転生先は上級貴族の令息でした。元同級生たちと敵対しつつスローライフで戦記します。人気者への道は遠いよ。オタノリのまま貴族生活を満喫したい。

川嶋マサヒロ

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01「ただの中二だった僕」/旧版

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 都内と郊外の境目ぐらいにある中学校。ここは中の上位で進学校に落ちこぼれた生徒と、学力中流の生徒が混在する学校だ。
 僕は中の中を自称している中学生。左近さこん孝朗たかよし
 父は中小の中企業に勤めているサラリーマン。母親は大きくもなく、小さくもない中間地方自治体の公務員。そして妹が一人。みごとな中流人です。

 僕は二年生になったばかり。クラス替えはなく、そのまんまなので周囲は知った顔ばかり。
 名前と顔を知っているぐらいのヤツ。少しは喋るヤツ。小学以来の幼馴染みのヤツ。個人的に好感度が高いヤツ、低いヤツ。尊敬しているヤツ、軽蔑しているヤツ。金持ちのヤツ、そうでないヤツ。
 そして、それら全てを僕に跳ね返してくるヤツら。
 と思ってみても、別にクラス全体がモメているわけじゃない。この世界はおおむね平和です。

 授業が終わってそのヤツらが帰り支度を初めた。さて――。
 ぼんやりと窓から校庭を眺める。唐突なのだが……。
 世界は残酷だ。
 極悪、兇悪、無情、無慈悲、残酷、無道、残忍、非道――。
 世界は過酷に満ちている。
 生きているかぎり、それらからは逃れられない。
 運命づけられた僕らは、どうあがこうがその流れからは逃れられない。だけどせめて中流に。

 ホントに唐突だなあ。我ながら拗らせている。
 中二病の、いいや、これは思春期の悩みです。アニメや漫画のセリフではないからね。
 影響なんか受けてないよ。ほんと、絶対。
 こんなことを妄想――、思いを馳せてしまうのはやはり・・・、思春期です。
 受験、人間関係、親の期待。そして青春の悩み。ラノベの読み過ぎが原因?
 いやいや。こんな妄想にひたっている場合じゃない。でもなんで急にこんなことを思いつく?
 校庭には散り始めた桜。その前に立っている一年生。門の横に植えられている桜の木々。花びらが風に巻き上げられ渦を巻いている。
 新入生たちがやって来て僕は二年生になり、もう桜が終る季節だ。
 あいつ、一年じゃない。このクラスに来た転校生? 今日はサボりかい。なかなかやるね。
「さて、帰るか……」
 とにかく帰ろう。全てを振り切って下校するのは、僕がれっきとした帰宅部だからだ。そう、これは義務と権利の義務なのだ。

 その日は朝から嫌な感じだった。何が? と問われれば答えられないけれど、とにかく嫌な感じだったんだ。
 などと心配していたが、無事に最後の授業が終わった。
 先生にあてられることもなく、ほっとしたよ。
 繰り返そう。僕は中学校二年生。いわゆる中二病真っ盛り。
 さて、どこに寄り道しようかと考えつつ、やっぱり悪い予感の方が勝った。
 真面目に家に帰ろう。
 ちなみに小心者でもある。
 僕は霊感があるとか特に勘が鋭いとかじゃないけど、このモヤモヤした感じは一体何なんだ?
 まあ、恋の悩みではないな。
孝朗たかよし、どうした? 帰らないのか?」
「いや。帰るよ」
 もたもた考えていると、友人の石脇いしわき一晴かずはるが話しかけてきた。
 家が近所で幼稚園からの幼なじみ。つまり帰宅部寄り道組の、心強い仲間なのです。

 隣の席の女子が、鞄から小説の単行本を出して開く。これは彼女の習慣だ。下校時を少しずらすためにここで時間をつぶすのだ。
 そんな姿が真面目と誤解されクラス委員長を拝命させられている。いや、本当に真面目な女子だと思うよ。知らんけど。たいして話したこともない人だけど。

 他の生徒たちは部活が大変だとか、どうしようか? などと話しながらぞろぞろと教室から出て行く。
「どっか寄ってくか?」
「そうだなあ……。ん?」
 外に突然白い光の玉が現れる。
「なっ、なんだあ?」
 一晴かずはるもそれに気が付く。
 それはぐんぐん大きくなり、教室の窓いっぱいに広がる。僕たちは、ただ唖然としてそれを眺めるしかなかった。でも――!
「まずいっ!」
 僕はなぜだかわからないが、窓に駆け寄り両手をいっぱい広げる。
「みんなっ! 早く逃げるんだ」
 こんな行動に何か意味があると思えない。
 でも僕はやらずにはいられなかった。
 白い光は視界いっぱいに広がり、そして教室全体を飲み込んだ。
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