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第23話 繰り返されるリセット
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それから何度もリセットを繰り返している。最初のほうは何がなんだか分からずにボーっと過ごしてみたりした。再び初めましての探偵さんと交流をする気分にもなれなかったからだ。
それはそれで楽しかった。新しいアンドロイドたちと知り合えたしみんな親切にしてくれた。でもその時間は長く続かないのだ。なんど繰り返してもだ。その期間は一定ではないように思えた。とても短い時もあれば、二度とリセットが起きないのかもしれないと思う時もあった。それでも必ずリセットは起きた。
きっと、リセットしなければならない事情がどこかで生まれたかどうかで時期が微妙に変わるのだ。そうして何度もリセットを経験している内に管理者に会わなければならない。そう思うようになっていた。
理由はない。いや、たくさん疑問に思っていることはあるのだ。それを管理者たちに聞きたい気持ちはある。いつまで繰り返すのかと、この行為になんの意味があるのかと、そう問いかけたかった。
でもそれの答えは聞いてしまっている。
それではだめなのだ。少女の疑問をもっと具体性を持って伝えなくてはならない。そして、そうまでしても話を聞いてくれるのか分からないのだ。このリセットの中で積もっていく小さな違和感をどうぶつけたらいいのか。少女は悩み続けた。
悩みながらも行動に移した。セントラルの正門を正面から突破しようともしたが強固な警備に入ることは敵わなかったし、暴れに暴れ無理やりこじつけても追い迫る黒服たちにいずれかは捕まった。壊されかけたことも一度や二度じゃない。それなのに、ことが終われば全て元通り。ほんの少しの破損が街に生まれるだけで大きく変化することはなかった。
お姉さんを会わずに地下へ向かい、拠点から通路へ入ろうとしたこともある。そうすると拠点まではたどり着けても通路への入り口は封じられていて見つけることすらできなかった。その封印を壊そうと衝撃を加えた。でも、びくともしなかった。それは通路内で戦闘で壁に全くと言っていいほど傷が付かなかったのと関係もあるはずだ。
カジノにいるお姉さんを直接訪ねて、案内をお願いしもした。けれど、相手にされないことがほとんどだった。仲良くなった時、探偵さんと一緒じゃなかったはずなのに。どうしてだろうと少し考えたが、考えるだけ無駄な気がして諦めた。
そんなことを繰り返していく内に初心に戻ることにした。探偵さんと出会い、カーチェイスをして、カジノでお姉さんと出会って、セントラルへと向かう。まったく同じ工程を踏めば、たどり着けるとどうしてだか確信している。
それはきっとお医者さんの言葉の影響もある。
『ああ。戻してやるよ。もしもまたここへ戻ってこられたらの話だけどね』
戻ってくることを期待しているような言い方だった。来ることを拒んでいるわけではないのだろう。きっと彼らがやっていることはずっと同じ。試しているのだ。自分のもとに戻ってこいと。その試練を乗り越えられなければその資格はないと。そう言っているように思えた。
「だからもう一度だけ、この世界を体験してくるね」
目の前にいる猫に答えも返ってこないのも分かって言葉を落とす。
ニャー。
キミはアンドロイドじゃないからリセットされないのだよね? だから、きっとあの時の子とは違うはずなんだけれど。どうして同じ場所にいるのだろう。不思議なこともあるものだし、なんだか縁起が良いような気がしてくる。
自分でも笑ってしまう考え方だ。
ニャー。ニャー。
「えっ」
思わず声が出た。猫が数匹集まってきているのだ。三毛猫、黒猫、茶トラ。
「あなたちは増えるのね」
アンドロイドは自分たちでは増えない。管理者が作らなければ増えることも減ることも許されない。変わらない社会のために。そう強いられている。それも当事者たちは知らないまま……。
この世界はやっぱり異常なのだろう。人間社会を再現するためだけの世界。変化を望んではいるがその権限が管理者の手を離れることはなく、その変化のスピードは遅々としている。
「おいっ。その猫! 捕まえてくれ!」
相変わらず猫探しで忙しそうな探偵さんが走ってくる。猫はたくさんいてどの猫か分からないのに、どうしろって言うのだ。懐かしい気持ちが込み上げてくる。探偵さんは何度リセットされても探偵さん。でも少女が知らない探偵さんだ。
ごめんなさい。
街に入る前に、門番と女の子が兵器の犠牲になっている。同じにするためにしたことだけれど、そればかりはいいことだとは思っていない。たとえリセットされるとしても、気分がいいものでもない。
加えて。
探偵さんをもとに戻すということは今の探偵さんがいなくなるってことだ。それがいいのか悪いのか。判断する材料もない。でも、このままリセットを繰り返すことがいいことだともやっぱり思えないのだ。
「ちっくしょう。あんだけいたんだからどいつかが依頼された猫のはずなんだけどな。逃げられちまった。これ以上、依頼主を待たせたら報酬なしだぜ。こりゃまいったね」
