【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。

川嶋マサヒロ

文字の大きさ
9 / 33

09「動き出す破棄案件」

しおりを挟む
 私はメイドと共に衣装を扱うお店を何軒か回りました。マルゲリット様の姿を思い出し騎士のイメージを払拭します。そして正装の兄の横に配置。どのようなお姿が人目を引いて感心を集めるか難解なパズルを解いていきます。
 何よりも、ここは兄の好みが最優先。あの・・凜々しさの先にどのような美しさを演出しようかと頭を悩ませました。貴重品倉庫の棚を開けて、母親と共にアクセサリーを選びクリーニングに出します。身に付ける女性が新しい主になってくれればと願いながら。
 夜会のお手伝いは良い気分転換となりました。出席などできない私の代わりに、楽しんできて欲しいとの気持ちで一杯になります。

 そしていよいよマルゲリット様がバシュラール家の屋敷へとやって来ました。私と母とメイドたちでお出迎えいたします。
「ご無理なお願いをいたしまして、申し訳ございません」
「いえいえ。こちらこそ、無粋ぶすい者の息子を引っ張り出していただき感謝いたします」
 母のバシュラール夫人に、マルゲリット様は丁寧に頭を下げるました。母も私も丁寧に頭を下げさせていただきます。兄上関係の令嬢が我が家を訪ねるなど初めての快挙なのですよ。大事件です。
「さあ。準備は出来ておりますわ。どうぞこちらへ」
 私と母で選んだ五着ほどを屋敷に運んでもらっておりました。一流衣装店のスタッフ二名が手伝いに来てくれています。
 社交界で着飾るドレスはレンタルが一般的です。デザインやサイズを直し、小物などを使い皆が最先端と伝統を競い合うのです。

 扉がノックされました。開けますと、騎士正装姿の兄がおります。
「どうぞ。お兄様」
 入るなり兄は無言で驚いたような表情になります。ふふふ、どうですか?
「おー。馬子にも衣装ですねえ……」
 おっと、その言いようは――。でもお兄様の表情からは、照れ隠しと読み取れます。やっぱりとんでもない無粋ぶすい者ですね。
「とても失礼ですわよ。お兄様」
「いや。素直に美しい、と言わせてもらうよ」
 それでよろしいのですよ。お兄……。
「照れくさいですね……」
 そう言ってはにかむ女流騎士様です。なんて可愛らしい姿なのでしょう。これは本番が楽しみです。

  ◆

 翌日、政務庁舎にある私たちの部屋に行くと、マリエルが一人ポツンと座っていました。
「どうしたの?」
「これよ。ちょっと読んでみて……」
 私はテーブルの書類に目をやりました。政務庁舎の正式な書式です。
「本日の職務は休止とする。午前中は執務室で待機し、正午には退庁せよ?」
 リュシーもやって来ました。私はその書類を差し出します。
「ふ~ん。今日がお休みなら、昨日のうちに言ってくれれば良かったのに~」
「この時期に組織改編なんてあるのかしらね」
 書類がないのではなく、上で止まっているのです。マリエル言った理由は妥当ではありますが、たぶん違うでしょう。
 もうこれ以上、親友たちに黙ってはいられません。裏切りになってしまいます。
「実は……」
「ん?」
 リュシーが私の顔を覗き込みます。もう告白するしかありません。
「私はビュファン・アルフォンス殿下に、婚約破棄を言い渡されました。たぶんそれが原因でしょう」
「「……」」
 二人は口をぽかんと開けて私を見ています。マリエルが立ち上がって私に歩み寄りました。
「なんてことですか……」
 そのまま私を抱きしめてくれます。リュシーも寄り添い私の体に手を添えました。
「気が付かなくて、ごめんなさい。そんなことになっていただなんて――、知らなかった……」
 そして唇を噛みしめます。
「正式な発表前に口にするなど、殿下に対する不敬ですから……。だから黙っていましたが、あなたたちにも迷惑をかけてしまいました」
「いっ、いいのよ……」
「そんなの、ひどいよね……」
 マリエルとリュシーと共に私もまた泣きました。

 正午になり女性事務員が指示書を持ってやって来ました。本日は退庁せよとあります。ただし責任者である私には話があるとのことでした。一応このボランティア活動では私がリーダーとなっております。

 そして案内された応接室には、あの・・人が待っておりました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

婚約破棄されたので契約を終了しただけですが? ~王国が崩壊したのは私のせいではありません~

しおしお
恋愛
王立学園の卒業舞踏会。 王太子レオナードは突然、婚約者である公爵令嬢アデリーナとの婚約破棄を宣言する。 隣に立つのは、涙を流す義妹ミレイナ。 「お姉様に虐げられてきました」と訴える彼女の言葉を、貴族たちは信じてしまう。 悪女として断罪され、追放を宣告されるアデリーナ。 だが彼女は怒りも悲しみも見せず、ただ静かに微笑んだ。 「承知いたしました。では――契約を終了いたします」 その一言が、すべての始まりだった。 公爵家による融資、貿易、軍需支援。 王国を支えていたすべてが、静かに停止する。 財務は崩壊し、軍は止まり、商人は離反。 王都は混乱に包まれていく。 やがて明らかになる義妹の嘘。 そして王太子の責任。 すべてが暴かれたとき、二人を待っていたのは―― 完全な破滅だった。 一方アデリーナは、隣国で静かな紅茶の時間を過ごしていた。 これは、 婚約破棄された公爵令嬢が“何もしなかった”ことで始まる、 王国崩壊と地獄のざまぁの物語。 ――その報告書を、彼女が読むことは一度もなかった。

私を婚約破棄した国王が処刑されたら、新しい国王の妃になれですって? 喜んで…と言うとでも?

あんど もあ
ファンタジー
幼い頃から王子の婚約者だったアイリスは、他の女性を好きになった王子によって冤罪をかけられて、田舎で平民として生きる事に。 面倒な貴族社会から解放されて、田舎暮らしを満喫しているアイリス。 一方、貴族たちの信頼を失った王子は、国王に即位すると隣国に戦争を仕掛けて敗北。処刑される。 隣国は、アイリスを新しい国王の妃にと言い出すが、それには思惑があって…。

処理中です...