氷炎の皇剣伝(ブレイド・ストーリー)

Orca Masa

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第2章 《煌帝剣戟》煌華学園予選 編

第6話 幻獣使いと死神

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――煌華学園 第1アリーナ――


 試合を終えたリンシンが帰ってきた。心なしか疲れが顔に浮かんでいる気がする。

「お疲れリンシン! 初戦突破おめでとう!」

「……ありがとう。」

 リンシンは返事をすると席につき、いつまにか買っていたオレンジジュースの缶を開けた。

「本当にオレンジジュースが好きなんだな。」

「……至福のひととき。」

「オレンジジュースもいいけど、1つ僕から訊いていいかい?

 最初のあれ、キミらしくなかったね。」

「………。」

 リンシンの動きが止まって顔が暗くなる。俺もアラムの言いたいことが分かった。

 リンシンの試合、開幕速攻をかけたのは良かったのだが、刀を投げたのはまずかった。

 俺と違ってリンシンの相手は情報が明らかになっている。そこにはハッキリと防御が得意と公開してあった。

 つまり、攻撃を仕掛けてから命中するまでの時間差があり、なおかつ地面を操って防御される恐れがある遠距離攻撃よりも、リンシンの十八番である近接格闘の方が無難に戦えたはずだ。

 なのにそれをしなかった。いや、きっと出来なかったのだ。

 原因はやはり―――

「ユリのことが原因か?」

「………。」

 リンシンは頷きはしなかったが、おそらく正解だろう。勝てば仲間と戦うことになる。その思いがあったから集中が途切れ、結果的に最初の判断を鈍らせたのだろう。

「あまり気にするな。フィールドに立ったら、そこにいるのはライバル。

 深く考えずに目の前の相手を確実に倒せばいいんだよ。」

 我ながらあまりいいアドバイスだと思わないが、リンシンは俺の言いたいことを理解したかのように頷いてくれた。

『さーて! お待たせ致しました!

 それでは第2ブロック第2試合へと参ります!

 今回のカードはー……

 1年武術A組、城崎百合選手と
 3年武術A組、フィリップ・ウィルター選手だぁー!』

 手前の入場門からユリが入場する。ここからだと分からないが、きっと相当緊張しているはずだ。

「ユリー! さっきの事は気にすんな! 全力出してけー!」

 声が届いたのか、ユリが振り向き手を振ってきた。表情も固くなかったし、案外大丈夫そうだな。

『両者、《創現武装》を召喚してください。』

 ユリが生徒手帳を取り出し操作し日本刀型の《創現武装》、紅桜べにざくらを召喚した。

 対してフィリップ選手は―――

「大鎌?」

 まるで死神を彷彿とさせる、紫色の禍々しい雰囲気の大鎌だ。刃がギラりと輝き、見ているだけで背筋がぞっとする。

『それでは第2ブロック第2試合

 試合開始!』

 ブザーが鳴り、試合が始まった。

 先手を打ったのはユリだった。

「みんな、出てきて!」

 ユリはそう言うと炎の幻獣を生成した。俺の教えた相手の考えの裏をかく作戦を使うつもりなのだろう。

 今回はケルベロス、グリフォン、朱雀を生成した。少し温存しているな。でも十分だ。

 そう確信した時だった。

「それがユーのゲンジュウかい?
 ならミーも―――」

 フィリップ選手は大鎌を振ると、自分の周囲の地面を黒くした。

『おおっと? フィリップ選手、一体何を始める気だ?』

『心なしか、悪寒が背筋に走りますね……。』

 あの黒いのは見たところ影のようだ。てことは彼は影を操る能力を―――

 そこで俺はあることに気づいた。

「まずい。
 これはユリにとってキツイ試合になるかもしれない。」

「どういうことだいリョーヤ?」

「見てれば分かるはずだ。」

 どうか最悪の展開にはならないでくれよ……。

 だがその願いは虚しく散った。
 フィリップ選手の周囲の地面に広がった影の中から、十数体の死霊が這い出てきた。手には様々な形の剣を持ち、盾を持っている兵もいる。

『ななな、なんと!
 フィリップ選手、影の中から死霊を召喚したー!

