転生先は上級貴族の令息でした。元同級生たちと敵対しつつスローライフで戦記します。人気者への道は遠いよ。オタノリのまま貴族生活を満喫したい。

川嶋マサヒロ

文字の大きさ
21 / 64

20「化身具現の騎士」

しおりを挟む
 聖堂から門までのあいだに貴族ふうの人たちが大勢いた。今日は僕様の貸し切りってわけじゃないらしい。お母さんたちは会釈してすれ違う。早い時間の、別枠されていたみたいだ。
 ん? いたっ! あの赤ん坊だっ! この中のどこかに仲間がいる。
 ここにいる人たちの姿からみて、それほど裕福な貴族じゃないみたい。つまり僕より貧乏一家に転生したんだっ!
 誰だ? 誰なんだ。
 僕の記憶は未だ曖昧だ。顔はなんとなく思い出せるが、名前は今でもよく分からない。
 赤ん坊の容姿ではまだ性別不明だし。相手にしても、今の僕をそう思うだろう。
 今回もすれ違うだけで、それ以上の接触はできなかった。
 僕の家はこの世界では、かなり上の貴族なのだ。つまり異世界転生した他の同級生はほとんどが僕より身分が下だと考えられる。
 身分社会。つまり、生きている世界が違えば、これからの出会いも制限されるのだと思う。中流身分としてずっとやってきた僕には、なんだか生きづらい環境になってしまった。
 貴族の義務とか、本当カンベンだよなー。
 なんとか仲間を探さなくちゃ。仲間? 僕に仲間なんていたっけ……。
 なんだ。急に眠くなってきた。これはさっきの副反応なのかな。
 そろそろ昼寝の時間なのか。とりあえず難しいことを考えるのはやめて、眠るとしよう。僕はまだまだ赤ん坊だ。
 現実逃避っ!

  ◆

 はっ!
 目が覚めるとそこは僕の部屋だった。カーテンからは薄い月明かりが差し込んで、天井の絵がぼんやりと見える。
 あのまま、こんな時間まで寝てしまったようだ。
 うえっ。なんだか気持ち悪い。いつものアレだ。ゲロスキルだ。
「オエーッ!」
 僕の口から溢れ出た白いマイ・スライムが、そのまま流れて床に落ちる。それから、まるで滝登りのように立ち上がった。ゲロがだよ。
 これは時々ネットなんかで見るオカルト的なやつなのか!
 僕の体の中から出てきたとはいえ、あまりにも気持ち悪すぎるだろ。
 それはアメーバみたいにうにうにと動きながら広がって、人のような形になっていく。白色が黒色にかわり闇に溶け込む。
 そして黒き鎧の騎士、みたいな姿になった。これが僕のスキルか。
 すごい。でも――。
 なんか悪役みたいだなあ。
 イマイチっ! やっぱり黄金とか赤いやつとかハデなのが好みです。わがまま贅沢言い放題。
 さて。こんな力を手に入れたんだよ~。早速行使するか。その黒い騎士は僕の意識に反応して回れ右して歩き出した。
 おーい……。
 壁にぶつかると思いきや、体はそのまますり抜ける。実体があるようでないような存在なんだ。
 目の前には庭の景色が広がる。僕の意識と連動しているんだ。スゴイ!
 おっ。
 ピンクの子猫が現れた。
『魔力暴走を防ぐために強制排出させたが、簡単に具現化させるであるか』
 なるほどお目付役なんだもんね。幼女は寝ている時間じゃないの? 悪いね。仕事させて。
 これって何?
『その姿はアバター化身具現と呼ばれているスキルである』
 ほう。スキルですか。ラノベふうだけど、金の鎧に変更したいんだけど
『無理』
 赤いやつでも……。
『不可能である』
 そう……。あきらめるか。僕が陽キャなら、ハデハデの豪華鎧になったんだろうし。この姿は自己責任。嫌な言葉だなあ。
 まっ、しゃーないか。
 腰の剣を抜いてみる。飾りじゃないんだ。とりあえず屋敷の庭で刃物を振り回すのはまずいと思い鞘に収める。
 このままじゃ、不審者の不法侵入だ。頭と心の中で気合を入れて飛び上がると、体はそのまま空中に浮いた。猫が背中に飛び乗る。
『教えなくとも、できるであるか?』
 心で念じる。お約束だね。よしっ!
 僕はそのまま空を飛んだ。まっ、これぐらいは普通だよね。簡単、簡単。
 そうだっ! 大事なことを思い出した。
 今日の診断で、もう一人も僕と同じ力を持っている人はいたの?
『いや、聞いていないであるが』
 いや、そんなはずは……。
『私はあのあと責任司教に任せ、総本山に向かったである』
 僕みたいな人は、僕だけなの?
『そうである。報告はきていない。前回は司教の安静を考え、やや強い力の診断は後日とされた』
 そうか……。今日は魔力を行使された、ではなくて僕が感じた側だった。ただの魔力を勘違いいたのかもしれない。
『転生者はどこかにいるかとは思う。だがお主ほどむき出しに魔力を溢れさせる者は、まれである』
 僕は優秀だね。いや、お守り付の危ない赤ん坊かあ。
『そうである』
 やれやれ。劣等生か、と思った瞬間ガクッと高度が下がる。
『慣れが必要であるな。今日はここまでである』
 いきなり最強は無理か。
 そのまま屋敷に向かって降下すると、体は屋根を通り抜け部屋に戻る。目を開けるともう赤ちゃんの体だった。白スライムは口から体内に入り込む。
『この姿とこの屋敷の関係は、知られてはならないである』
 だね。不審者みたいのが名門貴族の屋敷をウロウロしていたら、週刊誌ネタだよ。

 さて、二度寝しよう。また眠くなってきた。
 アバター化身具現か……。
 この世界の言葉は独特に作用する。例えば声はアバターと聞こえるのに、頭は化身具現と理解している。
 言葉を知らない僕も話の意味を理解できる。そして耳で覚えた音は記憶に残り言語として蓄積される。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...