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不動産王に俺はなる!
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「不動産王に俺はなる!!」
妻が何か言っている。何を言っているかは分かっている。不動産王になりたいらしい……
いつもの調子で適当なことを言っているのだと思う。
が、無視すると怒るから私は妻に趣旨を確認する。
「不動産買いたいん? 今は高いで?」
「そんなこと知ってる。実際に買うわけとちゃう」
妻は私の顔を見た。バカにしているような目だ。
この話を読んでいる人は、きっと妻のことを「自称ユーチューバーのおかしな人」と思っているだろう。
一応説明しておくと、うちの妻は不動産鑑定士だ。
知名度は低いかもしれないが、不動産鑑定士とは不動産の価格を算定する仕事をする人。
だから、不動産相場について、妻は私よりも詳しい。
それにしても意味が分からん。
「不動産買わずに不動産王になれるん?」
「違う! 『不動産王に俺はなる!』ってゲーム! どう思う?」
どこかで聞いたことがあるセリフだ。私に緊張が走る。
私が自称ユーチューバーのアシスタントになったのは、妻の「ユーチューバーになろうかと思うんやけどどう思う?」がきっかけだった。
このままでは、『不動産王に俺はなる!』のゲームを作るアシスタントにされる危険性が……というか、私が作ることになる。
これでも忙しいので何とか阻止しないといけない。
そのためには、そのゲームに興味を無くしてもらうことが一番だ。
そもそも、不動産王になるためのゲーム……私にはニーズがあるのか分からない。
そして、どうやったら不動産王になれるのか?
私は妻に尋ねた。
「どうやったら、不動産王になれるん?」
「不動産王というより、不動産のプロになるためのゲームやな」
「不動産を売買するん?」
「そやで。いろんな物件を売り買いする。悪い業者に騙されずに安値で仕入れてきて、アホな素人を見つけて高値で売りつける」
素人に高値で売りつけるのはコンプラ的にアウトな気がする……
でも、悪い不動産業者に騙されないために、プレイヤーは相場観を身に付けることができる。そういう意味では世の中の役に立つかもしれない。
私は妻に詳しく内容を聞いてみることにした。
「例えば、どんな感じで不動産売買するん?」
「最初の不動産投資はマイホームやな。マイホームを買いたい夫婦が不動産のチラシを見て、物件を見に行くねん」
「マイホームって言ってる時点で不動産のプロちゃうやろ」
「不動産投資のきっかけがマイホームやってん」
「まあ、ええわ。夫婦でマイホーム見に行くんやな」
マイホームを購入する夫婦。果たして、この主人公は不動産のプロになる気があるのだろうか?
ツッコミどころは満載だが、話を進める。
「それでな。その物件、新築やけど駅から遠いねん」
「戸建て?」
「戸建てやな」
「へー、売るとき大変な物件やな」
売却時に年単位で掛かりそうだ。不動産のプロはこんな物件を買ってはいけない。
「そやねん。新築で内装が凝ってんねん。そして、奥さんはめっちゃ乗り気やねん」
「ありそうやなー」
「ほんでな、不動産業者はオプション無料で付けるって、奥さんに勧めてくるねん」
「でも、マイホームは買ったらあかんのやろ?」
「そうやなー」
不動産のプロ育成とは程遠いシナリオだ。
不動産業者の営業トークを軽くかわし、奥さんの興味をすり替える。そんなゲームができそうな気がする。
私は妻に確認する。
「じゃあ、不動産業者と奥さんをかわすトーク術を鍛えるゲームやな」
「そうともいえる」
「それ、不動産の知識いらんくない?」
妻は考えている。自分が想像していたのとは違うゲームが出来上がることが分かったようだ。
「ちょっと、考えてみるわ」と妻は別室に去っていった。
とりあえず、妻のゲーム作成を手伝わずにすみそうだ。
***
さて、YouTubeに話を移そう。
私の妻は書道動画をYouTubeに投稿している自称ユーチューバーだ。そして、私は妻のアシスタントとして、妻の書く動画を撮影、編集、YouTubeに投稿している。
いやいや始めたYouTubeだが、開始から6カ月経った。
動画再生回数は増えたり減ったりを繰り返しながら、なんやかんやでチャンネル登録者数が500人に近づいてきた。
ここで、ユーチューバーとは何かを改めて考えてみようと思う。
YouTubeに動画を投稿して人はたくさんいる。しかし、YouTubeに動画を投稿しただけではお金は入ってこない。
つまり、ユーチューバーとはYouTubeから収入を得ているプロの動画配信者を指す。
うちのように動画投稿している「自称ユーチューバー」ではなく、ちゃんと稼いでいるプロだ。ここではその両者を分けるために、「プロチューバー」と呼ぼう。
YouTubeでは一定の条件を満たしたユーチューバー(プロチューバー)にしか報酬が支払われない。
プロチューバーになるためには、YouTubeが設定した基準をクリアしないといけない。
基準は幾つかある。最もハードルが低い基準がこれだ。
-------------------------------------------------------------------
1.チャンネル登録者数:500人以上
2.ビデオを3つアップロードする
さらに以下のどちらかを充たす。
・過去365日間のビデオの動画再生時間が3,000時間以上
・過去90日間のショートの動画再生回数が300万回以上
--------------------------------------------------------------------
チャンネル登録者数500人とビデオ3つは頑張れば何とかなる。
ただ、「過去365日間のビデオの動画再生時間が3,000時間以上」と「過去90日間のショートの動画再生回数が300万回以上」はかなりハードルが高い。
「過去365日間のビデオの動画再生時間が3,000時間以上」は一日10時間くらいのビデオ再生時間が必要だ。うちの動画はShortがメインなので、ビデオの再生時間は少ない。
Shortは1カ月間で600時間くらい見られている。でも、ビデオは10時間にも満たない。
これをクリアしようとしたら、長いビデオを作って投稿する必要がありそうだ。
それか、うちの余っているパソコンで1日中ビデオを再生させておくとか……バンされるかもしれない。
それにしても、書道動画をそんなに長い時間見る人がいるのだろうか?
バズる動画を配信できないと難しそうだ。
つまり、かなりバズる動画を配信できる人しかプロチューバーにはなれないのだ。
プロチューバーを目指すのであれば動画再生回数又は動画再生時間を稼げるジャンルにした方がいいのだろう。
うちの書道動画はしばらく趣味でいいような気がする……
<つづく>
妻が何か言っている。何を言っているかは分かっている。不動産王になりたいらしい……
いつもの調子で適当なことを言っているのだと思う。
が、無視すると怒るから私は妻に趣旨を確認する。
「不動産買いたいん? 今は高いで?」
「そんなこと知ってる。実際に買うわけとちゃう」
妻は私の顔を見た。バカにしているような目だ。
この話を読んでいる人は、きっと妻のことを「自称ユーチューバーのおかしな人」と思っているだろう。
一応説明しておくと、うちの妻は不動産鑑定士だ。
知名度は低いかもしれないが、不動産鑑定士とは不動産の価格を算定する仕事をする人。
だから、不動産相場について、妻は私よりも詳しい。
それにしても意味が分からん。
「不動産買わずに不動産王になれるん?」
「違う! 『不動産王に俺はなる!』ってゲーム! どう思う?」
どこかで聞いたことがあるセリフだ。私に緊張が走る。
私が自称ユーチューバーのアシスタントになったのは、妻の「ユーチューバーになろうかと思うんやけどどう思う?」がきっかけだった。
このままでは、『不動産王に俺はなる!』のゲームを作るアシスタントにされる危険性が……というか、私が作ることになる。
これでも忙しいので何とか阻止しないといけない。
そのためには、そのゲームに興味を無くしてもらうことが一番だ。
そもそも、不動産王になるためのゲーム……私にはニーズがあるのか分からない。
そして、どうやったら不動産王になれるのか?
私は妻に尋ねた。
「どうやったら、不動産王になれるん?」
「不動産王というより、不動産のプロになるためのゲームやな」
「不動産を売買するん?」
「そやで。いろんな物件を売り買いする。悪い業者に騙されずに安値で仕入れてきて、アホな素人を見つけて高値で売りつける」
素人に高値で売りつけるのはコンプラ的にアウトな気がする……
でも、悪い不動産業者に騙されないために、プレイヤーは相場観を身に付けることができる。そういう意味では世の中の役に立つかもしれない。
私は妻に詳しく内容を聞いてみることにした。
「例えば、どんな感じで不動産売買するん?」
「最初の不動産投資はマイホームやな。マイホームを買いたい夫婦が不動産のチラシを見て、物件を見に行くねん」
「マイホームって言ってる時点で不動産のプロちゃうやろ」
「不動産投資のきっかけがマイホームやってん」
「まあ、ええわ。夫婦でマイホーム見に行くんやな」
マイホームを購入する夫婦。果たして、この主人公は不動産のプロになる気があるのだろうか?
