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第25話 もうひとりのお姫様
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探偵さんの身体は大きくて運ぶのを諦めようかと思ったがお医者さんならきっと治せると思い両足をもって運ぶことにした。
ズルズルと地面を引きずられる探偵さんの身体は爆発の影響でボロボロ。中身の歯車も空回りし続けている。
探偵さんをわざわざ運んでまで治す意味があるのかは分からない。どうせリセットされれば探偵さんも回収されて、またいつもの始まりを迎える。だったら置いて行ってもなにも変わらないはずなのに。運び始めてからもそう悩み続ける。
なんだかリセットを経験してから悩んでばっかりだ。
探偵さんあたりはそれはいいことだと嫌味っぽく言ってきそう。お姉さんも大人になるために必要なこと。なんて、自分たちがアンドロイドだと思いもしないでそう大人ぶるのだろう。
そんなことを考えながら進む通路はこれまでと様子が違ってただまっすぐ伸びていた。
結局、そのままセントラルへ行くことを止め、新たに現れた横道を進むことにしたのはそれがなにかに導かれている気がしたから。探偵さんを置いていかなければ現れなかったその通路は意味があるようにも思えた。それに、リセットされて同じようにその場所で爆発を起こすなて奇跡が達成できる気がしなかった。ここになにもなくても引き返せばいいだけ。
それにしてもどこへ繋がっているのだろうか。通路の雰囲気から推測することもできない。それもすぐに必要がなくなった。立派な飾りが施された扉にたどり着いたからだ。
一応ノックをする。壁が厚いのか中まで音が届いているか不安になる。実際返事もなければ勝手に扉が開いたりもしなかった。押せば開きそうな扉を試しに押してみる。抵抗はあるもののゆっくりと開いていく扉に意外だなと思いつつも遠慮なく最後まで押し開ける。
「あら。お客さんなんて珍しいのですね。申し訳ないのだけれど私はベッドから動けないの。こちらにいらしてもらえないかしら」
聞き覚えのある声。それは少女自身と同じ。つまりはお姫様とも同じ声。口調からしてもお姫様な気もするのだけれど、動けないとはなんだろうか。
部屋の中を見渡す。不思議な空間だった。正方形の広間の中心に天蓋付きのベッドが置かれている。声はそこから聞こえているようだった。そしてそのほかには物はない。置かれているベッドを敷き詰めれば二十床は用意できそうなのに。贅沢な空間の使い方だと思う。
そして扉の装飾に対して部屋の中は質素なものだ。まるでほかのものは必要がないと言わんばかりにみごとになにもない。その部屋の違和感を説明できる言葉を少女は知らなかった。
「これは入ってもいいの?」
勝手に天蓋をくぐっていいものか判断できずに一応聞いてみる。意外と答えはすぐに返ってきた。
「もちろんですよ。ここにたどり着いたものを拒むつもりはありません」
「そう。じゃあ」
探偵さんを雑にその場におろすと、天蓋をくぐってベッドのわきへと移動する。
「やっぱりお姫様。どうしたの? 動けなくなることがあったの?」
「あらあら。私はあなたと初対面だと思うのだけれど。どこかで会ったことがあるのかしら?」
「おかしなことを言う。セントラルの塔のてっぺんでお話をした。そして地下の工場を見せてくれた」
「ああ。そうなのですね。その様子だとあの子は私の代わりをちゃんと務めてくれているようです」
「どういうこと?」
「おそらくですが。あなたが会ったのは私の影武者でしょう。動けなくなってしまった私に変わって私の役割をこなしてくれているあなたの先輩です」
「うそ。お姫様にしか見えない」
アンドロイド同志、判断できるように同じ型であれば互いの識別番号を認識することでそれぞれの個体を識別している。それがお姫様と同一だと示している。
「影武者ですもの。それくらいの工作はしますよ」
「そう。動けなくなったのはなんで?」
「あんまり驚かないんですね」
「あなた達の事をいちいち驚いられない。理解できないことが多すぎる」
「ふふ。そうですね。それにしても素直な子。そんなあなただから、ここにたどり着けたのかしら」
「そんなことはどうでもいいから、質問に答えて」
「ええ。分かっています。でも、そんなに難しいことじゃないのです。ただたんに古くなって動けなくなってしまっただけ。それかけなのです」
「お医者さんに治してもらえないの?」
「ええ。こればかりはどうしようもないのです。でも、私の意志は今のお姫様であるあの子に引き継がれるので問題はないのですよ。私はその終わりをただ待っているだけなのです」
「じゃあ、あなたでもいいわ。私の質問に答えてほしいの」
「珍しいですね。ですが、もちろんいいですよ。なんですか?」
