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35「勇者仮面の新聞ネタ」
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どうにも行き詰まってしまった感がある。
そりゃそうだよな。簡単に人気者になる方法があれば、誰だって人気者だ。そもそもクラスの人気者でもなかった僕が、異世界に来て人気者になるのが当然だと考えるのはおこがましい話だ。反省する。
あのおかしな同級生だって、きっとうまくいってないんだろうなあ。しかしあいつに大義はないけど、僕にはある。
テーブルの上に乗っている情報源に気が付いた。
新聞か……。
王都ウイークリーだったな。まだ字は読めないけれど、雰囲気はつかめるはずだ。つかまり立ちして、魔力を使って床に落とす。まずは一面を見てみた。
「びゃぶーっ!」にゃにーっ!。
でかでかとユルクマのイラストが載っている。子供新聞かよ!
一方、勇者仮面は左下の角っこに、小さく顔だけが描かれていた。
まあ、一面に載ったってことで、いいのかな?
しかし――。
ユルクマは大きく全身が掲載されている。おまけにポーズなどもバッチリ決めていた。これではまるでアイドルのクラビアだ。
僕は顔だけである。これじゃあ……。
指名手配犯の顔写真?
お母さんがやって来た。ミルクの時間です。
絨毯の上に座り、僕を抱っこして哺乳瓶をくわえさせてくれる。
一本まるまる飲み切り、そして床にうつぶせにされた。僕は少しだけハイハイしてもう一度新聞を見た。何とかこちらに注意を引かなければならない。
「おかー。だーだー」お母さん。これこれ。
ユルグラビアをバンバン叩く。
「あら。同じ人形が新聞に載っていると、気になるよね」
僕が気になるのは、勇者仮面の人気だけです。
「どれどれ、えー。王都の守護者森のクマさん、またしても大活躍。侵入した魔獣を撃破。あっぱれ」
僕は下唇を突き出す。非常に不愉快な見出しだ。
「森のクマさんは王都の隅々、そして森の中に至るまでも見回り、魔獣の脅威と戦っている。我ら王都ウイークリーは読者の代表として賛辞を送りたい。ありがとう森のクマさん」
「ブヒッ」ふんっ。
「ある庶民の一人は語る。森のくまさんは素晴らしい。子供にも優しいし、お年寄りも助けてくれる。私たちがお礼を言っても、大したことはないですから。といつも謙遜する。なんと素晴らしい人物でしょうか。彼女は私たちの味方です。ありがとう」
森のクマさんはすでに会話もできる。僕と同等の魔力、またはそれ以上の力を持つ者なのだ。それにしても彼女! 女性なのか……。
「ある王政関係者は語る――」
もしかしてお父さんかな?
「森のクマさんは非常に信頼している。庶民たちに支持されているし、何より実績がその正当性を表しています」
「ぶーっ」違―うっ。
お父さんの持っている情報とは、ちょっと管轄が違うみたいだ。
「すごい評判ね。私もファンになっちゃいそうだわ」
お母さん。騙されてはいけませんよ。誰だって外面は良い人に作るってもんですよ。
「それにしても、勇者仮面の記事。ひどいわね……。ちょっと可哀相になってきちゃったわ」
いや。そこは読まなくてもいいです。僕は聞きたくない情報には、耳を塞ぐタイプです。聞かなければ、なかったことと同じですから。
「無様、勇者仮面! またしても森のくまさんの足を引っ張る。役立たず勇者仮面は人間の敵か味方か?」
「ぶーっ」ひーっ。
「庶民街の酒場で、勇者仮面について聞いてみた。あれは全くだめだよ。クマさんの邪魔ばかりしている。見た目は強そうなんだけどなあ。実力はさっぱりだ。と語気を強めた。でかいことばかり言って、強い敵が出たら逃げ出す。そんな奴って結構いるだろ。とバッサリと切って捨てた」
ひっ、ひどい! まあ、逃げるが勝ちだけどさ。
「勇者仮面の評判はかんばしくない。だって」
ユルクマは政府高官のコメントなのに、なぜ勇者仮面は酒場のおっさんたちのコメントなんだ。酔いにまかせて勇者仮面批判なんて、ひど過ぎるっ!
「なお、子供たちに意見を聞いてみたところ、百対ゼロで圧倒的多数のみなさんが森のクマさんが大好きと答えました」
「ぶーっ」ひーっ。
僕はもはや涙目だ。
「この記事がおかしいわよね。仮面大好きで、森のクマさんがいまひとつの赤ちゃんだっているのに。ここに」
お母さんは僕を見る。そのとおりっ! 慰めになるな~。
僕はユルクマを床に寝かせて、その上に勇者仮面を立たせた。許さんフェイク新聞。暗黒騎士様をなめるなよ。
「あら、ラン君は怒ってるんだ。そりゃ、勇者仮面が好きっていう人もいるわよね。ちょっとは人形も売れているんだし」
しかし、店頭からは回収されている。敵との誤解はそのうちに解けるだろうけど、この評判は本当になんとかできないものか。
そりゃそうだよな。簡単に人気者になる方法があれば、誰だって人気者だ。そもそもクラスの人気者でもなかった僕が、異世界に来て人気者になるのが当然だと考えるのはおこがましい話だ。反省する。
あのおかしな同級生だって、きっとうまくいってないんだろうなあ。しかしあいつに大義はないけど、僕にはある。
テーブルの上に乗っている情報源に気が付いた。
新聞か……。
王都ウイークリーだったな。まだ字は読めないけれど、雰囲気はつかめるはずだ。つかまり立ちして、魔力を使って床に落とす。まずは一面を見てみた。
「びゃぶーっ!」にゃにーっ!。
でかでかとユルクマのイラストが載っている。子供新聞かよ!
一方、勇者仮面は左下の角っこに、小さく顔だけが描かれていた。
まあ、一面に載ったってことで、いいのかな?
しかし――。
ユルクマは大きく全身が掲載されている。おまけにポーズなどもバッチリ決めていた。これではまるでアイドルのクラビアだ。
僕は顔だけである。これじゃあ……。
指名手配犯の顔写真?
お母さんがやって来た。ミルクの時間です。
絨毯の上に座り、僕を抱っこして哺乳瓶をくわえさせてくれる。
一本まるまる飲み切り、そして床にうつぶせにされた。僕は少しだけハイハイしてもう一度新聞を見た。何とかこちらに注意を引かなければならない。
「おかー。だーだー」お母さん。これこれ。
ユルグラビアをバンバン叩く。
「あら。同じ人形が新聞に載っていると、気になるよね」
僕が気になるのは、勇者仮面の人気だけです。
「どれどれ、えー。王都の守護者森のクマさん、またしても大活躍。侵入した魔獣を撃破。あっぱれ」
僕は下唇を突き出す。非常に不愉快な見出しだ。
「森のクマさんは王都の隅々、そして森の中に至るまでも見回り、魔獣の脅威と戦っている。我ら王都ウイークリーは読者の代表として賛辞を送りたい。ありがとう森のクマさん」
「ブヒッ」ふんっ。
「ある庶民の一人は語る。森のくまさんは素晴らしい。子供にも優しいし、お年寄りも助けてくれる。私たちがお礼を言っても、大したことはないですから。といつも謙遜する。なんと素晴らしい人物でしょうか。彼女は私たちの味方です。ありがとう」
森のクマさんはすでに会話もできる。僕と同等の魔力、またはそれ以上の力を持つ者なのだ。それにしても彼女! 女性なのか……。
「ある王政関係者は語る――」
もしかしてお父さんかな?
「森のクマさんは非常に信頼している。庶民たちに支持されているし、何より実績がその正当性を表しています」
「ぶーっ」違―うっ。
お父さんの持っている情報とは、ちょっと管轄が違うみたいだ。
「すごい評判ね。私もファンになっちゃいそうだわ」
お母さん。騙されてはいけませんよ。誰だって外面は良い人に作るってもんですよ。
「それにしても、勇者仮面の記事。ひどいわね……。ちょっと可哀相になってきちゃったわ」
いや。そこは読まなくてもいいです。僕は聞きたくない情報には、耳を塞ぐタイプです。聞かなければ、なかったことと同じですから。
「無様、勇者仮面! またしても森のくまさんの足を引っ張る。役立たず勇者仮面は人間の敵か味方か?」
「ぶーっ」ひーっ。
「庶民街の酒場で、勇者仮面について聞いてみた。あれは全くだめだよ。クマさんの邪魔ばかりしている。見た目は強そうなんだけどなあ。実力はさっぱりだ。と語気を強めた。でかいことばかり言って、強い敵が出たら逃げ出す。そんな奴って結構いるだろ。とバッサリと切って捨てた」
ひっ、ひどい! まあ、逃げるが勝ちだけどさ。
「勇者仮面の評判はかんばしくない。だって」
ユルクマは政府高官のコメントなのに、なぜ勇者仮面は酒場のおっさんたちのコメントなんだ。酔いにまかせて勇者仮面批判なんて、ひど過ぎるっ!
「なお、子供たちに意見を聞いてみたところ、百対ゼロで圧倒的多数のみなさんが森のクマさんが大好きと答えました」
「ぶーっ」ひーっ。
僕はもはや涙目だ。
「この記事がおかしいわよね。仮面大好きで、森のクマさんがいまひとつの赤ちゃんだっているのに。ここに」
お母さんは僕を見る。そのとおりっ! 慰めになるな~。
僕はユルクマを床に寝かせて、その上に勇者仮面を立たせた。許さんフェイク新聞。暗黒騎士様をなめるなよ。
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