ツッコミどころは満載だが、話を進める。
「それでな。その物件、新築やけど駅から遠いねん」
「戸建て?」
「戸建てやな」
「へー、売るとき大変な物件やな」
売却時に年単位で掛かりそうだ。不動産のプロはこんな物件を買ってはいけない。
「そやねん。新築で内装が凝ってんねん。そして、奥さんはめっちゃ乗り気やねん」
「ありそうやなー」
「ほんでな、不動産業者はオプション無料で付けるって、奥さんに勧めてくるねん」
「でも、マイホームは買ったらあかんのやろ?」
「そうやなー」
不動産のプロ育成とは程遠いシナリオだ。
不動産業者の営業トークを軽くかわし、奥さんの興味をすり替える。そんなゲームができそうな気がする。
私は妻に確認する。
「じゃあ、不動産業者と奥さんをかわすトーク術を鍛えるゲームやな」
「そうともいえる」
「それ、不動産の知識いらんくない?」
妻は考えている。自分が想像していたのとは違うゲームが出来上がることが分かったようだ。
「ちょっと、考えてみるわ」と妻は別室に去っていった。
とりあえず、妻のゲーム作成を手伝わずにすみそうだ。
***
さて、YouTubeに話を移そう。
私の妻は書道動画をYouTubeに投稿している自称ユーチューバーだ。そして、私は妻のアシスタントとして、妻の書く動画を撮影、編集、YouTubeに投稿している。
いやいや始めたYouTubeだが、開始から6カ月経った。
動画再生回数は増えたり減ったりを繰り返しながら、なんやかんやでチャンネル登録者数が500人に近づいてきた。
ここで、ユーチューバーとは何かを改めて考えてみようと思う。
YouTubeに動画を投稿して人はたくさんいる。しかし、YouTubeに動画を投稿しただけではお金は入ってこない。
つまり、ユーチューバーとはYouTubeから収入を得ているプロの動画配信者を指す。
うちのように動画投稿している「自称ユーチューバー」ではなく、ちゃんと稼いでいるプロだ。ここではその両者を分けるために、「プロチューバー」と呼ぼう。
YouTubeでは一定の条件を満たしたユーチューバー(プロチューバー)にしか報酬が支払われない。
プロチューバーになるためには、YouTubeが設定した基準をクリアしないといけない。
基準は幾つかある。最もハードルが低い基準がこれだ。
-------------------------------------------------------------------
1.チャンネル登録者数:500人以上
2.ビデオを3つアップロードする
さらに以下のどちらかを充たす。
・過去365日間のビデオの動画再生時間が3,000時間以上
・過去90日間のショートの動画再生回数が300万回以上
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チャンネル登録者数500人とビデオ3つは頑張れば何とかなる。
ただ、「過去365日間のビデオの動画再生時間が3,000時間以上」と「過去90日間のショートの動画再生回数が300万回以上」はかなりハードルが高い。
「過去365日間のビデオの動画再生時間が3,000時間以上」は一日10時間くらいのビデオ再生時間が必要だ。うちの動画はShortがメインなので、ビデオの再生時間は少ない。
Shortは1カ月間で600時間くらい見られている。でも、ビデオは10時間にも満たない。
これをクリアしようとしたら、長いビデオを作って投稿する必要がありそうだ。
それか、うちの余っているパソコンで1日中ビデオを再生させておくとか……バンされるかもしれない。
それにしても、書道動画をそんなに長い時間見る人がいるのだろうか?
バズる動画を配信できないと難しそうだ。
つまり、かなりバズる動画を配信できる人しかプロチューバーにはなれないのだ。
プロチューバーを目指すのであれば動画再生回数又は動画再生時間を稼げるジャンルにした方がいいのだろう。
うちの書道動画はしばらく趣味でいいような気がする……
<つづく>
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