恩人召喚国の救世主に

製作する黒猫

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6 初めての戦い

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 ヒックテインの乗騎に揺られること1時間。私たちは、グランツ山脈と呼ばれる場所に到着した。道中魔物に襲われることもなく、後ろをついて走る騎士たちに出番はなかった。そして、森では彼らの出番がもっとなかった。



「では、俺たちは山に入る。お前たちはここで待機だ。」

「私は行きます。」

「・・・その馬ならいいか。よし、ではいくぞ。」

 そう言って、私とヒックテイン、ランズの3人で山に入ることになり、他の護衛と呼ばれていた人たちはここでしばらく休憩となった。

 見れば、彼らの乗騎は疲労困憊の様子だ。休ませる必要があるのだろう。対して、ヒックテインとランズの乗騎は疲れた様子がない。



「護衛と離れてもいいの?」

「離れてないだろ?お前の護衛は俺だ。」

「でも、あの騎士は・・・」

「俺の護衛だ。」

「・・・え、やっぱり離れてる・・・」

「俺はいいんだよ。さ、さっさと魔物の巣を見つけようぜ。」

 乗騎にする魔物は卵から育てる。つまり、卵が必要なので、魔物の巣を探すところから始めなければならない。



「あぁ、その前に・・・テキトーに魔物を倒すか。お前の実力も見たいからな。」

「・・・私が戦うの?」

「あぁ。お前強いんだろ?だったら、別にかまわないよな?自分は強いから訓練は必要ないだなんて、慢心するくらいだからな。」

「別にいいけど・・・」

 カンリは、城の宝物庫でしっかりと装備を整えさせてもらった。機能性重視・・・効力重視というべきか、マジックアイテムと呼ばれる特殊な効果を持った装備を身に着けているが、ファッションのことなど一ミリも考えていないので、その姿はちょっとないな、と思う姿だ。

 特にそういうことに関して気にしていない様子のヒックテインは何も言ってこなかったが、ケイレンスなど笑みが引きつるほどで・・・カンリ自身はそこまでひどい格好をしているつもりはないのだが、どうやらこちらの価値観だと破廉恥らしい。



 ノースリーブがいけないのだろうか?それともスパッツか?と考え込むカンリだったが、その両方であるとは思っていない。



 上は、防御力が高く動きやすさを重視した服で、ちょっと腕が出ていて谷間が見えてしまう服だが・・・防御力が高いのだ。そして、動きやすい。

 下は、動きやすさ重視のスパッツ。そして、藁っぽい何かでできた腰巻。まるで山賊のようだ・・・とカンリは思ったが、その効力を気に入って巻いている。他にも、靴と腕輪も効力で選んでいて、合うかどうかなどの問答はしていない。



 最後に武器だが、これに関してはいろいろと目移りをした結果、その都度借りるといって、現在何で戦うかは決めていない。とりあえず今はナイフと片手剣を持っている。ナイフはサブ武器として決めているので、メインに何を使うかが考え中だ。

 定番は剣。しかし、槍などもいいと思うし、弓矢もいいと思う・・・などとカンリはぐだぐだと考えて、考えることをやめた。まずは一通り使ってみることにしたのだ。



「で、誰を相手にすればいいの?」

「そうだな・・・とりあえず、北の方にゴブリンの集落があるらしいから、そいつらで試し切りと行くか。」

「ゴブリン・・・確か、人型の魔物だっけ?」

「あぁ。弱いが、人間と一緒で群れる。数の暴力であっけなく倒されたりしないように、囲まれないように注意すれば難しい相手じゃない。」

「・・・ふーん。」

「これで躓くようじゃ、訓練に参加してもらうことになるからな?」

「それは面倒だね・・・わかった、本気を出すよ。」

「常に本気で行け。本気出せないままで死ぬのは、馬鹿のやることだ。」

「常に爪をさらしとけってこと?能のない鷹だね。」

「鷹になる必要はない。俺たちは人間だからな。ん!?」

 ヒックテインの乗騎が何者かの攻撃を避けた。それは、原始的な造りの斧の様な武器で、それが私たちに向かって飛んできて、地面に突き刺さった。



「は・・・この山にオークなんていなかったはずだろ。」

「オーク?」

「二足歩行のブタ・・・とでも思っておけばいい。ちょうどいい、ゴブリンよりは強いが雑魚だ。倒してみろ。」

「わかった。」



 さっと、乗騎を下りて剣を取る。

 身体強化のおかげで、もともとよかった運動神経にさらに磨きがかかった。筋力まで増えたようで、重い剣を持っていても簡単に振うことができる。



「なるほど、確かに二足歩行のブタ・・・おいしいのかな?」

 おいしかったとしても食べたくないと呑気なことを思いながら、カンリはオークとの距離を一気に詰めた。



「なっ!」

 背後から、ヒックテインの驚いた声が聞こえる。まさか、距離を詰める動作だけで驚くなんて、カンリをどれだけ弱い者として見ていたのか、心の中でため息をついたカンリは飛び上がって、そのままオークに向かって、剣を振り下ろした。



 あっけなく倒れるオーク。腕で防御しようとしたが、腕の小手ごと斬り伏せた。武器を手放したらあっけがないと思ったが、そういえば雑魚だとヒックテインが言っていたことを思い出して、こんなものかと納得をする。



 キンっ!

 2匹目のブタが、カンリに向かって斧を振り下ろした。それを剣で受け止めるカンリ。



 そのまま斧をはじいて、横凪ぎに斬る。



 3匹、4匹、5匹・・・20匹斬ったところで、ブタは・・・オークは全滅した。



「嘘だろ・・・ハイオークだったのに。」

「ハイオーク?」

 とても楽しそうなブタを思い浮かべたカンリは、少しだけ笑った。



「とても、そうは思えなかったけど?」

 カンリに倒されたハイオークたちは、特に楽しそうではなかった。だからそう答えたカンリだが、ヒックテインは別の捉え方をしていた。

 ハイオークと思えるほど強くなかったと。そう、カンリは思ったと勘違いする。



 思った以上にカンリが強いようだと知り、ヒックテインは彼女にふさわしい乗騎を考え直すことにした。





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