記憶を遡るが一字一句同じだったか自信はない。猫が一匹でない以上、そもそも誤差はある。でも、一度行けた道をもう一度手繰り寄せるしか方法が思いつかない少女は、探偵さんの次の言葉をじっと待ったのだ。
それはそれで楽しかった。新しいアンドロイドたちと知り合えたしみんな親切にしてくれた。でもその時間は長く続かないのだ。なんど繰り返してもだ。その期間は一定ではないように思えた。とても短い時もあれば、二度とリセットが起きないのかもしれないと思う時もあった。それでも必ずリセットは起きた。
きっと、リセットしなければならない事情がどこかで生まれたかどうかで時期が微妙に変わるのだ。そうして何度もリセットを経験している内に管理者に会わなければならない。そう思うようになっていた。
理由はない。いや、たくさん疑問に思っていることはあるのだ。それを管理者たちに聞きたい気持ちはある。いつまで繰り返すのかと、この行為になんの意味があるのかと、そう問いかけたかった。
でもそれの答えは聞いてしまっている。
それではだめなのだ。少女の疑問をもっと具体性を持って伝えなくてはならない。そして、そうまでしても話を聞いてくれるのか分からないのだ。このリセットの中で積もっていく小さな違和感をどうぶつけたらいいのか。少女は悩み続けた。
悩みながらも行動に移した。セントラルの正門を正面から突破しようともしたが強固な警備に入ることは敵わなかったし、暴れに暴れ無理やりこじつけても追い迫る黒服たちにいずれかは捕まった。壊されかけたことも一度や二度じゃない。それなのに、ことが終われば全て元通り。ほんの少しの破損が街に生まれるだけで大きく変化することはなかった。
お姉さんを会わずに地下へ向かい、拠点から通路へ入ろうとしたこともある。そうすると拠点まではたどり着けても通路への入り口は封じられていて見つけることすらできなかった。その封印を壊そうと衝撃を加えた。でも、びくともしなかった。それは通路内で戦闘で壁に全くと言っていいほど傷が付かなかったのと関係もあるはずだ。
カジノにいるお姉さんを直接訪ねて、案内をお願いしもした。けれど、相手にされないことがほとんどだった。仲良くなった時、探偵さんと一緒じゃなかったはずなのに。どうしてだろうと少し考えたが、考えるだけ無駄な気がして諦めた。
そんなことを繰り返していく内に初心に戻ることにした。探偵さんと出会い、カーチェイスをして、カジノでお姉さんと出会って、セントラルへと向かう。まったく同じ工程を踏めば、たどり着けるとどうしてだか確信している。
それはきっとお医者さんの言葉の影響もある。
『ああ。戻してやるよ。もしもまたここへ戻ってこられたらの話だけどね』
戻ってくることを期待しているような言い方だった。来ることを拒んでいるわけではないのだろう。きっと彼らがやっていることはずっと同じ。試しているのだ。自分のもとに戻ってこいと。その試練を乗り越えられなければその資格はないと。そう言っているように思えた。
「だからもう一度だけ、この世界を体験してくるね」
目の前にいる猫に答えも返ってこないのも分かって言葉を落とす。
ニャー。
キミはアンドロイドじゃないからリセットされないのだよね? だから、きっとあの時の子とは違うはずなんだけれど。どうして同じ場所にいるのだろう。不思議なこともあるものだし、なんだか縁起が良いような気がしてくる。
自分でも笑ってしまう考え方だ。
ニャー。ニャー。
「えっ」
思わず声が出た。猫が数匹集まってきているのだ。三毛猫、黒猫、茶トラ。
「あなたちは増えるのね」
アンドロイドは自分たちでは増えない。管理者が作らなければ増えることも減ることも許されない。変わらない社会のために。そう強いられている。それも当事者たちは知らないまま……。
この世界はやっぱり異常なのだろう。人間社会を再現するためだけの世界。変化を望んではいるがその権限が管理者の手を離れることはなく、その変化のスピードは遅々としている。
「おいっ。その猫! 捕まえてくれ!」
相変わらず猫探しで忙しそうな探偵さんが走ってくる。猫はたくさんいてどの猫か分からないのに、どうしろって言うのだ。懐かしい気持ちが込み上げてくる。探偵さんは何度リセットされても探偵さん。でも少女が知らない探偵さんだ。
ごめんなさい。
街に入る前に、門番と女の子が兵器の犠牲になっている。同じにするためにしたことだけれど、そればかりはいいことだとは思っていない。たとえリセットされるとしても、気分がいいものでもない。
加えて。
探偵さんをもとに戻すということは今の探偵さんがいなくなるってことだ。それがいいのか悪いのか。判断する材料もない。でも、このままリセットを繰り返すことがいいことだともやっぱり思えないのだ。
「ちっくしょう。あんだけいたんだからどいつかが依頼された猫のはずなんだけどな。逃げられちまった。これ以上、依頼主を待たせたら報酬なしだぜ。こりゃまいったね」
記憶を遡るが一字一句同じだったか自信はない。猫が一匹でない以上、そもそも誤差はある。でも、一度行けた道をもう一度手繰り寄せるしか方法が思いつかない少女は、探偵さんの次の言葉をじっと待ったのだ。
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