恩人召喚国の救世主に

製作する黒猫

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 人と魔族が争う戦場に、一騎のドラゴンが参戦した。いや、ドラゴンに乗った、一人の少女が戦争に加わったのだ。

 魔族が1人人間を倒す時間に、少女は10匹の魔族を倒していく。魔族10人分の働きをする少女を見て、ひとりの魔族が腰を上げた。



「俺が出よう。」

 少女が相手をしている四本足の魔族とは違い、2本の足でしっかりと立つ魔族の姿は、肌の色が紫ということを除けば、人間の様だった。



「一番人間に近い姿をしている俺が出て、相手の反応をうかがうとしよう。どう見たって、あの強者は素人・・・どこかの世界から召喚された、一般人だろう。人間たちは、俺たちのことをどう説明したのだろうな?」

 嫌らしい笑みを浮かべて、魔族の男は自分の乗騎であるワイバーンにまたがった。ドラゴンよりは劣るが、グリフォンよりは格上の最上級とも言われた乗騎。そもそも、ドラゴンを乗騎にすることがイレギュラーなのだ。

 一般的な範囲で言えば、ワイバーンが最上級の乗騎だ。そんなワイバーンにまたがる男は、今は亡き人間の王国の象徴を刺繍したマントをなびかせて、戦場へと向かった。







 あらかたの魔族を血の海に沈めたカンリは、後方に下がって休憩をとっていた。用意された餌をトカゲに与え、ランズが用意したお茶を楽しむ。

 外、戦場だとは思えないほど、質のいいお茶とおいしいお菓子、組み立て式ではあったが椅子と机、日傘まで用意されていた。

 そこで優雅にお茶をしていれば、ヒックテインが現れた。



「これはさすがに引くな。」

「ランズが用意してくれたものだけど?」

「お前か。だが、用意されたからと言って、よくそう飲み食いできるもんだな?女っていうのは、血を見ただけで気絶する生き物だと聞いたのだが。」

「もしそうだとしたら、月に何回気絶するわけ?」

「・・・確かにそうだな。一緒にいいか?」

「うん。椅子はあるかな?」

「ご用意いたします。」

 頭を下げて消えていったランズだったが、即座に戻ってきてヒックテインに組み立てた椅子を用意した。

 一体どこから持ってきたのか不思議だったが、もしかしたら転移のギフト持ちなのかもしれないと、カンリはそれ以上考えるのをやめた。



「そういえば、後からお前の同級生だったか?あいつが合流するって聞いた。」

「へー・・・山本君も戦うの?」

「様子見だな。戦えるのなら戦ってもらって、無理そうなら見学だ。戦えれば戦力になるが、戦えないならただのお荷物になるな。」

「戦えるとは思うけど、どうだろう。戦えない方が得だって考えれば、戦えないふりをするかもね。」

「うわーめんどくせー。お前らさ、命を助けてもらったわりには、非協力的というか・・・ちょっと俺の想像と違ったわ。」

「命を助けられた、つまり命の恩人か。・・・確かにそうだね。」

 召喚されなければ、カンリは間違いなく死んでいた。それはわかったが、でもそれをあの時は望んでいたので、どうも恩人という意識は無い。



「召喚のギフトを使って召喚された者が召喚者に協力するのは、命の危機に召喚されるからだと聞いた。なるほどって思ったんだがな。俺だって、死ぬという時に召喚されて間一髪で助かれば、それを成した相手の助けになろうと思う。」

「・・・まぁ、人それぞれじゃない?」

「そういうものか?こうも違うと、住む世界が違うというのがよくわかるな。」

 カンリは命を助けられたという意識は少ない。だが、山本はどうだろうか?彼は、計画が狂ってしまい、報いを受けるように命を落とそうとしていた。だが、それに納得するような男ではないので、死を受け入れようなどとは思わなかっただろう。

 命を助けられ感謝した可能性が高い。だとしたら、彼は本気で召喚した国、ザキュベのために力を尽くそうと思うのだろうか?

 カンリにはわからなかったが、山本は本気で他人のために力を尽くすようには見えないと感じているので、この世界でも自由に暮らすのだろうとなんとなく思った。



 別に、どうでもいい。

 カンリは、学校の屋上で身を投げた時、もうすべてがどうでもいいと思ったのだ。それが、この世界に来て希望を抱くことになって、その希望だけは見つけたいと思っているが他は変わらずどうでもよかった。

 希望、それは親友を探すこと。



 小沼花菜こぬまかなは、カンリの唯一の親友で、馬鹿なところがとてもかわいい、ちっちゃい背もかわいい、ぷくっと膨らんだ頬もかわいい、すべてがかわいいとカンリが思う同級生だ。

 そんな彼女を失って、でも彼女の死体を見ていないカンリは、この世界に来たことで希望が生まれた。



 彼女もこの世界に召喚されているかもしれない。カンリや、山本君と同じように。



 それが、彼女がここにいる理由だった。それがなければ、カンリはもう一度身を投げていただろう。

 彼女のいない世界に意味などないとでもいうように、あっさりとその命を落としたことだろう。それだけ、カンリにとって花菜は大切で存在意義ともいえるほどの人物だった。



 テーブルの下で、こぶしを握り締めて自分がここにいるのだと改めて認識し、誓う。必ず、この世界にいるだろう親友を見つけ出し、寄り添うと。





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