3 / 3
3 分数
しおりを挟む唐突に消えた村の代わりに現れたのは、先ほどの林。降り注ぐ太陽の光は赤くなっていて、夕暮れの景色になっている。村で見たのと全く変わらない夕日。
変わったのは、村か林かというだけだった。
「何だったんだろう?」
疑問には思ったが、頭で考えても答えは出ないだろう。考えるのはやめて、私は家に帰ることにした。
楽しかった。別に特別なことはしていない。ただ、村であった少年と一緒にかくれんぼをするために納屋に隠れていただけ。何も特別なことなどない・・・唐突に村が現れたり消えたりしたことは不思議だったが。
でも、そんな楽しいことも終わってしまえば、いつものつまらない日常に戻ることになる。
「宿題、面倒くさいな・・・」
夕食を終えた私は、勉強机の前に座ってため息をついた。
理由はもちろん、目の前の宿題にある。全国の学生を苦しめる宿題・・・漢字・英語を繰り返し書くという、苦行がそれぞれ一ページ。数学のプリント1枚。これが今日のラインナップだ。ちなみに、だいたい漢字と英語は毎日一ページずつ書かされていて、プリントは曜日によって教科が変わる。
数学は、私の一番嫌いな教科だ。
なぜなら・・・
「これって、どう計算するの?計算の仕方が分からないよ・・・」
笑われてしまうかもしれないが、私は分数の計算ができない。あの数字が板をもってその上に数字が乗っている奴、意味が分からないのだ。
なので、私はいつも分数の計算をすることを諦めているが、このプリントはなんと・・・すべてが分数の計算だった・・・
いや、なんで!?
だいたい、分数の計算なんて、小学生とか中学生とかの・・・そう、高校生がやる問題じゃないでしょ!なのに、なんでこいつはいつまでも・・・!
足し算・引き算はいいが、そこに分数が加わるのは本当に許せない。
分数は、本当に理解不能だ。だけど、いまさら分数のことを聞くのも嫌だし、理解する気はない。一生、こいつのことは理解できると思えない。
「・・・仕方がない。」
私は、数学のプリントを前にしてシャーペンを持っていたが、それを置いた。
「できるなら、この手は使いたくなかったけど、時間の無駄だからね。」
私は右手に赤ペンをもって、プリントの問題すべてをバツにして、答えを書き写した。真っ赤になった数学プリントをクリアファイルにしまう。
「さて、気を取り直して・・・これも嫌だけど、何も考えなくていいからこっちのほうが楽だよね。」
漢字練習帳を開いて、指定されたページの画数が少ない漢字を10個選んで、ページを埋めていく。
そんな感じで、漢字と英語の宿題を終えて、私は風呂に入ることにした。
「今日は・・・疲れたな。」
楽しかったけど、少しだけ疲れてしまった。
あぁ、楽しかったのはもちろん宿題じゃないよ?村に行って、少年とかくれんぼをしたこと・・・本当に、私はかくれんぼしたのかな?
さっきの出来事は夢だったのではないかという気がしてきた・・・
いつもならアプリゲームをやるところだけど、今日はもう寝よう。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
離れて後悔するのは、あなたの方
翠月 瑠々奈
恋愛
順風満帆だったはずの凛子の人生。それがいつしか狂い始める──緩やかに、転がるように。
岡本財閥が経営する会社グループのひとつに、 医療に長けた会社があった。その中の遺伝子調査部門でコウノトリプロジェクトが始まる。
財閥の跡取り息子である岡本省吾は、いち早くそのプロジェクトを利用し、もっとも遺伝的に相性の良いとされた日和凛子を妻とした。
だが、その結婚は彼女にとって良い選択ではなかった。
結婚してから粗雑な扱いを受ける凛子。夫の省吾に見え隠れする女の気配……相手が分かっていながら、我慢する日々。
しかしそれは、一つの計画の為だった。
そう。彼女が残した最後の贈り物(プレゼント)、それを知った省吾の後悔とは──とあるプロジェクトに翻弄された人々のストーリー。
嘘コクのゆくえ
キムラましゅろう
恋愛
アニーは奨学金とバイトで稼いだお金で魔法学校に通う苦学生。
生活は困窮、他の学生みたいに愛だの恋だのに現を抜かしている暇などない生活を送っていた。
そんな中、とある教授の研究室で何らかの罰としてアニー=メイスンに告白して来いと教授が学生に命じているのを偶然耳にしてしまう。
アニーとは自分のこと、そして告白するように言われていた学生は密かに思いを寄せる同級生のロンド=ハミルトンで……
次の日、さっそくその命令に従ってアニーに嘘の告白、嘘コクをしてきたロンドにアニーは……
完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。
誤字脱字が罠のように点在するお話です。菩薩の如き広いお心でお読みいただけますと幸いです。
作者は元サヤハピエン主義を掲げております。
アンチ元サヤの方は回れ右をお勧めいたします。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる