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1 変わりたくない
しおりを挟む子供の頃はよかった。
何も知らず、ただ親の言うことを聞いて、自由な時間の時は子供同士で遊んで、楽しく過ごす。
そんな私も高校生になって、いまだに大人とは言えないけど子供というには知っていることが多すぎて、純粋さもなくなったと思う。
「ねぇ、聞いた?あの2人付き合ってるんだって。」
「あー、やっぱりね。そうだと思ったんだー。」
授業の合間の休憩時間に、2人の女子が話していた。
それは、小学校からの同級生2人が付き合っているという話。公園で駆けまわって遊んでいたあの2人が・・・
友達から恋人へ。2人の関係はさらに密になって、私とは疎遠になる。
帰りのホームルーム。先生が真面目な顔をして語りだした。
「実は、今日休んでいる前下だが・・・」
前下君。彼も小学校時代からの同級生で、川に入って一緒に遊んだことがある。そんな彼とは最近話していいなかったけど、今日休んでいることは把握していた。
「民家に不法侵入していたそうだ。おそらく、この教室に戻ってくることはないそうだ。」
なぜ?
その犯行にも疑問を持つが、この教室に戻ってこないということも不思議だった。高校生は、まだ成人していないので逮捕されることはないはずだし、何とか内々に収めて公表することなんてしないと私は思っていた。
だが、こうやって事実彼の犯行は公表されて、確かに彼がこの教室に戻ってくることは難しいように思われた。
恋愛、犯罪・・・友達から知り合い・・・変化していく同級生たちと私の関係・・・すべてがなんだか恐ろしかった。
私自身、何もあのころと変わっていないと思う。確かに、純粋ではいられなくなったけれど、恋人なんていないし、犯罪になんて手を染めないし、親の言うことはしっかりと聞いている。
でも、周りはそんな私にかまうことなく、どんどんと変化していった。
恋人がいるのは当たり前。
話さなくなったら、もう友達ではない。
いつからか、一人取り残されてしまったような感覚があって、それが悲しく同時にほっとした。
変わるのは怖いから、取り残されていたほうがいい。
「変わりたくなんてない。」
でも、変わっていく。
そう、私も変わっている。純粋でなくなって、外で駆けまわることもしなくなって、人間の汚さなんかも知ってしまって。
帰り道、私は考える。
私は、もうこれ以上変わりたくない。
どうすればいい?
どうすれば、子供の頃のように悩むことなく、毎日をきらきらとした目で見られるようになるのだろう。
子供の頃のように・・・
「そうだ、子供の頃にやっていたようにしよう。」
私は、いつもの通学路を外れて、入ったこともない林の中の道を駆けた。
子供の頃は、いろんなところに行った。小さな冒険をいくつもした。
林の中へと入って、ある程度奥に行くと立ち止まった。
顔を上げれば、葉っぱが太陽の光を降り注いでいるような、幻想的な光景が目に映った。
「きれい・・・」
胸が高鳴る。そうだ、これこそが私が求めていたもの。
何を見てもきらきらとしていて、胸が高鳴る。
これから、ここに通おう。
あぁ、でも・・・もしもこの景色を見ても何も感じなくなってしまったら・・・それは、また私が変わってしまったということになる。
「怖い・・・変わりたくない。」
ずっとこのままがいい。そうすれば、これからの心配なんてしなくて済むのに。
「君、見かけない顔だね。」
そんなことを考えたせいだと、後に思う。
変わってしまった私には見えない村を、その時の私は見つけた。
こんな林の中に村なんてあるはずもないのに、その時の私は村を見つけて・・・彼と出会った。
声をかけられた私が振り返れば、その時の私はすでに村の中にいて、目の前に少年が立っていた。
優しく微笑む彼に、私は安心して・・・きっとその時に私は、恋をしたのだと思う。変わったことに気づかず。私は変わりたくないといまだ願い続けて、彼と時を共有することになる。
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