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08「迫り来る何か」
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バシュラール家の楽しい夕食は、最近は盛り上がりに欠けております。あんな事件があったのですから仕方ありません。皆がどこかで私に気を使っております。とても楽しい会話などできません。
「ディアーヌ。ちょっと頼みがあるのだが……」
「はい、お兄様。いいですよ。何でしょうか?」
「後で父上の書斎で話すよ」
食事が終わってからバラバラに、その書斎に集まります。毎夜毎晩家族会議では、屋敷の使用人たちにも何事かと心配させてしまうので。
「お待たせいたしました」
「おうっ。さっきの話だけどな。マルゲリットが社交界に行かねばならんのだが、騎士団では勝手がわからん。相談に乗ってやってくれるか?」
兄は父との話を中断して私に向き直りました。
「お安い御用ですよ。お兄様」
「俺も同行する。ヴィクトルめ。俺の面談申請を無視していやがるからな。その夜会にも来るかもしれん」
「騒ぎはだめですよ」
「もちろんだ。あの女の顔も拝んでやる。あとは父から聞いてくれ」
それだけ行って兄は退出いたしました。
「兄上は何かおっしゃってましたか?」
「うむ。面談は無視され、第七騎士団は最外周の偵察任務へ配置換えだそうだ」
「偵察――ですか。移動の書類は見ましたが……」
「閑職だな。後任は新設の第十一騎士団とやらだ。全て西側の騎士で固めるそうだ」
古参の第七騎士団が外されるなど異例です。王都の全ての騎士様たちが憤るような話です。この配置換えに、そこまでする意味があるのでしょうか?
「私の息のかかった商会も締め付けをうけているよ。領地の作物が今までのように捌けないのだ。今は販路を東に調整中だな」
「わっ、私のせいでしょうか……?」
「破棄書類返信の催促はない。まだ、お前のせいなどではないな。気にするな」
「でも……」
「西側の物資が流れ込んで来ておる。もはや我がバシュラール家だけの問題ではないのかもしれんな」
「……」
◆
翌日。表面上は変わらない日が続いていました。
「あれ? きょうはずいぶん書類が少ないのねえ……」
「たまには、楽できる日があるのよ」
政務庁の一室でリュシーとマリエル、そして私はそんな話をしながら書類を眺めています。この少なさとかたよりは気になりますが……。
「ところで最近の社交界はどうなのかしら?」
婚約してから私は出席を控えておりました。基本、あそこは出会いの場であるからです。代わりに婚約者として,慈善事業などへのパーティー参加が多いのもありますが。
アルフォンス様はお付き合いもあり、時々は夜会に一人で参加しておりました。
「昔と変わらない――、でもないかしらねえ。どうして?」
「知り合いの参加者に頼まれて、ちょっとお手伝いするのよ。最近の流行とか知りたいの」
「ディアーヌは偉いわー」
マリエルは感心してくれました。彼女は学術女子なので、基本夜会などに興味はないのですが、貴族としての心得はあります。
リュシーは最初の問いにどう答えようか考えてくれています。
「変わっているのね」
「ほら、あの令嬢の影響よ。ドレスも西方モードとかで一部の商会が直営の店で扱っているのよ~」
「商売ですからね」
またあの女性の影です。私はたいして気にしていないふうに、サラリとながしました。リュシーは家が商会経営なので、そちらにも敏感なのです。
「そのうち、家の商会でも扱うって言うかなあ……。ただの流行なのにね」
「やっぱり古典基本が一番よ。商売としては硬いわ」
「私も賛成です」
二人の意見に私は同意しました。
マルゲリット様は背も高いですし、兄は騎士の正装でしょう。そこからどのようなドレスが最適かを考えます。あの人には貴賓と誠実さがある古典が似合うと思います。
二人をお似合いのカップルにしてみせますわ。
「ディアーヌ。ちょっと頼みがあるのだが……」
「はい、お兄様。いいですよ。何でしょうか?」
「後で父上の書斎で話すよ」
食事が終わってからバラバラに、その書斎に集まります。毎夜毎晩家族会議では、屋敷の使用人たちにも何事かと心配させてしまうので。
「お待たせいたしました」
「おうっ。さっきの話だけどな。マルゲリットが社交界に行かねばならんのだが、騎士団では勝手がわからん。相談に乗ってやってくれるか?」
兄は父との話を中断して私に向き直りました。
「お安い御用ですよ。お兄様」
「俺も同行する。ヴィクトルめ。俺の面談申請を無視していやがるからな。その夜会にも来るかもしれん」
「騒ぎはだめですよ」
「もちろんだ。あの女の顔も拝んでやる。あとは父から聞いてくれ」
それだけ行って兄は退出いたしました。
「兄上は何かおっしゃってましたか?」
「うむ。面談は無視され、第七騎士団は最外周の偵察任務へ配置換えだそうだ」
「偵察――ですか。移動の書類は見ましたが……」
「閑職だな。後任は新設の第十一騎士団とやらだ。全て西側の騎士で固めるそうだ」
古参の第七騎士団が外されるなど異例です。王都の全ての騎士様たちが憤るような話です。この配置換えに、そこまでする意味があるのでしょうか?
「私の息のかかった商会も締め付けをうけているよ。領地の作物が今までのように捌けないのだ。今は販路を東に調整中だな」
「わっ、私のせいでしょうか……?」
「破棄書類返信の催促はない。まだ、お前のせいなどではないな。気にするな」
「でも……」
「西側の物資が流れ込んで来ておる。もはや我がバシュラール家だけの問題ではないのかもしれんな」
「……」
◆
翌日。表面上は変わらない日が続いていました。
「あれ? きょうはずいぶん書類が少ないのねえ……」
「たまには、楽できる日があるのよ」
政務庁の一室でリュシーとマリエル、そして私はそんな話をしながら書類を眺めています。この少なさとかたよりは気になりますが……。
「ところで最近の社交界はどうなのかしら?」
婚約してから私は出席を控えておりました。基本、あそこは出会いの場であるからです。代わりに婚約者として,慈善事業などへのパーティー参加が多いのもありますが。
アルフォンス様はお付き合いもあり、時々は夜会に一人で参加しておりました。
「昔と変わらない――、でもないかしらねえ。どうして?」
「知り合いの参加者に頼まれて、ちょっとお手伝いするのよ。最近の流行とか知りたいの」
「ディアーヌは偉いわー」
マリエルは感心してくれました。彼女は学術女子なので、基本夜会などに興味はないのですが、貴族としての心得はあります。
リュシーは最初の問いにどう答えようか考えてくれています。
「変わっているのね」
「ほら、あの令嬢の影響よ。ドレスも西方モードとかで一部の商会が直営の店で扱っているのよ~」
「商売ですからね」
またあの女性の影です。私はたいして気にしていないふうに、サラリとながしました。リュシーは家が商会経営なので、そちらにも敏感なのです。
「そのうち、家の商会でも扱うって言うかなあ……。ただの流行なのにね」
「やっぱり古典基本が一番よ。商売としては硬いわ」
「私も賛成です」
二人の意見に私は同意しました。
マルゲリット様は背も高いですし、兄は騎士の正装でしょう。そこからどのようなドレスが最適かを考えます。あの人には貴賓と誠実さがある古典が似合うと思います。
二人をお似合いのカップルにしてみせますわ。
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