「アンドロイドは人間じゃない。それなのに人間を模倣して維持しているこの疑似社会に意味はあるの?」
寝たきりのお姫様が驚いたのがはっきりと分かった。
ズルズルと地面を引きずられる探偵さんの身体は爆発の影響でボロボロ。中身の歯車も空回りし続けている。
探偵さんをわざわざ運んでまで治す意味があるのかは分からない。どうせリセットされれば探偵さんも回収されて、またいつもの始まりを迎える。だったら置いて行ってもなにも変わらないはずなのに。運び始めてからもそう悩み続ける。
なんだかリセットを経験してから悩んでばっかりだ。
探偵さんあたりはそれはいいことだと嫌味っぽく言ってきそう。お姉さんも大人になるために必要なこと。なんて、自分たちがアンドロイドだと思いもしないでそう大人ぶるのだろう。
そんなことを考えながら進む通路はこれまでと様子が違ってただまっすぐ伸びていた。
結局、そのままセントラルへ行くことを止め、新たに現れた横道を進むことにしたのはそれがなにかに導かれている気がしたから。探偵さんを置いていかなければ現れなかったその通路は意味があるようにも思えた。それに、リセットされて同じようにその場所で爆発を起こすなて奇跡が達成できる気がしなかった。ここになにもなくても引き返せばいいだけ。
それにしてもどこへ繋がっているのだろうか。通路の雰囲気から推測することもできない。それもすぐに必要がなくなった。立派な飾りが施された扉にたどり着いたからだ。
一応ノックをする。壁が厚いのか中まで音が届いているか不安になる。実際返事もなければ勝手に扉が開いたりもしなかった。押せば開きそうな扉を試しに押してみる。抵抗はあるもののゆっくりと開いていく扉に意外だなと思いつつも遠慮なく最後まで押し開ける。
「あら。お客さんなんて珍しいのですね。申し訳ないのだけれど私はベッドから動けないの。こちらにいらしてもらえないかしら」
聞き覚えのある声。それは少女自身と同じ。つまりはお姫様とも同じ声。口調からしてもお姫様な気もするのだけれど、動けないとはなんだろうか。
部屋の中を見渡す。不思議な空間だった。正方形の広間の中心に天蓋付きのベッドが置かれている。声はそこから聞こえているようだった。そしてそのほかには物はない。置かれているベッドを敷き詰めれば二十床は用意できそうなのに。贅沢な空間の使い方だと思う。
そして扉の装飾に対して部屋の中は質素なものだ。まるでほかのものは必要がないと言わんばかりにみごとになにもない。その部屋の違和感を説明できる言葉を少女は知らなかった。
「これは入ってもいいの?」
勝手に天蓋をくぐっていいものか判断できずに一応聞いてみる。意外と答えはすぐに返ってきた。
「もちろんですよ。ここにたどり着いたものを拒むつもりはありません」
「そう。じゃあ」
探偵さんを雑にその場におろすと、天蓋をくぐってベッドのわきへと移動する。
「やっぱりお姫様。どうしたの? 動けなくなることがあったの?」
「あらあら。私はあなたと初対面だと思うのだけれど。どこかで会ったことがあるのかしら?」
「おかしなことを言う。セントラルの塔のてっぺんでお話をした。そして地下の工場を見せてくれた」
「ああ。そうなのですね。その様子だとあの子は私の代わりをちゃんと務めてくれているようです」
「どういうこと?」
「おそらくですが。あなたが会ったのは私の影武者でしょう。動けなくなってしまった私に変わって私の役割をこなしてくれているあなたの先輩です」
「うそ。お姫様にしか見えない」
アンドロイド同志、判断できるように同じ型であれば互いの識別番号を認識することでそれぞれの個体を識別している。それがお姫様と同一だと示している。
「影武者ですもの。それくらいの工作はしますよ」
「そう。動けなくなったのはなんで?」
「あんまり驚かないんですね」
「あなた達の事をいちいち驚いられない。理解できないことが多すぎる」
「ふふ。そうですね。それにしても素直な子。そんなあなただから、ここにたどり着けたのかしら」
「そんなことはどうでもいいから、質問に答えて」
「ええ。分かっています。でも、そんなに難しいことじゃないのです。ただたんに古くなって動けなくなってしまっただけ。それかけなのです」
「お医者さんに治してもらえないの?」
「ええ。こればかりはどうしようもないのです。でも、私の意志は今のお姫様であるあの子に引き継がれるので問題はないのですよ。私はその終わりをただ待っているだけなのです」
「じゃあ、あなたでもいいわ。私の質問に答えてほしいの」
「珍しいですね。ですが、もちろんいいですよ。なんですか?」
「アンドロイドは人間じゃない。それなのに人間を模倣して維持しているこの疑似社会に意味はあるの?」
寝たきりのお姫様が驚いたのがはっきりと分かった。
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