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25「孤児院と教会と」
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シルヴェリオはチェレステを呼び、森の中を西へと歩いていた。背には孤児院への約束のお土産を担ぐ。一流菓子店に発注しておいた大量のビスケットだ。
「おっと、これも一応採取しておくか」
「ただの雑草ニャンよ……」
「いや。植物図鑑にも、ギルドの薬草分類にもなかった。未知の何かと言えるな」
「名前がないから雑草分類なのニャン……」
シルヴェリオは雑草摘みをしつつ、チェレステの背嚢に詰め込む。
「とんだクエストニャンねー」
二人は今日の目的地、レイ地区の孤児院に到着した。
玄関で名乗り面会を告げると、笑顔で中に通される。イケメンの面目躍如であった。
「まあ、こんなにたくさん――。子供たちも喜びますわ」
シルヴェリオは担いでいた荷をほどく。
「いえ。先日マザー・ルドヴィカと仕事をさせて頂きました。なかなか骨が折れましたよ」
「まあ、それで。厳しいお方ですから大変でしたでしょうに。でも立派なお方ですわ」
「はい」
共通の知り合いをだせば、なお信頼が増す。子供たちが菓子の匂いにつられて集まってきた。
「おっ、早速来たな。兄さん」
パーティーリーダーの登場だった。他のメンバーもそろっている。
「さっそく仲間を訪ねさせてもらったよ」
「まだお試し採用さ。使えないなら即追放だからな」
「もう、止めなさいよ。ありがとうございます」
「いや。薬草採りついでだ。今日は掛け持ちしているパーティーのメンバーと来たよ。私はシルヴ。彼女はチェレステだ」
四人はそれぞれ自己紹介した。
「彼が色々とお世話になったようね。これからもよろしくしてあげて」
「おー。あんたも俺たちのパーティーに入るか?」
「私は女子ばかり三人でパーティーを組んでいるの。シルヴは知人に頼まれて面倒みているのよ」
シスターたちが入れたお茶を飲みながら、皆で取り分けたビスケットを楽しむ。壁には絵画が掛けられ、それは奥の廊下まで続いたいた。
「なかなかの作品が並んでおりますね。拝見させて頂いてよろしいですか?」
「もちろんけっこうです」
信徒たちより寄贈された作品群だとは想像できる。
(なんとまあ……)
市井の人々が描いた絵の中に、若き師匠の絵画があった。サインはないが、おそらく三十代頃の作品と推察できた。悪戯心で友人にでも頼み寄進させたのだ。それが巡り巡って今ここにある。作者がバレれば大司教の応接間に移されるだろう。
「何見てんだい?」
「ああ、この絵はどうかと思ってな」
「息抜きで描いた絵だよ。それ、いつもは違うタッチで描いてると思うぜ」
「そうか?」
「神話画の癖を隠そうとしているんだ」
「たいしたものだな」
ヴィットーレ師匠は二十代で天才と呼ばれ三十代で凡人と呼ばれ、四十代で神の領域に到達した。スキルに頼らず人の力でそこまで到達したのだ。
「俺の一押しはこっちだよ」
それは洗濯桶を踏みながら讃美歌を歌うシスターたちだった。互いに目で語り合いながら想いを歌に載せているようだ。
古い教会横の空き地手で、刈り込まれた雑草の地面には点々とピンク色の可愛らしい花が咲く。
「ルキーノは絵の才能があるぞ」
「いや、俺は描く才能がない。見る才能はあるけどな。役にたたない」
「そうか……」
それは確かに世に認められない才能だ。どの絵が素晴らしいかは、全てサロンの評価で決まるからだ。
(そのうち久しぶりにサロンを覗いてみるか)
「おっと、これも一応採取しておくか」
「ただの雑草ニャンよ……」
「いや。植物図鑑にも、ギルドの薬草分類にもなかった。未知の何かと言えるな」
「名前がないから雑草分類なのニャン……」
シルヴェリオは雑草摘みをしつつ、チェレステの背嚢に詰め込む。
「とんだクエストニャンねー」
二人は今日の目的地、レイ地区の孤児院に到着した。
玄関で名乗り面会を告げると、笑顔で中に通される。イケメンの面目躍如であった。
「まあ、こんなにたくさん――。子供たちも喜びますわ」
シルヴェリオは担いでいた荷をほどく。
「いえ。先日マザー・ルドヴィカと仕事をさせて頂きました。なかなか骨が折れましたよ」
「まあ、それで。厳しいお方ですから大変でしたでしょうに。でも立派なお方ですわ」
「はい」
共通の知り合いをだせば、なお信頼が増す。子供たちが菓子の匂いにつられて集まってきた。
「おっ、早速来たな。兄さん」
パーティーリーダーの登場だった。他のメンバーもそろっている。
「さっそく仲間を訪ねさせてもらったよ」
「まだお試し採用さ。使えないなら即追放だからな」
「もう、止めなさいよ。ありがとうございます」
「いや。薬草採りついでだ。今日は掛け持ちしているパーティーのメンバーと来たよ。私はシルヴ。彼女はチェレステだ」
四人はそれぞれ自己紹介した。
「彼が色々とお世話になったようね。これからもよろしくしてあげて」
「おー。あんたも俺たちのパーティーに入るか?」
「私は女子ばかり三人でパーティーを組んでいるの。シルヴは知人に頼まれて面倒みているのよ」
シスターたちが入れたお茶を飲みながら、皆で取り分けたビスケットを楽しむ。壁には絵画が掛けられ、それは奥の廊下まで続いたいた。
「なかなかの作品が並んでおりますね。拝見させて頂いてよろしいですか?」
「もちろんけっこうです」
信徒たちより寄贈された作品群だとは想像できる。
(なんとまあ……)
市井の人々が描いた絵の中に、若き師匠の絵画があった。サインはないが、おそらく三十代頃の作品と推察できた。悪戯心で友人にでも頼み寄進させたのだ。それが巡り巡って今ここにある。作者がバレれば大司教の応接間に移されるだろう。
「何見てんだい?」
「ああ、この絵はどうかと思ってな」
「息抜きで描いた絵だよ。それ、いつもは違うタッチで描いてると思うぜ」
「そうか?」
「神話画の癖を隠そうとしているんだ」
「たいしたものだな」
ヴィットーレ師匠は二十代で天才と呼ばれ三十代で凡人と呼ばれ、四十代で神の領域に到達した。スキルに頼らず人の力でそこまで到達したのだ。
「俺の一押しはこっちだよ」
それは洗濯桶を踏みながら讃美歌を歌うシスターたちだった。互いに目で語り合いながら想いを歌に載せているようだ。
古い教会横の空き地手で、刈り込まれた雑草の地面には点々とピンク色の可愛らしい花が咲く。
「ルキーノは絵の才能があるぞ」
「いや、俺は描く才能がない。見る才能はあるけどな。役にたたない」
「そうか……」
それは確かに世に認められない才能だ。どの絵が素晴らしいかは、全てサロンの評価で決まるからだ。
(そのうち久しぶりにサロンを覗いてみるか)
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