男だけど、聖女召喚された

製作する黒猫

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15 変わりたい

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 俺は最高に運がいいと、自己暗示をかけて子爵領へ向かった。まぁ、異世界に行きたいという願いもこうして叶ったわけだし・・・運はいいだろう。



 あとは、運任せだ。奇跡よ、来い!

 なーんて、思ったけどさ。



 揺れる馬車の中、俺の前にはマリアが座っている。マリアは、外を楽しそうに眺めていて、ものすごく可愛い。



「なぁ、マリア・・・俺の能力ってなんだろうな?」

「セイト君の能力ですか?能力ですか・・・能力・・・」

「いや、深い意味はなくて。ただ、ヘレーナが俺には能力があるはずって言ってたからさ。今回だってそれに期待して俺たちを送り出したんだろ?」

「あぁ、その話ですか。ヘレーナ様がセイト君に能力があると言ったのは、セイト君を召喚した時に使用した禁書がそういうものだったからです。能力の分からない今、ヘレーナ様がセイト君に求めたのは子爵領の訪問のみです。」

「そっか。そうだよな。俺にできることなんて、やっぱないよな。でも、だったらなんで俺は子爵領に行かされているんだ?行く必要なんてないよな?」

「・・・何かしらの意図はあると思いますが、聖女の活動として、送ったのではないでしょうか?聖女が来たとなれば、民の慰めにもなりますし。」

「そういうことか。」

 被災地に天皇が訪問するようなものか?俺は一応聖女・・・女ではないが!とにかく、国も力を入れていますよ、というのを民に伝えるためか?



 ま、俺は言われたことをやればいいか。俺にできることなんてないんだから。



「・・・」

「セイト君、どうかいたしましたか?」

「いや。」

 俺を心配そうに見つめるマリアから目をそらして、俺は外を眺めた。のどかな風景、この国に問題があるとは思えない。土地が枯れているなんて、窓の外からは判断できない。

 本当に、ここは異世界なんだな。電信柱もなく、道もコンクリートで整備されていない。

 移動は新幹線や電車、車ではなく馬車や馬。馬車の外で、馬に乗っているアムレットと目が合った。



 かっこいいな。

 馬になんて乗ったことがない。もちろん、馬車にも初めて乗った。そうだ、こういうのだよ。俺が異世界で経験したかったのは。

 できるかもわからない魔法の練習なんて、前の世界でだってやっていた。



 せっかく異世界に来たのに、俺はなんで前の世界と同じような生活をしているんだ?

 引きこもって、できるかもわからないことを必死に練習して。



 俺が異世界に来たかったのって、どうしてだっけ?





 ハーレムを作りたかった。強い力が欲しかった。仲間が欲しかった。胸躍るような冒険をして、仲間と絆を深めて・・・笑って、時に泣いて。一緒に感情を分かち合う仲間が欲しい。

 だって、俺はモテなくて、弱くて友達のいない、つまらない奴だから。



 学校でも塾でも、俺が求めるような友達はできなかった。普通の友達と呼べるような奴もいなかった。みんな、知り合いで終わる、クラスメイトで終わる・・・友達になれなくて、俺だけが一人で・・・



 いじめとか、別になかった。

 俺は、いじめられることもいじめることも、クラスの中心でもない。ただのモブ。いや、モブだって仲のいい友達はいるはずだ。俺は、そんなモブにも劣る、つまらない奴だった。



 一匹狼なんてものじゃない。誰とも話さないわけでも、昼食を共にする仲間がいないわけでもない。何もかも中途半端で、だから主人公になんてなれない。

 友達がいない奴なんて、珍しくない。でも、そんなこと言うやつはたいてい友達がいる。



 教室で本ばかり読んでいて、休憩中一言も話さない奴も、隣のクラスの人とは仲良く話す。いじめられている奴も、他校の奴とは仲良く話す。



 俺だって、話はする。クラスの奴でも、隣のクラスの奴でも、他校の奴らでも。バイト仲間にだって・・・でも、そういうのじゃないんだ。



 例えば、世界で2人一組を作ってくださいと言われたとする。そうすると、俺と一緒になってくれる奴はいないって話だ。俺は、誰の一番にもなれなかった。



 だから、異世界に行きたかった。俺の争奪戦が毎日行われるハーレム、チーム・・・尊敬される俺になれる異世界に。



 一番にならないと意味がないのか?と言ってくるやつがいると思う。そういうやつは、誰かの一番か諦めている奴だ。俺は違う。



 意味があるとかないとか、そういうのはいい。ただ、俺の願いなんだ。



 一番になりたい。



 俺が異世界に来たかった理由はいろいろあるが、根底にはこれがある。





 俺は、この世界に来て・・・それを活用できているか?そもそも、異世界に来たことが間違いだったのかもしれない。

 どこに行ったって、俺は変わらない。その事実にふと気づいて、胸が痛んだ。





「セイト君?」

「・・・俺、このままでいいのかな。」

「そのままだといけないのですか?」

 質問を質問で返された。確かに、これは俺が答えを出すべき問いだ。



「いけない。だって、俺は・・・変わりたかったから。変わりたくて、俺はここに来たんだ。」

「そうですか!なら、これを差し上げます。」

 マリアは懐から折りたたんだ紙を出して、それを広げて俺に渡した。

 何か書いてある。・・・読めないけど。



「これは?」

「この前話していた、チラシです!変わりたいセイト君にピッタリかと思いまして!」

 こないだのチラシ?

 あぁ、ヘレーナが国を救ったと書かれているという・・・それがなんだ?



 そういえば、このチラシには広告が載っているらしいな。それっぽいのが確かに下の方に書かれていた。

 字は読めないが、確か内容は性転換について・・・



「いらねーよ!変わるって、そういう意味じゃねーから!」

「そうなのですか、残念です。」

 本当に残念そうに、俺がつき返した紙を丁寧に折りたたんで、懐にしまうマリア。



 本気だったのか!?





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