27 / 33
27「再びの出発」
しおりを挟む
翌日の早朝に私たちはタンプルを出発したしました。昨夜の冒険のおかげで、道行きがちょっと心配です。
シルヴにつられて私も大きなあくびをしてしまいました。冒険者とはなんと自由なのでしょうか。
でもラシェルに睨まれてしまいました。令嬢に戻った時にこれをやってしまわないか、こちらもちょっと心配ですね。
馬車は街を出て朝靄の間道を進みます。やはここは話していた方がよいでしょう。
「ねえ、ジョルジュ。これからの予定はどうなの?」
「この道の途中のキャンプ地で一泊して、翌日には街道に合流する。それからアングレットまで四日っとこかなあ……」
「実は昨日、ちょっとしたトラブルに巻き込まれたのよ。追っ手が来るかもしれないわ」
暴漢たちとのトラブルより、私はあの屋敷への侵入の方が心配でした。それなりの魔力を持つ者なら、侵入者の痕跡に気が付きます。街にやって来た強力な冒険者二人組と結びつければ――。
「ならキャンプ地はやり過ごして先に進もうか。途中で森に入って野営しよう。寝込みを襲われる心配もない」
「悪いわね」
「いいや。野宿は冒険者の基本さ。シルヴは荷台に移って後方確認だ。単独では動かないよに」
「――として下さい」
「了解です。リーダー」
シルヴはすかさず後ろに移動いたします。またラシェルに睨まれてしまいました。
「何があったのですか?」
「悪いひとたちにからまれて、シルヴが助けてくれたのよ」
「それは仕方ないですね」
ちょっと説明を簡略化させて頂きました。
幸い追跡者は現われません。先客のいないキャンプ地で馬に水を飲ませて私たちも水筒に補給します。
シルヴがやって来て小声で言います。
「あいつら追って来るかな?」
「さあ? あの街は熱心に魔石を集めてオリハルコンの魔導武器でも作っているのかしら?」
「そんなところだろう。あの探知魔導具はやっかいだな。こっちの動きが筒抜けだ」
「大丈夫よ。さっき全部潰してやったわ」
「さすが……」
シルヴは呆れたように私を見ます。私の魔力で広範囲に過負荷をかけてやりました。魔導具に照準を合せましたから、相手の【探知】には引っ掛かりません。
私たちはすぐに出発しました。
日が落ち始め、ジョルジュは馬車を停止させます。
「この辺りがいいかな。まあ、夜ならそうそう気づかれん」
そして森の中に馬車を進めます。これならば道からは見えません。
荷物を下ろして女子たちは荷台に、男性はテントを張りました。【隠密】のスキルを全体に張り、警戒の【探知】も仕掛けます。
昨夜は寝不足だったので、こんな状況でも熟睡してしまう私でした。
翌日はまだ暗いうちに出発、昼前には街道に合流いたしました。
「ここまで来れば大丈夫。まあ、のんびり行こうか」
少しして、他の輸送隊列の後方に追いつき、速度を合せて進みます。
◆
それからはトラブルもなく平和な旅が続きました。途中の停留地に二泊して、いよいよ第一王都アングレットの街壁が見えてきます。
「シルヴ。追加報酬を渡すから、護衛を続けてくれない?」
「報酬はいらないさ。興味で引き受けさせてもらうよ」
操者席のシルヴが、首を捻って応えました。馬車は街壁門を前にして道を逸れます。
「貴族門は通れる?」
「そっちの方が助かるよ」
騎士が立つ門の前で、私は胸に下げていたオリハルコンの小さなプレートを出します。シルヴもそうしました。ジョルジュたち二人は許可証を提示します。
「明日の朝に、バシュラール家の屋敷に来てくれる?」
「了解した」
「ジョルジュとラシェルはせっかくだし街の観光をしてね」
「お嬢様!」
「アジャクシオでの噂を集めて欲しいのよ。ここの人たちにどう思われているか」
「いいじゃないか。シルヴ様の護衛ならば安心だよ」
ラシェルはメイド義務感から私への同行を希望しますが、私は二人にこの街を楽しんで欲しいのです。
「分かりました」
広い道にしゃれたお店が並びます。貴族用の商店街を抜けると、大きな屋敷が並ぶ区画となりました。
「ディアーヌ、ジョルジュさん、ラシェルさん。楽しい旅でした。また後で」
そう言ってシルヴは飛び降りました。振り返ると手を振ってから、自分屋敷へと向かいます。ここより上位の爵位の地域へです。
「驚いた。本当に貴族だったのね」
「ああ。将来有望な騎士様だ。あいつに任せておけば安心さ」
ここで冒険者パーティーは一時解散となりました。
これからは貴族の戦いが始まります。
シルヴにつられて私も大きなあくびをしてしまいました。冒険者とはなんと自由なのでしょうか。
でもラシェルに睨まれてしまいました。令嬢に戻った時にこれをやってしまわないか、こちらもちょっと心配ですね。
馬車は街を出て朝靄の間道を進みます。やはここは話していた方がよいでしょう。
「ねえ、ジョルジュ。これからの予定はどうなの?」
「この道の途中のキャンプ地で一泊して、翌日には街道に合流する。それからアングレットまで四日っとこかなあ……」
「実は昨日、ちょっとしたトラブルに巻き込まれたのよ。追っ手が来るかもしれないわ」
暴漢たちとのトラブルより、私はあの屋敷への侵入の方が心配でした。それなりの魔力を持つ者なら、侵入者の痕跡に気が付きます。街にやって来た強力な冒険者二人組と結びつければ――。
「ならキャンプ地はやり過ごして先に進もうか。途中で森に入って野営しよう。寝込みを襲われる心配もない」
