氷炎の皇剣伝(ブレイド・ストーリー)

Orca Masa

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第2章 《煌帝剣戟》煌華学園予選 編

第5話 刹那と逆手

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――煌華学園 第2アリーナ――


 いきなりこの人かよ!
 俺は入場門からフィールドに入ってきたその男子生徒に、目がくぎ付けになった。

「いきなり校内ランキング1位、アッシュさんの登場と来たか。」

「リョーヤ、目が血走ってる……。」

「だって興奮するだろ!?」

『それでは両選手、《創現武装》を召喚してください。』

 キム 選手が召喚したのはリンシンと同じ柳葉刀だ。対してアッシュさんが召喚したのは―――

「あれは……槍か?」

 青い槍だ。何の装飾もされていない、ごく普通の槍だ。

『それでは第1ブロック第2試合

 試合開始!』

 ブザーが鳴った。

「アッシュ、先手は取らせてもらうぜ!」

 金選手はそう言うと雷を全身にまとった。どうやら彼は雷を操れるらしい。

「いくぜぇ!」

「まだキミには負けないよ。」

 金選手は雷をまとったまま、文字通り光速・・でアッシュさんを斬りにかかった。がアッシュさんは避ける素振りを全く見せない。それどころか瞑想しているようにも見える。

 そして……金選手がアッシュさんとすれ違った。あまりにも速くて、何が起きたか分からなかったが―――

「嘘……だろ……。」

 金選手が信じられないという顔で膝から崩れ落ちた。つまりこの試合は―――

『し、試合終了!

 勝者、《深海の竜レヴィアタン》ことアッシュ・ストラード選手だー!』

『僕の解説の出番が無かったですね。』

『おっと、ここで横からのスロー映像をご覧下さい。』

 モニターにはすれ違う直前の2人の映像が映し出される。

 光速で動く金選手は、やはりカメラにも残像しか映ってなかった。が、アッシュさんの動きは確実に捉えていた。

 すれ違う刹那、アッシュさんは1歩横にずれ、槍の刃が金選手とアッシュさんを挟んで反対側に来るように水平に持った。すれ違った金選手は、自身の莫大な運動エネルギーを、槍の柄を通じて腹部に受けて倒れる。

 たったこれだけだった。たった2つの行動でアッシュさんは、光速で動く相手に勝利したのだ。

「え、どういうこと? 何が起こったの?」

 ユリがわけわからないと言わんばかりに頭を抱える。

「槍の柄を使って、相手の腹に打撃を加えたんだ。

 ただの人間にはできない芸当だよ。」

 いや、並の《超越者エクシード》とてできる人はほぼいないだろう。
 アッシュさんの一連の行動は飛んでくる光が網膜に刺激を与える前に、つまり知覚する前に反応するのと同じだ。

「俺はあの人を超えられるのか……?」

 急に不安になってきた。が、そんな不安を抱かせる時間を神様はくれなかった。

 アッシュさんが槍を倉庫に転送し、まるで何事も無かったかのようにさっさと退場すると、次の試合のアナウンスが入った。

『さ、さて。続いて第2ブロックの試合に移ります!

 第1試合のカードはこの2人だ!』

 向かい合った入場門がゆっくりと開く。いよいよリンシンの出番だ。

『1年武術A組、ハク 林杏リンシン選手と
 2年武術B組、ヴィクトリア・スミス選手だー!』

「リンシン! がんばれー!」
「やっちまえ、ヴィクトリア!」
「格下に負けるなよリンシン!」

 いざ試合が始まろうとした時、生徒呼び出しのアナウンスがされた。

『えーっと、ここで次の試合の生徒の招集漏れがあるそうなので呼び出しをします。

 1年武術A組の城崎百合選手、1年武術A組の城崎百合選手。
 至急、招集所にお越しください。

 繰り返します―――』

「は!? 次がユリ!?」

「どういうことなんだい?」

「わ、私にも分からないよ!」

 ユリは生徒手帳を出してトーナメント表を確認する。

「あ……ごめんなさい。私が見てたのは城崎百合さんだった……。」

「「はぁーーー!?」」

 俺もユリの組み合わせを確認すると、ユリの名はリンシンの隣に書いてあった。そしてユリの言っていたイザベル・ハルフォードの対戦相手は、紛らわしいことに城崎百合だった。

「もう、嘘でしょ!?」

「トーナメント表見てたのに気づかなかった俺たちも悪いから自分を責めるな?

 今はとにかく招集所へ。」

「……うん。分かった。」

 ユリは目に涙を浮かべて観客席を後にした。
 このことはリンシンの精神にも影響が出るはずだ。なぜなら、ここで勝てば次の対戦相手がユリになる可能性が高いからだ。

「動揺しすぎるなよ……。」

 そして―――

『お待たせしました。

 それでは第2ブロック第1試合

 試合開始!』

 ブザーの音が響くと同時にリンシンが先制攻撃を仕掛けてきた。

『おおっと! 白選手が仕掛けてきたー!

 開幕速攻だー!』

 近づきながらリンシンは風牙フォンヤーを投げつけた。さすがにこれにはヴィクトリア選手も反応できたようだ。

『ヴィクトリア選手、フィールドの床から土壁を出現させて風牙を跳ね返す!
 切れ味抜群の風牙の刃も、これではヴィクトリア選手まで届かないかー!?』

 リンシンは跳ね返ってきた風牙を掴むと、壁の側面に回った。あの位置ならヴィクトリア選手の姿も丸見えだろう。

「まだまだ分けるわけにはいきませんわ!」

 ヴィクトリア選手はそう言うと剣を振り上げ、リンシンの足元の地面を勢いよくせり上げた。リンシンはバランスを崩し、思わず手をつく。

『ここでヴィクトリア選手が反撃に出たー!』

『地面をせり上げることで白選手のバランスを崩す、地を操る能力ならではの戦法ですね。

 ここから白選手どう反撃に出るか。』

 ヴィクトリア選手がバランスを崩したリンシンにトドメを刺そうと剣を振りあげる。

 しかし、リンシンはついた手を軸に体を回転させ、逆にヴィクトリア選手の足を払うことでこれを防いだ。

「よし! 今のはいいぞ!」

 以前のリンシンなら風牙で防ごうとしただろう。ただ相手がそれを予測している可能性が高い場合、それを逆手に取られる可能性もある。

 それならいっそのこと空いている手を使って攻撃に出てしまえばいい。完全に防御される予測をしてた敵なら、攻撃に出た時に致命的な隙が生まれる。そこが勝機だ。

 特訓の成果がちゃんと出ているんだな。俺はそう思うととても嬉しかった。

『なんと白選手! まるで体操選手のような身のこなしで形勢逆転したー!』

 倒れたヴィクトリア選手にリンシンが風牙を突きつける。完全にチェック・メイトだ。

「はぁ、負けちゃったか。」

 そう言うとヴィクトリア選手は両手を上げ、降参した。

『試合終了!

 勝者、白林杏選手! 能力をほぼ使わずに体術で華麗な勝利を収めた!』

 観客席から盛大な拍手が送られた。俺たちも席から立ち上がって、フィールドに拍手を送る。

「お疲れリンシン!」

「あの勝利は僕も感動したよ! お疲れ!」

「感動って、大げさな。」

 俺はそう言いながら次の試合のことを考えていた。

『15分の休憩の後、第2ブロック第2試合を開始します!』
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