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第24話 もう一度セントラルへ
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「はぁ? なんだよここまでで良いって」
「言葉通り。ここから先はひとりで行く。お互いの依頼はここでおしまい。守ってあげたことももういいわ。ここまで連れてきてくれてありがとう」
「ちょ、ちょっとお嬢ちゃん。いきなりなに言い出してるのよ。ここから先は危ないのよ。それが分からないわけじゃないでしょう?」
探偵さんとふたり。お姉さんの拠点までようやくたどり着いて、セントラルの道が開けたのを見たときに少女はそう決めた。二度目の探偵さんとの旅路は順調だった。一度目と差異が生まれないように動き続けたのもあったのだろうし、そもそも探偵さんと言う存在がなにかの鍵なのかもしれない。だからこそ管理者たちは探偵さんも必要だと。そう言った。
でもここから先へ連れて行くことは出来ない。きっとまた何かをされるに決まっている。それは少女の本意ではない。今はセントラルにさえいければそれでいい。
「大丈夫。知ってるから」
「知ってるって。そんな……」
お姉さんは心配そうな顔をする。前回にはなかったことだ。そんなに探偵さんの実力を信頼していたのだろうか。なんだか不思議な気がする。少女がアンドロイドと知ってお願いされたものだと思っていたので余計そう思う。
やはり少女の姿をしているからなのだろうか。探偵さんみたいな大人だったら対応は違っていたのだ。きっと。でも、今はそんなことはあんまり関係ないのだ。やることは決まっているし、探偵さんたちを巻き込めない。それが、少女のことを覚えていないふたりであればよりそうなのだ。
そのことも分からなくなっているのも事実だ。ふたりは前回と同じように接してくれている。前回と違うのは自分だけ。であれば、間違っているのは自分ではないのかと思う。ふたりと同じようにリセットされ、同じように繰り返しここへきて、セントラルへと抜ける。そうして管理者たちに出会って、また元へと戻る。それを繰り返していることを知らなければそれが一番いいのではないのかとここまで来て迷ってしまう。
そうしている間に管理者たちは次の世界へと進むのだろう。そうして初めて変化が起きる。それでこの世界がよりいい方向へ進むのであれば問いかける質問もない。そのはずなのに。少女は何をしたいのだろうと、少し立ち止まってしまう。そうしていると探偵さんは何かを諦めたみたいに寂し気な表情に変わる。
「ああ。そうかよ勝手にしな。こっちも子守をしなくていいならせいぜいだ。ほら、さっさと行くがいいさ」
その言葉に返す言葉を見つけることができず少女は歩き始める。セントラルへと通じている無機質な通路へ。
「お嬢ちゃん……」
お姉さんも心配そうにしたままだけれど、止めたりはしない。
そうだ。もっとふたりと一緒にいたいのだ。でも、それはむなしい繰り返しの始まりでしかない。無くなりもしなければ進みもしない。そして少女だけに積み重なっていく記憶はきっと自らを押しつぶす日がくる。
少女は走った。後ろから引っ張り続ける重力を振り払うように。疲れも知らない身体はひたすらに走り続ける。途中でいかけた兵器も目的地が分かっている以上、倒す必要もない。兵器の横をすり抜け、一時的に動きを制限させ、先へと進む。
そうしてどれくらいの時間、走り続けたのだろうか。以前とまったく同じルートの確信はなかったけれど、行き止まりまでたどり着いた。そこには材質が違う壁がちゃんと用意されていて。しっかりと塞ぐこともできるはずなのに、作為的なそれはやはりちゃんとお医者さんが待ち構えている証拠のように思えた。
しかし、それゆえに少しだけ油断した。
ガシャン。
兵器はいつの間にか少女の背後に忍び寄ってきていた。そのうるさいはずの駆動音を消せるなんて思いもしなかった。少女が気が付いた時にはすぐ後ろ。しかも重火器を使わずに直接その鋭い足で貫こうとしているのが見て取れる。まさか至近距離での攻撃を狙うなんて想像もなくてなんとかその一撃を避けるものの地面へと転がる。
「ちぃっ! 嬢ちゃん、そのまま伏せてろ!」
どうしてだ。いるはずのない探偵さんが確かに走っている。その手には何やら持っている。それは少女の記憶では爆弾。まさか。そう思う前に探偵さんは兵器へと突っ込んだ。
爆発音と衝撃が同時にやってくる距離。とてもじゃないが少女だって無事ではいられない。それが探偵さんならなおさら。機械の身体を覆っていた肌は焼け落ちて、アンドロイドの姿が半分以上露出した探偵さんが転がる。それは兵器も同様だ。
「どうして。なんで私は間違えるの?」
探偵さんを遠ざけて、危険な目に合わせないようにしたのに。引き離すように走ってきたのに。ここに探偵さんはいて、少女を身を挺して守ろうとする。前回のことを覚えていない探偵さんだけれど。根本は変わらないと。世界がそう言っているように思えた。だから無駄なことをしないで、管理者たちに協力しろと。
でも。だからってこの動かなくなった探偵さんをなかったことにして次の探偵さんと同じように仲良くするなんて。そんなことをしている自分は想像もできなかった。
ふと。爆発の影響で壁が壊れて穴があいていることに気が付いた。あれだけ、衝撃を与えても少しの傷しか与えられなかった壁がだ。それくらいの爆発だったとは思えない。そうであれば少女も無事では済まなかったはずだ。
