〇〇には駅名が入る。シン・仮面ライダーやシン・ゴジラと同じようなものだと私は理解する。他の駅でも『シン』があるのだろうか?
私には怖いものはない。なぜなら、斜め前にお手本マダムがいるから。
私はマダムを見ながら踊り始めたが、今回は勝手が違う。
――マダムが動かない・・・
私は理解した。マダムはシン○○音頭を知らないのだ。シン○○音頭がいつできたのか分からないけど、シン・ゴジラが公開されたのが2016年だからその後だろう。2017年か? 2018年か? この盆踊りが3年ぶりと言っていたから、マダムが覚えていなくても不思議ではない。
お手本マダムは、知っていそうな別のマダムを探す。
どうやらそのマダムも知らないらしい。愛想笑いをしている。
そのマダムも別のマダムを探しながら、フェイク踊りをする。
なぜフェイク踊りかというと、私の近くのお手本マダムがそのマダムの踊りに追随しないからだ。
そう、あれはフェイク踊りだ!
会場中がハテナに包まれる中、スピーカーから流れ続けるシン○○音頭。お揃いの浴衣に身を包んだマダムたちは愛想笑いしながら、櫓を回っている。
手持ち無沙汰な私は櫓の上を見上げた。
櫓の上には太鼓が置いていてどこかのオッサンが叩いている。和太鼓は盆踊りのリズム楽器だ。シン○○音頭を知らないオッサンだが、オッサンはシン○○音頭に合わせてそれっぽく和太鼓を叩く。
太鼓のオッサンのその横にはサックスのオッサン。
―― え? サックス?
ハッピを着たオッサンが気持ちよさそうにサックスを吹く。実に気持ちよさそうに。
ああいうのを『ゾーンに入る』というのだろう。
「高いところから失礼します!」と女性が叫んでいる隣でサックスを吹き続ける。
サックスは違和感なく盆踊りに溶け込んでいる。ありか無しかでいうと、全然ありだ。
盆踊り初心者の私には盆踊りが分からない。
東京の盆踊りはサックスなのか?
***
もし、私が盆踊りにサックスはマスト(must)と覚えたとしよう。
すると、こういうことが起こりそうな気がする。
「へー、盆踊りしてるやん」
「踊っていく?」
「ええよ。いこいこ!」
「えぇ、この会場はサックスがいーひんやん」
「サックス?」
「そや、盆踊りと言えばサックスやで」
「へー、アンタものしりやなー」
「サックスがない盆踊りは盆踊りとは言えんな」
「じゃあ、なんて言うん?」
「ポン踊り! あんなもん、ポン踊りじゃ!」
この会話を聞いたどこかのマダムが失笑しているかもしれない。
だから、誰か間違っていたら教えてほしい。
【盆踊りにサックスは流行りなのか?】
【後書き】
盆踊りをサックスで演奏するケースもあるようですが、あまり一般的ではなさそうです。
直訳すると、『踊れ! ぼん踊りを踊れ!』
駅前で盆踊り大会をやっていたので、その話です。
盆踊り大会といっても、なんせ規模が小さい。
駅前の道路2車線を封鎖して、中央に高さ3メートルくらいの櫓(やぐら)を設置。櫓の周りを人が踊りながら進んでいく。
人は多くないけど、なんせ狭い。櫓はそれなりに大きいのに、道路2車線分のスペースしかないから、櫓の横は1人~2人通れるくらいしか空いていない。
せっかくなので私も久しぶりに踊ってみた。
おじさんは若者よりも羞恥心が薄いから、こういう時は楽でいい。
盆踊りにはいろんな曲があるらしい。
東京音頭、〇〇音頭、シン〇〇音頭のような感じで曲が流れていく。
スピーカーから流れてくる東京音頭。
丁度お手本になりそうなマダムが私の斜め前で踊っていた。
マダムを見ながら必死に音頭についていく私。グダグダだ。でも、必死にマダムについていく。
曲が3回ループしたところで、私はなんとか東京音頭をマスターした。
私の前では私よりもグダグダな妻が踊っている。
私の真後ろには小さな子供(幼稚園児?)が2人ほど踊っている。
妻と他所(よそ)の子供に挟まれる私。
