僕と猫と明珍火箸 ー 勝手に他人の半生を書いてみた

kkkkk

文字の大きさ
17 / 21

お菊の皿をすり替えろ!

しおりを挟む
(17)お菊の皿をすり替えろ!

今日の夜、皿のすり替えを決行する。

青山家に侵入して皿を盗み出す計画は、信子の反対により中止となった。
その代わりに、お菊さんが本物の皿を数えている時に、偽物の皿とすり替えることになった。

『お菊の皿』にそっくりな皿をデパートで買った。
お菊さんが皿をすり替えたら、武と信子は姫路工業大学で構成成分の分析を開始する予定だ。

武たちはお菊さんに皿屋敷の儀式を確認した。

儀式は毎日午後8時に行われているようだ。
本物の『お菊の皿』は青山家に保管されている。
青山家の人間が『お菊の皿』を毎日午後7時50分に姫路城のお菊井戸に持ってきて、置いておく。午後8時にお菊さんが出現し、皿を『1』から『9』まで数えた後、青山家の人間が間髪入れずに『10』と言う。そうすると、お菊さんは「あらうれしや」と言って消える。

これが一連の皿屋敷の儀式だ。
皿のすり替えに使える時間は、お菊さんが皿を『1』から『9』まで数える間だから20秒程度だ。素早いすり替え作業が要求される。

お菊さんは水蒸気の膜を使って物質を透明にする能力を有している。
皿を数えている間に、水蒸気の膜で本物の皿と偽物の皿を透明にしてすり替えることになった。

※詳しくは『第8話 アオヤマの嘘から出た実』をご覧下さい。

武とお菊さんはしばらく打合せをした後、皿のすり替え作戦を決行するために姫路城に向かった。


***

お菊さんのすり替え作業における不測の事態に備えるため、武と猫はお菊さんに同行している。お菊さんは水蒸気の膜を使って透明になれるから、武と猫も膜の中に入れてもらって姫路城に侵入した。

猫は透明になったことに興奮しているようだ。「入館時間過ぎても入れるなー」とか「入場料いらないなー」と騒いでいる。

猫に入館時間も入場料もないのだが・・・

武たちが姫路城のお菊井戸に到着したのは午後7時30分。武と猫はお菊井戸の近くに隠れているのだが、暇だから小声で雑談している。

「この井戸は広場のど真ん中にあるんだなー。この井戸に死体を投げ入れたら『見つけて下さい!』って言ってるようなもんだろ?」と猫は言った。

「だよなー。殺人の偽装が目的だったから、わざと見つかりやすい場所にしたんじゃないか? そうじゃないと、お菊さんは誰かに発見してもらえるまで1週間でも2週間でも待ってないといけない」

「確かに・・・。早く発見してもらえなかったら悲惨だな・・・」

午後7時50分になると、時間通りに青山家の当主のおじいさんが風呂敷包みを持って井戸の側にやってきた。中には『お菊の皿』が入っているのだろう。
お菊さんは既にお菊井戸の側にいて、透明の状態で待機している。

午後8時になると、お菊さんは水蒸気の膜をとって姿を現した。幽霊に見えるように、足元をぼやかしている。
芸が細かい・・・。

お菊さんはお菊井戸の側に置かれた皿一式を確認すると、皿数えの作業に取り掛かった。

お菊さんは風呂敷に包まれた皿を取り出し丁寧に床に置く。
長年繰り返し行われてきた儀式。実に無駄のない美しい動きだ。

午後8時1分を過ぎたころ、お菊さんは数え始めた。

― いちまぁ~い・・・ にまぁ~い・・・

武と猫は少し離れたところから見ている。

「すげーなー。幽霊っぽいなー」と猫は感心している。

「そりゃそうだよ。400年も幽霊を演じ続けているんだから、芸術の域に達してる。動きもスムーズだし、『いちまぁ~い』も抑揚が効いたいい声だ」と武は猫に言った。

「いやー。まさか本当の播州皿屋敷を見れると思わなかったなー。役得だな」

「だな」

武たちが話している間も皿数えは進んでいく。

― ごまぁ~い・・・

お菊さんはそう言った瞬間、手に持った皿を水蒸気の膜を掛けて透明にし、偽物の皿とすり替えた。本物の皿はお菊さんの着物の袖に隠したようだ。

「武、見たか? すげーな。見事なテクニックだなー」猫は興奮して言った。

「ああ、すごい! あれは麻雀で使えそうだ。牌を隠せるからイカサマし放題だ」武はお菊さんのテクニックを冷静に分析する。

「そうだな。お菊さんと麻雀やるのは危険だな」猫はしみじみと言った。


― きゅうまぁ~い・・・

お菊さんが言うと、後ろから青山家の当主がやってきて「じゅう(十)」と言った。

― あらうれしや~

お菊さんは水蒸気の膜を被って視界から消えた。
青山家の当主は、地面に置かれた9枚の皿を風呂敷に包んで帰り支度をしている。

猫は笑いをこらえている。

「茶番だと分かって見るのはダメだな・・・。シュールすぎるぞ、あれ。あのじいさんが『十』って言った瞬間、俺笑いそうになった」

「しー、静かに・・・」武は猫に言った。

青山家の当主は猫の声に少し反応したものの、何もなかったようにお菊井戸から立ち去っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

処理中です...