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よ…ん……よ…ん……よん……
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「よ…ん……よ…ん……よん……よん……」
その日の朝、私がコーヒーを飲みながら新聞を読んでいると、隣の部屋から妻の声が聞こえた。
いつもの叫び声ではない。小さな音量だ。
今日の妻は元気がない。ベッドから出てこない。
なぜなら、ワクチン接種の副反応……
昨日、私と妻は5回目のワクチン接種に行った。
最近また流行っているらしいし、無料だから。
1回目、2回目、3回目はモデルナだったが、4回目と5回目はファイザーだ。
私は2回目に高熱が出たが、それ以外は何の副反応もない。
一方の妻は、1回目以外全て副反応で高熱が出ている。
モデルナでもファイザーでも関係なく高熱が出る。
個人差があるのだと思うが、ワクチン接種翌日の妻は比較的大人しい。
「よ…ん……よ…ん……よん……よん……」
また聞こえた。きっと、暇だから構ってほしいのだ。
しかたなく私は妻が寝ているベッドに行って、何を言いたいのか確認する。
「どうしたん?」
「よん……よんって……」
「よん?」
「再生回数が4回しかない……」
どうやら妻は、YouTubeの再生回数のことを言っているらしい。
一応説明しておくと、妻は書道動画をYouTubeに投稿している自称ユーチューバーだ。
私は妻のアシスタントとして、妻の書く動画を撮影、編集、YouTubeに投稿している。
最近登録者が少し増えてもうすぐ120人を超えそうだ。
私はYouTubeのアカウントを確認する。
昨日の夜アップロードした動画の再生回数は4回だった。
その前の動画は2,500回、その前は3,200回、その前は1,700回……
確かに、昨日の夜の動画が4回なのは変な気がする。
「何かした?」と妻は小さく言った。
副反応の高熱で寝ているにも関わらず、YouTubeの再生回数は気になるらしい……
「別に……」
私はお茶を濁した。何が原因かは正確には分からない。
でも、思い当たる節はあった。
あれは、昨日のことだ。
***
「分かったーーーー!!」
この日はワクチン接種前。なので、妻の大声が我が家に響いていた。
いつもベッドから起きる前にスマホで何か見ているから、それだろう。
きっと、猫動画だと思うのだが……
「何が分かったん?」と私は妻に尋ねる。
「これ見てみ!」
妻はそういうとスマホを私に渡した。
スマホにはYouTubeの動画が表示されている。
「再生してみ」と妻が言うから、私は動画を再生した。
書道動画だった。
妻の動画よりも上手く、早く書いている書道動画だ。それに、バックミュージックがYOASOBI。金が掛っている。
「すごいなー。YOASOBI使ってるやん。これ、音楽入れたら幾ら掛かるんやろな?」
「そっちやない!」
「えっ?」
「その動画、書くスピードが速いやろ?」
「そう……やな」
「この動画見てて分かったんや。YouTubeを見てる人は、パッパッと見たいねん」
「動画の速度を上げるってこと?」
「そう!」
どうやら、妻は早送り動画を作れと要求しているらしい……
弱小ユーチューバーのアシスタント(私)が使っているソフトに、そんな機能があるのだろうか?
1円も生み出さない動画なので、使っている動画編集ソフトはSurfaceにデフォルトで入っているMicrosoft Clipchampというもの。無料で使える音楽は数個しかない。
そして、フリーといいつつYouTubeのコンテンツチェックに引っかかるものもある。
だから、作った動画のバックミュージックは3曲をランダムに挿入している。
ダメ元で早送りを探してみたら……あった。
どうやら無料でも使えるらしい。こんな感じだ。
実は使えるソフトなのかもしれない。
さて、早送りを覚えた私は早速再生速度を1.5倍にして動画を作成した。
YouTubeにアップロードして確認したら、速度を早くした方が見やすかった。
再生回数もすぐに数百回までいった。
――これ、いけるんじゃね?
そう思った私は、間髪空けず1.5倍速動画を作成してアップロードした。
更新する度に再生回数が増えていく。
私は更に一つ1.5倍速動画を作成してアップロードした。
***
調子に乗って1.5倍速動画をいくつもアップロードしたのが昨日のこと……
きっと、掲載する数が多かったのだ。
プレミアムアカウントでないと動画投稿数に制限がある……そんなネット記事をみたような気がする。
そして、再生回数4回の動画が誕生したのだろう。
再生回数4回の本当の理由は分からない。
でも、調べるのが面倒だから、妻にはそう説明しておこう……
<続く>
その日の朝、私がコーヒーを飲みながら新聞を読んでいると、隣の部屋から妻の声が聞こえた。
いつもの叫び声ではない。小さな音量だ。
今日の妻は元気がない。ベッドから出てこない。
なぜなら、ワクチン接種の副反応……
昨日、私と妻は5回目のワクチン接種に行った。
最近また流行っているらしいし、無料だから。
1回目、2回目、3回目はモデルナだったが、4回目と5回目はファイザーだ。
私は2回目に高熱が出たが、それ以外は何の副反応もない。
一方の妻は、1回目以外全て副反応で高熱が出ている。
モデルナでもファイザーでも関係なく高熱が出る。
個人差があるのだと思うが、ワクチン接種翌日の妻は比較的大人しい。
「よ…ん……よ…ん……よん……よん……」
また聞こえた。きっと、暇だから構ってほしいのだ。
しかたなく私は妻が寝ているベッドに行って、何を言いたいのか確認する。
「どうしたん?」
「よん……よんって……」
「よん?」
「再生回数が4回しかない……」
どうやら妻は、YouTubeの再生回数のことを言っているらしい。
一応説明しておくと、妻は書道動画をYouTubeに投稿している自称ユーチューバーだ。
私は妻のアシスタントとして、妻の書く動画を撮影、編集、YouTubeに投稿している。
最近登録者が少し増えてもうすぐ120人を超えそうだ。
私はYouTubeのアカウントを確認する。
昨日の夜アップロードした動画の再生回数は4回だった。
その前の動画は2,500回、その前は3,200回、その前は1,700回……
確かに、昨日の夜の動画が4回なのは変な気がする。
「何かした?」と妻は小さく言った。
副反応の高熱で寝ているにも関わらず、YouTubeの再生回数は気になるらしい……
「別に……」
私はお茶を濁した。何が原因かは正確には分からない。
でも、思い当たる節はあった。
あれは、昨日のことだ。
***
「分かったーーーー!!」
この日はワクチン接種前。なので、妻の大声が我が家に響いていた。
いつもベッドから起きる前にスマホで何か見ているから、それだろう。
きっと、猫動画だと思うのだが……
「何が分かったん?」と私は妻に尋ねる。
「これ見てみ!」
妻はそういうとスマホを私に渡した。
スマホにはYouTubeの動画が表示されている。
「再生してみ」と妻が言うから、私は動画を再生した。
書道動画だった。
妻の動画よりも上手く、早く書いている書道動画だ。それに、バックミュージックがYOASOBI。金が掛っている。
「すごいなー。YOASOBI使ってるやん。これ、音楽入れたら幾ら掛かるんやろな?」
「そっちやない!」
「えっ?」
「その動画、書くスピードが速いやろ?」
「そう……やな」
「この動画見てて分かったんや。YouTubeを見てる人は、パッパッと見たいねん」
「動画の速度を上げるってこと?」
「そう!」
どうやら、妻は早送り動画を作れと要求しているらしい……
弱小ユーチューバーのアシスタント(私)が使っているソフトに、そんな機能があるのだろうか?
1円も生み出さない動画なので、使っている動画編集ソフトはSurfaceにデフォルトで入っているMicrosoft Clipchampというもの。無料で使える音楽は数個しかない。
そして、フリーといいつつYouTubeのコンテンツチェックに引っかかるものもある。
だから、作った動画のバックミュージックは3曲をランダムに挿入している。
ダメ元で早送りを探してみたら……あった。
どうやら無料でも使えるらしい。こんな感じだ。
実は使えるソフトなのかもしれない。
さて、早送りを覚えた私は早速再生速度を1.5倍にして動画を作成した。
YouTubeにアップロードして確認したら、速度を早くした方が見やすかった。
再生回数もすぐに数百回までいった。
――これ、いけるんじゃね?
そう思った私は、間髪空けず1.5倍速動画を作成してアップロードした。
更新する度に再生回数が増えていく。
私は更に一つ1.5倍速動画を作成してアップロードした。
***
調子に乗って1.5倍速動画をいくつもアップロードしたのが昨日のこと……
きっと、掲載する数が多かったのだ。
プレミアムアカウントでないと動画投稿数に制限がある……そんなネット記事をみたような気がする。
そして、再生回数4回の動画が誕生したのだろう。
再生回数4回の本当の理由は分からない。
でも、調べるのが面倒だから、妻にはそう説明しておこう……
<続く>
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