後ろの子供たちは盆踊りが何かを知らない。とりあえず円になって櫓を回るゲームだと思っているのだと思う。だから、前に進むものだと思って私をグイグイ押してくる。進まない私を蹴りそうな勢いだ。
そんな中、妻はお手本マダムに倣って後ろにステップする。私が後ろに下がると子供に当たってしまうから、「ちょ、危ないって!」と言いながら必死に妻を押し戻そうとする。
抵抗する私にイラっとしたのか、私を力強く押す妻。子供も前に行こうとして私を押す。
状況は、前門の妻・後門の他所の子供
この繰り返しが曲の終わりまで続いた。
東京音頭が終わったタイミングで私は前門の妻・後門の他所の子供から脱出を試みた。
つまり、ちょっと横にずれた。
曲が変わった。「〇〇音頭」と女性がマイクで言っている。
ちなみに、〇〇のところには駅名が入る。ローカルな音頭だ。
東京では各駅に〇〇音頭があるのか?と思いつつ、マダムを手本に〇〇音頭についていく。グダグダなりにも徐々に動きに慣れていく。
2曲目だから、それっぽく踊れた気がする。
マイクを持った女性が叫ぶ。
「シン〇〇音頭!」
さっきと同じで〇〇には駅名が入る。シン・仮面ライダーやシン・ゴジラと同じようなものだと私は理解する。他の駅でも『シン』があるのだろうか?
私には怖いものはない。なぜなら、斜め前にお手本マダムがいるから。
私はマダムを見ながら踊り始めたが、今回は勝手が違う。
――マダムが動かない・・・
私は理解した。マダムはシン○○音頭を知らないのだ。シン○○音頭がいつできたのか分からないけど、シン・ゴジラが公開されたのが2016年だからその後だろう。2017年か? 2018年か? この盆踊りが3年ぶりと言っていたから、マダムが覚えていなくても不思議ではない。
お手本マダムは、知っていそうな別のマダムを探す。
どうやらそのマダムも知らないらしい。愛想笑いをしている。
そのマダムも別のマダムを探しながら、フェイク踊りをする。
なぜフェイク踊りかというと、私の近くのお手本マダムがそのマダムの踊りに追随しないからだ。
そう、あれはフェイク踊りだ!
会場中がハテナに包まれる中、スピーカーから流れ続けるシン○○音頭。お揃いの浴衣に身を包んだマダムたちは愛想笑いしながら、櫓を回っている。
手持ち無沙汰な私は櫓の上を見上げた。
櫓の上には太鼓が置いていてどこかのオッサンが叩いている。和太鼓は盆踊りのリズム楽器だ。シン○○音頭を知らないオッサンだが、オッサンはシン○○音頭に合わせてそれっぽく和太鼓を叩く。
太鼓のオッサンのその横にはサックスのオッサン。
―― え? サックス?
ハッピを着たオッサンが気持ちよさそうにサックスを吹く。実に気持ちよさそうに。
ああいうのを『ゾーンに入る』というのだろう。
「高いところから失礼します!」と女性が叫んでいる隣でサックスを吹き続ける。
サックスは違和感なく盆踊りに溶け込んでいる。ありか無しかでいうと、全然ありだ。
盆踊り初心者の私には盆踊りが分からない。
東京の盆踊りはサックスなのか?
***
もし、私が盆踊りにサックスはマスト(must)と覚えたとしよう。
すると、こういうことが起こりそうな気がする。
「へー、盆踊りしてるやん」
「踊っていく?」
「ええよ。いこいこ!」
「えぇ、この会場はサックスがいーひんやん」
「サックス?」
「そや、盆踊りと言えばサックスやで」
「へー、アンタものしりやなー」
「サックスがない盆踊りは盆踊りとは言えんな」
「じゃあ、なんて言うん?」
「ポン踊り! あんなもん、ポン踊りじゃ!」
この会話を聞いたどこかのマダムが失笑しているかもしれない。
だから、誰か間違っていたら教えてほしい。
【盆踊りにサックスは流行りなのか?】
【後書き】
盆踊りをサックスで演奏するケースもあるようですが、あまり一般的ではなさそうです。
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