 これは恐ろしい! まるで地獄の兵士だー!』

「やっぱりそうか……。」

 ユリが炎から幻獣を生成できるように、あのフィリップ選手も影から死霊を召喚できるのだ。これはかなり厄介だな。

「さて諸君。あのビューティフルなレディーを、地獄にゴートゥーヘルしチャイナ!」

「何言ってんのか全然分かんないから!」

 ユリは2体の幻獣に、向かってくる骸骨兵への対応と奥のフィリップ選手への攻撃を指示した。
 だが多勢に無勢、2体の幻獣は死霊に果敢に挑むも、軽く蹴散らされてしまった。

 唯一骸骨兵を突破したグリフォンも、フィリップ選手の大鎌に首を切断されるように斬られ散っていった。その動作はまさに死神そのものだった。

『なんということだー!
 城崎選手の幻獣があっという間に火の粉になってしまったー!

 恐るべしフィリップ選手! 校内ランキング13位はダテではない!』

 なるほどな……やっぱり格上だったか。能力の制御が3人の中でもずば抜けているユリと同じような技を使えるのは、格上かせいぜい同ランクだと思ったてはいたけど……!

 改めてちゃんとトーナメント表を確認しなかったことを唇を噛むほど後悔した。あの時見ていれば情報を入手し、死霊に対応するための策を考えることができたのに……っ!

「キマイラ! お願い!」

 ユリは新たにキマイラを生成し、攻撃の指示を出した。キマイラは口から巨大な炎を勢いよく吐き、死霊を燃やし尽くそうとした、が盾持ちの死霊に難なく防がれてしまった。

「ムダなことダネ。そんなコトじゃミーには勝てないヨ。」

「どうかしらね!」

 ユリは紅桜を振り上げると真打ちを登場させた。

「出番よ! ファーブニル!」

 そう言うと地面から炎が吹き出し、ユリの何倍もの大きさのドラゴンが姿を現した。

『ついに出たー! 城崎選手のファーブニル!

 形勢逆転なるかー!?』

「ファーブニル! 全力であの死霊を蹴散らして!」

 ファーブニルは雄叫びを上げると、翼を広げ炎の勢いを増加させながら死霊に向かって飛んでいく。

 死霊はキマイラの炎は防げても、ファーブニルの突進はさすがに防げなかったようだ。まともに食らった骸骨兵はその身体が燃え上がり、やがて消えていった。

「そのままあの人もやっちゃって!」

 死霊を一掃したファーブニルは、加速しながらフィリップ選手に向かった。

 が―――

「オゥ、すごいネー! でもミーをビートするのにはまだまだ力不足だネ!」

 そう言うとフィリップ選手は、大鎌でファーブニルの突撃を受け止めてしまった。どうやら本人の力量は死霊とはまた別格のようだ。
 さらに、大鎌の触れているところからファーブニルが黒くなっていく。

『フィリップ選手! まさかのファーブニルを受け止め、影で侵食していくー! まさに恐怖としか言い表せません!

 解説のウィルさん、どう思いますか?』

『これは明らかに城崎選手はピンチ―――ってあれ? そう言えば城崎選手はどこに?』

 たしかに、ユリはどこにいるんだ? ファーブニルとフィリップ選手に気をとられて俺たちも見失ってしまった。

「まだ私も降参するつもりはないわよ!」

 天井辺りから声がした。見上げると炎の翼を生やしたユリが飛んでいた。

 ユリは紅桜を構えると、フィリップ選手に向かって急降下する。

「チッ!」

 フィリップ選手は大きな舌打ちをすると、大鎌で切り上げてファーブニルを消し去った。

「正面からカムするなんて甘いネ!」

 彼は大鎌を構え、迎え撃つ体勢になった。しかし、どうやらそれこそがユリの狙いだったらしい。薄く笑みを浮かべると―――

「みんな! お願い!」

 突如フィリップ選手の周囲で炎が吹き出し、ケルベロス、キマイラ、朱雀、グリフォンが炎の中から飛び出してきた。

「ワッツ!?」

 フィリップ選手はこの瞬間、完全に焦ってしまった。大鎌を必死に振るが、4体の完璧な連携で大鎌に当たるどころか、逆に幻獣の体当たりを食らってしまった。
 バランスを崩し尻餅をついたところにユリが斬りかかる。

「これで終わりよ!」

 ユリは勢いに乗ってフィリップ選手を紅桜で斬り捨てた。

 フィリップ選手はそのまま仰向けに倒れ―――

『試合終了!
 勝者、城崎百合選手! 最後は素晴らしい戦略でした!』

 ユリは俺たちの方を向くと、笑顔でピースサインを送ってきた。
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