「悪いわね」
「いいや。野宿は冒険者の基本さ。シルヴは荷台に移って後方確認だ。単独では動かないよに」
「――として下さい」
「了解です。リーダー」
シルヴはすかさず後ろに移動いたします。またラシェルに睨まれてしまいました。
「何があったのですか?」
「悪いひとたちにからまれて、シルヴが助けてくれたのよ」
「それは仕方ないですね」
ちょっと説明を簡略化させて頂きました。
幸い追跡者は現われません。先客のいないキャンプ地で馬に水を飲ませて私たちも水筒に補給します。
シルヴがやって来て小声で言います。
「あいつら追って来るかな?」
「さあ? あの街は熱心に魔石を集めてオリハルコンの魔導武器でも作っているのかしら?」
「そんなところだろう。あの探知魔導具はやっかいだな。こっちの動きが筒抜けだ」
「大丈夫よ。さっき全部潰してやったわ」
「さすが……」
シルヴは呆れたように私を見ます。私の魔力で広範囲に過負荷をかけてやりました。魔導具に照準を合せましたから、相手の【探知】には引っ掛かりません。
私たちはすぐに出発しました。
日が落ち始め、ジョルジュは馬車を停止させます。
「この辺りがいいかな。まあ、夜ならそうそう気づかれん」
そして森の中に馬車を進めます。これならば道からは見えません。
荷物を下ろして女子たちは荷台に、男性はテントを張りました。【隠密】のスキルを全体に張り、警戒の【探知】も仕掛けます。
昨夜は寝不足だったので、こんな状況でも熟睡してしまう私でした。
翌日はまだ暗いうちに出発、昼前には街道に合流いたしました。
「ここまで来れば大丈夫。まあ、のんびり行こうか」
少しして、他の輸送隊列の後方に追いつき、速度を合せて進みます。
◆
それからはトラブルもなく平和な旅が続きました。途中の停留地に二泊して、いよいよ第一王都アングレットの街壁が見えてきます。
「シルヴ。追加報酬を渡すから、護衛を続けてくれない?」
「報酬はいらないさ。興味で引き受けさせてもらうよ」
操者席のシルヴが、首を捻って応えました。馬車は街壁門を前にして道を逸れます。
「貴族門は通れる?」
「そっちの方が助かるよ」
騎士が立つ門の前で、私は胸に下げていたオリハルコンの小さなプレートを出します。シルヴもそうしました。ジョルジュたち二人は許可証を提示します。
「明日の朝に、バシュラール家の屋敷に来てくれる?」
「了解した」
「ジョルジュとラシェルはせっかくだし街の観光をしてね」
「お嬢様!」
「アジャクシオでの噂を集めて欲しいのよ。ここの人たちにどう思われているか」
「いいじゃないか。シルヴ様の護衛ならば安心だよ」
ラシェルはメイド義務感から私への同行を希望しますが、私は二人にこの街を楽しんで欲しいのです。
「分かりました」
広い道にしゃれたお店が並びます。貴族用の商店街を抜けると、大きな屋敷が並ぶ区画となりました。
「ディアーヌ、ジョルジュさん、ラシェルさん。楽しい旅でした。また後で」
そう言ってシルヴは飛び降りました。振り返ると手を振ってから、自分屋敷へと向かいます。ここより上位の爵位の地域へです。
「驚いた。本当に貴族だったのね」
「ああ。将来有望な騎士様だ。あいつに任せておけば安心さ」
ここで冒険者パーティーは一時解散となりました。
これからは貴族の戦いが始まります。
15
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
婚約破棄されたので契約を終了しただけですが? ~王国が崩壊したのは私のせいではありません~
しおしお
恋愛
王立学園の卒業舞踏会。
王太子レオナードは突然、婚約者である公爵令嬢アデリーナとの婚約破棄を宣言する。
隣に立つのは、涙を流す義妹ミレイナ。
「お姉様に虐げられてきました」と訴える彼女の言葉を、貴族たちは信じてしまう。
悪女として断罪され、追放を宣告されるアデリーナ。
だが彼女は怒りも悲しみも見せず、ただ静かに微笑んだ。
「承知いたしました。では――契約を終了いたします」
その一言が、すべての始まりだった。
公爵家による融資、貿易、軍需支援。
王国を支えていたすべてが、静かに停止する。
財務は崩壊し、軍は止まり、商人は離反。
王都は混乱に包まれていく。
やがて明らかになる義妹の嘘。
そして王太子の責任。
すべてが暴かれたとき、二人を待っていたのは――
完全な破滅だった。
一方アデリーナは、隣国で静かな紅茶の時間を過ごしていた。
これは、
婚約破棄された公爵令嬢が“何もしなかった”ことで始まる、
王国崩壊と地獄のざまぁの物語。
――その報告書を、彼女が読むことは一度もなかった。
私を婚約破棄した国王が処刑されたら、新しい国王の妃になれですって? 喜んで…と言うとでも?
あんど もあ
ファンタジー
幼い頃から王子の婚約者だったアイリスは、他の女性を好きになった王子によって冤罪をかけられて、田舎で平民として生きる事に。
面倒な貴族社会から解放されて、田舎暮らしを満喫しているアイリス。
一方、貴族たちの信頼を失った王子は、国王に即位すると隣国に戦争を仕掛けて敗北。処刑される。
隣国は、アイリスを新しい国王の妃にと言い出すが、それには思惑があって…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる