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お前が落としたのは金のオジサンか?それとも銀のオジサンか?
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「お前が落としたのは金のオジサンか? それとも銀のオジサンか?」
妻が私に言った。
――意味が分からん……
『金の斧、銀の斧』の話を模しているのだろうが、いきなりそんなことを聞かれても何が正解か分からない。
池に斧を落としたオジサンは「いえ、普通の斧です」と言うのが正解だった。
正直に答えた褒美として、金の斧と銀の斧を女神様から貰ったのでした。
めでたしめでたし……
という話もあるのだから、私もその正直オジサンに倣うことにした。
「いやー、普通のオジサンですけど」と私は返す。
「そんなオジサンはいらん! 金のオジサンにしろ!」
ますます意味が分からない私。妻の真意を確認する。
「なんで? 普通のオジサンはあかんの?」
「普通のオジサンは役立たず。金のオジサンは役に立つ」
「ちょっ、金のオジサンの体を切り取ったら殺人やで?」
「そういう意味ではない。徳の高いオジサンになれ、ということだ」
私は念のために妻に確認する。
「私のことですかね?」
「そうだ。お主のことだ。早く金のオジサンにならなければ……」
「ならなければ?」
「妻に見放され、寂しい老後を送ることになるだろう!」
推測するに、金のオジサンは「いいオジサン」または「イケオジ」を意味しているのだろう。
どうすれば金のオジサンになれるのか?
念のために妻に確認することにした。
「どうしたら金のオジサンになれるん?」
「そうだのー。お主の話は、面白くないのに長い」
私(オジサン)の話は面白くないらしい。そして、ダラダラと余計なことを話しているそうだ。
これは世間一般的なオジサンに当てはまる。悔しいが、思い当たる節はある。
「どうしたら面白くなれますかね?」
「それを考えるのが、オジサンの仕事ではないか?」
ノーヒントだ。ノーヒントで面白い金のオジサンにならないといけないらしい。
すぐに面白いオジサンになれるはずもなく……私は別の切り口で攻略することにした。
「何か欲しいものある?」
「うーん。文鎮(ぶんちん)かなー」
うちの妻が書道動画を撮影する時に使っている文鎮は100均で買ったものだ。銀色の小学生とかが使ってるやつなので、皆さんも見たことあるだろう。
確かに、他の書道動画を見ていたら高そうな文鎮を使っている人もいる。
うちの自称ユーチューバーは形から入る。なので、妻はもう少し高い文鎮が欲しい。
ひょっとしたら、いい文鎮を買ったら金のオジサンに認定してもらえるかもしれない。
期待を膨らませながら、私は妻と本屋さんへ向かった。
※私の家の周りには文房具屋がなく、駅ビルの本屋さん(有隣堂)しか文房具を売っているところがありません。
**
本屋さんの書道コーナーにやってきた妻は、イルカの形をした文鎮に興味を示す。
「〇〇鉄器」と書いてあるからそれなりに値は張りそうだ。
「1,990円かー。高いなー」
妻がボソッと言った。
これは……悪くはないけど、どうしよっかなー? という意味だ。
散々悩んだあげく買わない可能性が高い。
しかたなく私は隣にあった龍の文鎮を妻に勧める。
「こっちは1,000円くらいやで。これやったら手頃な値段やろ」
「かわいくない……」
妻は龍の文鎮に難色を示す。これは欲しくなさそうな気がする。
私は龍の文鎮のアピールポイントを妻に伝える。
「文鎮って、そんなもんやと思うで。それに、来年の干支は龍やで。縁起いいやん!」
「龍か……辰年やし、アリかもな」
妻は龍の文鎮を手に取った。横から上から下から文鎮を観察している。
私は妻の邪魔にならないように「どう?」と尋ねた。
「動画撮る時は、上からやん?」
「そやな」
「上から見てみ。龍に見える?」
妻は文鎮を私に渡した。私は龍の文鎮を上から覗き込む。
「うーん。黒い塊やなー」
「そやろ。これ、横からやなかったら龍に見えへん」
「そっか……やめとく?」
「そやな。ユーチューブ映えしーひんしな」
その後も妻は30分ほど他の文鎮を手に取って見ていた。が、結局、文鎮を買わずに帰った。
――買わんのかい!
そうツッコミたいところを、グッとこらえる私。
妻は優柔不断なので、買い物をするときに時間が掛かる。
そして、買うか買わないか決められず、最終的に買わずに帰る。
筆を買いに来た時と同じ展開になった。
ちなみに、参考に載せておこう。こういう文鎮だ。
とにかく、私は金のオジサンを目指すのであった。
***
さて、話をYouTubeに移そう。
私の妻は書道動画をYouTubeに投稿している自称ユーチューバーだ。そして、私は妻のアシスタントとして、妻の書く動画を撮影、編集、YouTubeに投稿している。
クリスマス前後にいろいろと試してみた。
書道動画なので試すといっても大したことはできないのだが。
我が家の動画は、基本的に1文字だけを掲載する形式を採っている。
続けて読むと「料理」「育休」「主役」「政治」「共同」のような熟語になっている。
今回、クリスマスの音楽にのせて2文字と3文字の動画をアップロードしてみた。
具体的には「聖夜」「納会」「リア充」だ。
再生回数を発表しよう。
・聖夜:134回
・納会:1,019回
・リア充:347回
完全に失敗したわけではないものの、再生回数は少ない。
同時期に配信した1文字動画の方が再生回数は圧倒的に多かった。
多分、いつもの1文字動画の方が見慣れているからだと思う。
掲載する動画の基本的な見え方は崩さない方がいい、という教訓になった。
正月に合わせて、既に「元旦」「正月」「賀正」をうちの妻は書いてしまっている。
これらを配信しないと怒るだろうから、正月前後に配信しようと思う。
こんな感じで、我が家の試行錯誤は続くのであった。
<続く>
妻が私に言った。
――意味が分からん……
『金の斧、銀の斧』の話を模しているのだろうが、いきなりそんなことを聞かれても何が正解か分からない。
池に斧を落としたオジサンは「いえ、普通の斧です」と言うのが正解だった。
正直に答えた褒美として、金の斧と銀の斧を女神様から貰ったのでした。
めでたしめでたし……
という話もあるのだから、私もその正直オジサンに倣うことにした。
「いやー、普通のオジサンですけど」と私は返す。
「そんなオジサンはいらん! 金のオジサンにしろ!」
ますます意味が分からない私。妻の真意を確認する。
「なんで? 普通のオジサンはあかんの?」
「普通のオジサンは役立たず。金のオジサンは役に立つ」
「ちょっ、金のオジサンの体を切り取ったら殺人やで?」
「そういう意味ではない。徳の高いオジサンになれ、ということだ」
私は念のために妻に確認する。
「私のことですかね?」
「そうだ。お主のことだ。早く金のオジサンにならなければ……」
「ならなければ?」
「妻に見放され、寂しい老後を送ることになるだろう!」
推測するに、金のオジサンは「いいオジサン」または「イケオジ」を意味しているのだろう。
どうすれば金のオジサンになれるのか?
念のために妻に確認することにした。
「どうしたら金のオジサンになれるん?」
「そうだのー。お主の話は、面白くないのに長い」
私(オジサン)の話は面白くないらしい。そして、ダラダラと余計なことを話しているそうだ。
これは世間一般的なオジサンに当てはまる。悔しいが、思い当たる節はある。
「どうしたら面白くなれますかね?」
「それを考えるのが、オジサンの仕事ではないか?」
ノーヒントだ。ノーヒントで面白い金のオジサンにならないといけないらしい。
すぐに面白いオジサンになれるはずもなく……私は別の切り口で攻略することにした。
「何か欲しいものある?」
「うーん。文鎮(ぶんちん)かなー」
うちの妻が書道動画を撮影する時に使っている文鎮は100均で買ったものだ。銀色の小学生とかが使ってるやつなので、皆さんも見たことあるだろう。
確かに、他の書道動画を見ていたら高そうな文鎮を使っている人もいる。
うちの自称ユーチューバーは形から入る。なので、妻はもう少し高い文鎮が欲しい。
ひょっとしたら、いい文鎮を買ったら金のオジサンに認定してもらえるかもしれない。
期待を膨らませながら、私は妻と本屋さんへ向かった。
※私の家の周りには文房具屋がなく、駅ビルの本屋さん(有隣堂)しか文房具を売っているところがありません。
**
本屋さんの書道コーナーにやってきた妻は、イルカの形をした文鎮に興味を示す。
「〇〇鉄器」と書いてあるからそれなりに値は張りそうだ。
「1,990円かー。高いなー」
妻がボソッと言った。
これは……悪くはないけど、どうしよっかなー? という意味だ。
散々悩んだあげく買わない可能性が高い。
しかたなく私は隣にあった龍の文鎮を妻に勧める。
「こっちは1,000円くらいやで。これやったら手頃な値段やろ」
「かわいくない……」
妻は龍の文鎮に難色を示す。これは欲しくなさそうな気がする。
私は龍の文鎮のアピールポイントを妻に伝える。
「文鎮って、そんなもんやと思うで。それに、来年の干支は龍やで。縁起いいやん!」
「龍か……辰年やし、アリかもな」
妻は龍の文鎮を手に取った。横から上から下から文鎮を観察している。
私は妻の邪魔にならないように「どう?」と尋ねた。
「動画撮る時は、上からやん?」
「そやな」
「上から見てみ。龍に見える?」
妻は文鎮を私に渡した。私は龍の文鎮を上から覗き込む。
「うーん。黒い塊やなー」
「そやろ。これ、横からやなかったら龍に見えへん」
「そっか……やめとく?」
「そやな。ユーチューブ映えしーひんしな」
その後も妻は30分ほど他の文鎮を手に取って見ていた。が、結局、文鎮を買わずに帰った。
――買わんのかい!
そうツッコミたいところを、グッとこらえる私。
妻は優柔不断なので、買い物をするときに時間が掛かる。
そして、買うか買わないか決められず、最終的に買わずに帰る。
筆を買いに来た時と同じ展開になった。
ちなみに、参考に載せておこう。こういう文鎮だ。
とにかく、私は金のオジサンを目指すのであった。
***
さて、話をYouTubeに移そう。
私の妻は書道動画をYouTubeに投稿している自称ユーチューバーだ。そして、私は妻のアシスタントとして、妻の書く動画を撮影、編集、YouTubeに投稿している。
クリスマス前後にいろいろと試してみた。
書道動画なので試すといっても大したことはできないのだが。
我が家の動画は、基本的に1文字だけを掲載する形式を採っている。
続けて読むと「料理」「育休」「主役」「政治」「共同」のような熟語になっている。
今回、クリスマスの音楽にのせて2文字と3文字の動画をアップロードしてみた。
具体的には「聖夜」「納会」「リア充」だ。
再生回数を発表しよう。
・聖夜:134回
・納会:1,019回
・リア充:347回
完全に失敗したわけではないものの、再生回数は少ない。
同時期に配信した1文字動画の方が再生回数は圧倒的に多かった。
多分、いつもの1文字動画の方が見慣れているからだと思う。
掲載する動画の基本的な見え方は崩さない方がいい、という教訓になった。
正月に合わせて、既に「元旦」「正月」「賀正」をうちの妻は書いてしまっている。
これらを配信しないと怒るだろうから、正月前後に配信しようと思う。
こんな感じで、我が家の試行錯誤は続くのであった。
<続く>
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