妻が自称ユーチューバーになった話

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呪いのおすそ分け

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「オジラニアーーーン!」

今日も我が家で妻が叫んでいる。
私の方を見て「オジラニアン」と言っているから、きっと私のことをそう呼んでいるのだと思う。

推測するに、

オジラニアン = オジサン + ポメラニアン

ではないだろうか。

ポメラニアンの話だと予想した私は「ポメラニアンがどうかした?」と妻に尋ねた。

「これ見てみ!」
そう言うと、妻はYouTubeの動画を私に見せた。

ポメラニアンがアザラシ・カットされていく動画が表示されている。YouTubeでよく配信されているカット動画だ。

妻はポメラニアンのヘアスタイルを指さして言った。
「ポメラニアン!」

そして、私の頭部を指さし言った。
「オジラニアン!」

私はちょうど前日に髪の毛をカットした。
最近はほぼボウズのような髪型をしているので、私の髪型はポメラニアンと似ていなくもない……
だから妻は私をオジラニアンと呼んでいる。

少し分かりにくいので画像で説明しよう。こういうことだ。


 

ちなみに、この写真のオジラニアンは私ではない。ネットで拾ってきた画像の上だけをカットしたものだ。
髪がもっと白いので、現物(私)はもっとポメラニアンっぽい髪型だと思う。

妻はいつも私をよく分からない名称で呼ぶ。
例えば、こんな感じだ。

【例1】

「ソファーにオジル付けんなやーー!」

オジル = オジサン + 汁(しる)
つまり、オジサンの汗(あせ)のことだ。


【例2】

「うっわー。この部屋、オジ臭(しゅう)が充満しとるなー。換気しーや」

オジ臭 = オジサン + 臭い
つまり、部屋がオジサン臭いということだ。

他の家も同じなのかは分からない。

でも、全国には妻からの口撃に耐えるオジサンがたくさんいるはずだ。
私は全国のオジサンの健闘を祈っている。


***

「ところでな……」と妻は私に話しかけた。

どうやら、妻の本題はオジラニアンではなかったようだ。

「どうしたん?」
「朝起きてYouTubeをチェックしてたんやけどな……」

妻は朝起きたら自分のYouTubeをチェックしている。正確には私のアカウントで配信されている妻が書いた書道動画だ。
自称ユーチューバーとして、妻は自分の書いた字のチェックは怠らない。

「それで?」
「これはナシやと思うで……朝一でこれ見たら、気ぃ悪くなるわ」

そう言うと、妻は私に習字動画を見せた。

【呪】

これは、昨日アップロードした字だ。
バランスが変なのだが、字が上手くても再生回数にはあまり関係ないから、そのまま配信した。
呪術廻戦が流行っているから『呪』もアリだろうと思って、妻に書いてもらった。


「朝起きてな……今日一日頑張ろうと思っている時にな……呪いやで……」
「そうやなー。朝一で見た人はアンラッキー・デーやと思うかもなー」
「そやろ」

妻は朝一で自分の書いた『呪』を見て、気分を害したようだ。
そんなこと思うのなら書かなければいい……と言いかけたが止めた。

「私の字が世間に迷惑かけてるんやな……」と妻は言う。

そんなことはないと思う。少なくとも私は全く気にしない。
それに、この動画を見ている半分は外国人だ。意味が分からずに『呪』の動画を見ている。

「そんなに気になるんやったら、非公開(プライベート)設定にする? そしたら、他の人から見えんくなる」
「そうやなー。これ朝に見たら、今日一日頑張れんようになるしな……」

私は『呪』の動画をチェックした。すると、再生回数は既に2,000回を超えていた。
このまま公開しておけば3,000回はいきそうだ。
私は念のために妻に確認する。

「再生回数が2,000回超えてるけど、非公開にしてもええ?」
「2,000回かー。もったいないなー」

妻は『呪』は気に入らないものの、再生回数は欲しいらしい。
どうせ非公開にはしないと悟った私は、妻の罪悪感を拭うために提案をする。

「じゃあ、『幸』を書いて配信したらいいやん」
「『幸』を載せたら何かあるん?」
「誰かが『呪』を見たとしても、『幸』を見たらプラスマイナスゼロになるやろ」
「そうかな……」
「なんなら、『呪』の動画の最後に「この動画を見た人は、『幸』の動画を3回以上見ないと不幸になります!」って書いとこか?」
「不幸の手紙か!」

こうして、妻はせめても罪滅ぼしのために『幸』を書いた。

その後、『幸』を配信したのだが残念ながら再生回数は300回ほど。
『呪』がもたらす視聴者の不幸は打ち消せなかったのかもしれない。

それにしても……朝一で『呪』の動画を見たくらいで、そこまで思うのだろうか?


<続く>
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