6 / 41
6 初めての戦い
しおりを挟むヒックテインの乗騎に揺られること1時間。私たちは、グランツ山脈と呼ばれる場所に到着した。道中魔物に襲われることもなく、後ろをついて走る騎士たちに出番はなかった。そして、森では彼らの出番がもっとなかった。
「では、俺たちは山に入る。お前たちはここで待機だ。」
「私は行きます。」
「・・・その馬ならいいか。よし、ではいくぞ。」
そう言って、私とヒックテイン、ランズの3人で山に入ることになり、他の護衛と呼ばれていた人たちはここでしばらく休憩となった。
見れば、彼らの乗騎は疲労困憊の様子だ。休ませる必要があるのだろう。対して、ヒックテインとランズの乗騎は疲れた様子がない。
「護衛と離れてもいいの?」
「離れてないだろ?お前の護衛は俺だ。」
「でも、あの騎士は・・・」
「俺の護衛だ。」
「・・・え、やっぱり離れてる・・・」
「俺はいいんだよ。さ、さっさと魔物の巣を見つけようぜ。」
乗騎にする魔物は卵から育てる。つまり、卵が必要なので、魔物の巣を探すところから始めなければならない。
「あぁ、その前に・・・テキトーに魔物を倒すか。お前の実力も見たいからな。」
「・・・私が戦うの?」
「あぁ。お前強いんだろ?だったら、別にかまわないよな?自分は強いから訓練は必要ないだなんて、慢心するくらいだからな。」
「別にいいけど・・・」
カンリは、城の宝物庫でしっかりと装備を整えさせてもらった。機能性重視・・・効力重視というべきか、マジックアイテムと呼ばれる特殊な効果を持った装備を身に着けているが、ファッションのことなど一ミリも考えていないので、その姿はちょっとないな、と思う姿だ。
特にそういうことに関して気にしていない様子のヒックテインは何も言ってこなかったが、ケイレンスなど笑みが引きつるほどで・・・カンリ自身はそこまでひどい格好をしているつもりはないのだが、どうやらこちらの価値観だと破廉恥らしい。
ノースリーブがいけないのだろうか?それともスパッツか?と考え込むカンリだったが、その両方であるとは思っていない。
上は、防御力が高く動きやすさを重視した服で、ちょっと腕が出ていて谷間が見えてしまう服だが・・・防御力が高いのだ。そして、動きやすい。
下は、動きやすさ重視のスパッツ。そして、藁っぽい何かでできた腰巻。まるで山賊のようだ・・・とカンリは思ったが、その効力を気に入って巻いている。他にも、靴と腕輪も効力で選んでいて、合うかどうかなどの問答はしていない。
最後に武器だが、これに関してはいろいろと目移りをした結果、その都度借りるといって、現在何で戦うかは決めていない。とりあえず今はナイフと片手剣を持っている。ナイフはサブ武器として決めているので、メインに何を使うかが考え中だ。
定番は剣。しかし、槍などもいいと思うし、弓矢もいいと思う・・・などとカンリはぐだぐだと考えて、考えることをやめた。まずは一通り使ってみることにしたのだ。
「で、誰を相手にすればいいの?」
「そうだな・・・とりあえず、北の方にゴブリンの集落があるらしいから、そいつらで試し切りと行くか。」
「ゴブリン・・・確か、人型の魔物だっけ?」
「あぁ。弱いが、人間と一緒で群れる。数の暴力であっけなく倒されたりしないように、囲まれないように注意すれば難しい相手じゃない。」
「・・・ふーん。」
「これで躓くようじゃ、訓練に参加してもらうことになるからな?」
「それは面倒だね・・・わかった、本気を出すよ。」
「常に本気で行け。本気出せないままで死ぬのは、馬鹿のやることだ。」
「常に爪をさらしとけってこと?能のない鷹だね。」
「鷹になる必要はない。俺たちは人間だからな。ん!?」
ヒックテインの乗騎が何者かの攻撃を避けた。それは、原始的な造りの斧の様な武器で、それが私たちに向かって飛んできて、地面に突き刺さった。
「は・・・この山にオークなんていなかったはずだろ。」
「オーク?」
「二足歩行のブタ・・・とでも思っておけばいい。ちょうどいい、ゴブリンよりは強いが雑魚だ。倒してみろ。」
「わかった。」
さっと、乗騎を下りて剣を取る。
身体強化のおかげで、もともとよかった運動神経にさらに磨きがかかった。筋力まで増えたようで、重い剣を持っていても簡単に振うことができる。
「なるほど、確かに二足歩行のブタ・・・おいしいのかな?」
おいしかったとしても食べたくないと呑気なことを思いながら、カンリはオークとの距離を一気に詰めた。
「なっ!」
背後から、ヒックテインの驚いた声が聞こえる。まさか、距離を詰める動作だけで驚くなんて、カンリをどれだけ弱い者として見ていたのか、心の中でため息をついたカンリは飛び上がって、そのままオークに向かって、剣を振り下ろした。
あっけなく倒れるオーク。腕で防御しようとしたが、腕の小手ごと斬り伏せた。武器を手放したらあっけがないと思ったが、そういえば雑魚だとヒックテインが言っていたことを思い出して、こんなものかと納得をする。
キンっ!
2匹目のブタが、カンリに向かって斧を振り下ろした。それを剣で受け止めるカンリ。
そのまま斧をはじいて、横凪ぎに斬る。
3匹、4匹、5匹・・・20匹斬ったところで、ブタは・・・オークは全滅した。
「嘘だろ・・・ハイオークだったのに。」
「ハイオーク?」
とても楽しそうなブタを思い浮かべたカンリは、少しだけ笑った。
「とても、そうは思えなかったけど?」
カンリに倒されたハイオークたちは、特に楽しそうではなかった。だからそう答えたカンリだが、ヒックテインは別の捉え方をしていた。
ハイオークと思えるほど強くなかったと。そう、カンリは思ったと勘違いする。
思った以上にカンリが強いようだと知り、ヒックテインは彼女にふさわしい乗騎を考え直すことにした。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)
スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」
唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。
四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。
絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。
「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」
明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは?
虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる