僕と猫と明珍火箸 ー 勝手に他人の半生を書いてみた

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年齢を偽る母、出生を偽る息子

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(2)年齢を偽る母、出生を偽る息子

【本話の前提】
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第1章『僕と猫と米沢牛 ― 勝手に他人の半生を書いてみた』を見ていない人のために、本話の前提を説明します。

本話に登場する武は父:竹村英世のクローンとして生まれた肉体年齢10歳の小学生です。

また、本話に登場する武の母:信子も肉体年齢28歳のクローンです。
本当の信子(本話ではオリジナルと表現)は既に死去しており、武の父はオリジナルの命を救うためにクローンの信子を作りました。オリジナルが生きていれば49歳です。

詳しくは第1章の『(29)竹村の話の矛盾点』をご覧ください。
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姫路駐屯地の事務所での自衛隊員と打ち合わせが終了したので、武たちは信子の実家に行くことにした。親切にも自衛隊員が車で信子の実家まで送ってくれた。

信子の実家は亀山(姫路駅からお城と逆方向に進んだ地名)にあった。
実家に向かう途中、信子は武に重要なことを伝えようとしている。

「今から行く母さんの実家には、武の『おじいちゃん』と『おばあちゃん』がいるんだけど・・・。」
信子は途中で言い淀んだ。

「『おじいちゃん』と『おばあちゃん』がどうしたの?」と武は信子に言った。

「えーっと、『ひいおじいちゃん』と『ひいおばあちゃん』ってことにしてくれないかな?」

「どういうこと?」

「母さんのオリジナルの年齢は49歳。でも、私の肉体年齢は28歳じゃない?」

「そうだね。」

「どう見ても20代の母さんが『49歳です!』って言ったら、変じゃない?」

「そうだね。」

「だからね・・・。母さんは『オリジナルの娘』という設定にしようかと思うんだ。49歳が28歳を生んだ。年の差は21歳だから辻褄(つじつま)は合うじゃない?」

「そうだね。だから、僕はオリジナルの孫。オリジナルの両親は僕の『ひいおじいちゃん』と『ひいおばあちゃん』ということかな?」

「えらい!あんた、頭いいねー。」

「まあ、別にいいけど。おじいちゃんとおばあちゃんは、母さんがクローンなのは知らないんだよね?」

「知らないわね。」

「父さんと母さんが出会ったのは23年前って父さんから聞いた。28年前に2人は出会ってないけど、そこはいいの?」

「なかなか鋭い質問をしてくるわね・・・。父さんと出会う前に付き合っていた男の人との間にできた子供にする?」

「父さんと出会う前、オリジナルが大学生の時に出産したとしよう。父さんと母さんが結婚する時、おじいちゃんとおばあちゃんに子供を紹介しないかな?」

「おじいちゃんとおばあちゃんには、21歳の時に出産したことは内緒にしてたの!」
信子は息子の疑問に必死に反論している。

「まあ、そういうことにしよう。母さんが病気になった時、おじいちゃんとおばあちゃんは見舞いに来なかったの?父さんは忙しかっただろうから、おばあちゃんが家に来て、そこに子供がいたらバレるよね?」

「じゃあ、21歳の時に生んだ子供は『相手の男の人に育ててもらっていた』というのはどう?」

「オリジナルは21歳の時に子供を産んだ。その相手と結婚しなかった理由は?」

「不倫とか・・・?」と信子は小さく言った。

「不倫している男性がオリジナルと結婚しないのに、子供だけを引取る?」

信子の不倫案は破綻した。

「分かった。不倫して子供ができたけど、オリジナルにも相手にも子供を育てるお金がなかった。だから、子供は孤児院で育ったということにしよう。」

「なんてクズな親なんだ・・・。おじいちゃんとおばあちゃん、泣くよ!」

祖父母に内緒で孤児院に入れるのは確かにクズだ・・・・。
信子は孤児院発言を恥じた。

「じゃあ、どうしたらいいのよ?」信子は小学生に逆切れした。

「養子はどうかな?」と武は言った。

「オリジナルの母さんは病気で子供ができなかった。だから、竹村夫婦は養子(娘)をもらった。でもさ、オリジナルが死ぬのに他所の子供いらなくない?」

「そうか・・・。じゃあ、母さんの年齢を誤魔化したら?」

「年齢詐称?」

「そう。28歳じゃなくって、5歳サバ読んで23歳にする。そうすればオリジナルが出産したのは26歳の時だ。オリジナルが死んだときに実はお腹の中に子供がいて、未熟児で生まれた子供は研究室で育てられた。その後、戦争のなんやかんやがあって、おじいちゃんとおばあちゃんには連絡できなかった。どう?」

「でも、それだったら母さんは武を13歳で出産したことになるよ。ダメじゃね?」

「そっちかー。ダメだな。」武は悔しそうだ。

「武の年齢を3歳サバ読んで7歳にする?そうしたら、母さんは武を16歳で出産したことになる。ぎりセーフじゃないかな?」

「小学生の教育課程は分かり易いから、僕の年齢を詐称するのは危険だよ。7歳だったら九九もやってないでしょ。僕が九九をスラスラ言えたらどうするの?」

「そうかー。子供の7歳と10歳は違うわね。」と信子は納得した。

「それよりも、僕を養子にしたらいいんじゃない?」

「そうね。武は母さんに似てないから、父さんの親戚の子供を養子にしたことにする・・・。5歳で父さんの養子になって、いまその子は10歳。」

信子は『武は養子』の方が、違和感がない気がした。

「僕が養子だとすると、僕と母さんは姉弟だ。父さんとオリジナルの間に生まれたのが、僕の前にいる母さんだ。母さんは父さんの娘だね。それで僕は父さんの親戚から引き取られた養子だから父さんの息子。母さんと僕は、父さんの娘と息子だから姉弟だ。」

「自分の子供を弟って言うのは斬新ねー。自然に言えるように、ちょっと練習しない?」

「いいよ。」

「私のこと『お姉さん』って言ってみて。」

「お姉さん」

「もう一回いい?」信子は武に頼んだ。

「お姉さん・・・」

「いい響きだわー。」

「見た目はお姉さん、頭脳は49歳。その名は、クローン信子!」

「酷いこと言うわね。ともかく、実家では母さんのことを『お姉さん』って言うのよ。」

「分かったよ・・・」

年齢を偽る信子。
出生を偽る武。

まるでスパイみたいだ。

SPY×FAMILY ってカッコイイ!
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