その穴を覗き込んだ時、理解した。その先にも通路が伸びていた。
「言葉通り。ここから先はひとりで行く。お互いの依頼はここでおしまい。守ってあげたことももういいわ。ここまで連れてきてくれてありがとう」
「ちょ、ちょっとお嬢ちゃん。いきなりなに言い出してるのよ。ここから先は危ないのよ。それが分からないわけじゃないでしょう?」
探偵さんとふたり。お姉さんの拠点までようやくたどり着いて、セントラルの道が開けたのを見たときに少女はそう決めた。二度目の探偵さんとの旅路は順調だった。一度目と差異が生まれないように動き続けたのもあったのだろうし、そもそも探偵さんと言う存在がなにかの鍵なのかもしれない。だからこそ管理者たちは探偵さんも必要だと。そう言った。
でもここから先へ連れて行くことは出来ない。きっとまた何かをされるに決まっている。それは少女の本意ではない。今はセントラルにさえいければそれでいい。
「大丈夫。知ってるから」
「知ってるって。そんな……」
お姉さんは心配そうな顔をする。前回にはなかったことだ。そんなに探偵さんの実力を信頼していたのだろうか。なんだか不思議な気がする。少女がアンドロイドと知ってお願いされたものだと思っていたので余計そう思う。
やはり少女の姿をしているからなのだろうか。探偵さんみたいな大人だったら対応は違っていたのだ。きっと。でも、今はそんなことはあんまり関係ないのだ。やることは決まっているし、探偵さんたちを巻き込めない。それが、少女のことを覚えていないふたりであればよりそうなのだ。
そのことも分からなくなっているのも事実だ。ふたりは前回と同じように接してくれている。前回と違うのは自分だけ。であれば、間違っているのは自分ではないのかと思う。ふたりと同じようにリセットされ、同じように繰り返しここへきて、セントラルへと抜ける。そうして管理者たちに出会って、また元へと戻る。それを繰り返していることを知らなければそれが一番いいのではないのかとここまで来て迷ってしまう。
そうしている間に管理者たちは次の世界へと進むのだろう。そうして初めて変化が起きる。それでこの世界がよりいい方向へ進むのであれば問いかける質問もない。そのはずなのに。少女は何をしたいのだろうと、少し立ち止まってしまう。そうしていると探偵さんは何かを諦めたみたいに寂し気な表情に変わる。
「ああ。そうかよ勝手にしな。こっちも子守をしなくていいならせいぜいだ。ほら、さっさと行くがいいさ」
その言葉に返す言葉を見つけることができず少女は歩き始める。セントラルへと通じている無機質な通路へ。
「お嬢ちゃん……」
お姉さんも心配そうにしたままだけれど、止めたりはしない。
そうだ。もっとふたりと一緒にいたいのだ。でも、それはむなしい繰り返しの始まりでしかない。無くなりもしなければ進みもしない。そして少女だけに積み重なっていく記憶はきっと自らを押しつぶす日がくる。
少女は走った。後ろから引っ張り続ける重力を振り払うように。疲れも知らない身体はひたすらに走り続ける。途中でいかけた兵器も目的地が分かっている以上、倒す必要もない。兵器の横をすり抜け、一時的に動きを制限させ、先へと進む。
そうしてどれくらいの時間、走り続けたのだろうか。以前とまったく同じルートの確信はなかったけれど、行き止まりまでたどり着いた。そこには材質が違う壁がちゃんと用意されていて。しっかりと塞ぐこともできるはずなのに、作為的なそれはやはりちゃんとお医者さんが待ち構えている証拠のように思えた。
しかし、それゆえに少しだけ油断した。
ガシャン。
兵器はいつの間にか少女の背後に忍び寄ってきていた。そのうるさいはずの駆動音を消せるなんて思いもしなかった。少女が気が付いた時にはすぐ後ろ。しかも重火器を使わずに直接その鋭い足で貫こうとしているのが見て取れる。まさか至近距離での攻撃を狙うなんて想像もなくてなんとかその一撃を避けるものの地面へと転がる。
「ちぃっ! 嬢ちゃん、そのまま伏せてろ!」
どうしてだ。いるはずのない探偵さんが確かに走っている。その手には何やら持っている。それは少女の記憶では爆弾。まさか。そう思う前に探偵さんは兵器へと突っ込んだ。
爆発音と衝撃が同時にやってくる距離。とてもじゃないが少女だって無事ではいられない。それが探偵さんならなおさら。機械の身体を覆っていた肌は焼け落ちて、アンドロイドの姿が半分以上露出した探偵さんが転がる。それは兵器も同様だ。
「どうして。なんで私は間違えるの?」
探偵さんを遠ざけて、危険な目に合わせないようにしたのに。引き離すように走ってきたのに。ここに探偵さんはいて、少女を身を挺して守ろうとする。前回のことを覚えていない探偵さんだけれど。根本は変わらないと。世界がそう言っているように思えた。だから無駄なことをしないで、管理者たちに協力しろと。
でも。だからってこの動かなくなった探偵さんをなかったことにして次の探偵さんと同じように仲良くするなんて。そんなことをしている自分は想像もできなかった。
ふと。爆発の影響で壁が壊れて穴があいていることに気が付いた。あれだけ、衝撃を与えても少しの傷しか与えられなかった壁がだ。それくらいの爆発だったとは思えない。そうであれば少女も無事では済まなかったはずだ。
その穴を覗き込んだ時、理解した。その先にも通路が伸びていた。
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