恩人召喚国の救世主に

製作する黒猫

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11 同級生

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 カンリが召喚された者の有用性を証明したため、とある海沿いの国がタングットに援軍を派遣した。その数は10名。そのうちの一人は、カンリと同じで召喚された者だった。

 同じくタングットに派遣されていたカンリは、ケイレンスと共に対面することになった。



 少しの期待は、召喚されたのは男だと聞いて消えた。ただ、義務的に対面する。



「ザキュベの騎士団長、ガンセルだ。こちらは我が国の客人、グラール様。」

「パグラント王国第一王子、ケイレンス・パグラントです。こちらは、我が国の召還ギフト所持者が召喚し、協力を約束してくださったツキガミ様です。」

 グラールと呼ばれた男は、外国人のような名前をしているが少し色の抜けた黒髪というよりは茶色に近い髪と目をした、カンリの良く知る人物だった。

 にこにこと、いつも張り付けている笑みは健在で、腹の中ではどう思っているのか知らないが、カンリに向かって手を差し出した。



「まさか、君がこの世界にいるとは思わなかったよ。ここではグラールって呼んでくれるかな、ツキガミさん。」

「・・・山本君・・・」

「グラールだって。」

「生きていたんだね・・・」

「・・・ふっ。何とか命拾いしたからね、よろしくね?」

 冷たい空気に気づかず、ガンセルは山本の肩を強く叩いた。



「なんだ、知り合いか?よかったなぁ、見ず知らずの土地で一人だと何がと心細いだろう?世界に数人しかいないだろう召喚された者の中に知り合いがいるなんて、幸運だったな。」

「あぁ、同級生なんだ。幸運だよ・・・本当にね。命が助かっただけでも幸運だったのに、神様はどこまでも僕の味方みたいだね・・・ね、ツキガミさん?」

「・・・顔合わせはもういいでしょ、部屋に戻っていい?」

「つれないな。」

 無表情で接するカンリに、にこにこ顔の山本。カンリの態度に多少眉をひそめるガンセルと同じように眉をひそめるケイレンス。ただ、ケイレンスが眉をひそめている相手は山本だ。



「申し訳ない、ツキガミ様は初めての戦争を経験してお疲れの様子。今日のところは失礼させてもらいます。」

「あぁ、そうでしたか。兵士でもないあなたが戦うことは、とても困難なことだろう。それでも決意したあなたの勇気に、敬意を。」

 ガンセルはひそめていた眉を元に戻して、カンリに向かって頭を軽く下げた。カンリはそれに会釈で応えて、その場を後にした。







 部屋に戻ったカンリは、なぜか付いてきたケイレンスと共に向かい合ってソファに座った。ランズがそんな2人にあたたかい紅茶を入れ、2人の間にある机には湯気の立った紅茶が一つずつ置かれている。



「あの、グラール?山本?どちらでもいいけど、ザキュベが召喚したあの男は、何者なんだい?」

「・・・さっき山本君が言ってた通り、私と同じ学校に通う同級生。文武両道、才色兼備、人望もあって・・・簡単に言えば、学校の王子様。」

「私と同じだね。」

「本当にそうだよ。あなたを見た時、山本君かと思った。顔じゃないよ、中身が。完璧な人間の皮を被った、残酷非道の下種野郎。」

「え、待って。それ・・・私も含まれるのかい?」

「あなたのことはよく知らないけど、裏表はありそうだとは思っているよ。」

「それに関しては否定はできないね。そうか、君に嫌われているのは、あのヤマモトクンが原因だったのか・・・」

 ほっとしたような顔をするケイレンス。カンリは気にせず紅茶に口をつけた。ケイレンスもそれに続く。



「山本君は、かっこよくて、頭がよくて、運動ができて、みんなの憧れ。山本君の周りには常に人が集まって、みんな楽しそうにしている。」

「・・・」

 カンリが話し始めたのに驚きながらも、ケイレンスは黙って耳を傾ける。山本のことを聞いたとしても、カンリが答えてくれるとはケイレンスは考えていなかった。カンリは、ケイレンスには必要最低限のことしか話さないし、自分自身のことを語ることはほとんどない。

 どのような気まぐれかはわからないが、めったにないチャンスだと思い、ケイレンスは真剣に話を聞く。



「誰にでも優しく、めったに怒らない。そんな完璧な優等生の山本君だけど、彼には裏の顔があった。それは、いじめっ子の顔。彼は、弱い者いじめが大好きだった。」

「ずいぶん、器が小さいことを。」

「あなたも無自覚にやっているんじゃないかって、私は思っているけどね。」

「それは心外だよ。これでも王子、そんなくだらないことをする暇もないし、幼い心をもってもいないよ。」

「そう。ま、それはどうでもいいけど。」

「・・・どうでもいいんだね。」

 苦笑いを浮かべるケイレンスに頷いて、カンリは続きを話す。



「誰も、彼がいじめをしているなんて思わない。実際いじめられていても、何かの勘違いなんじゃないかなんて、馬鹿なことを思うほど彼は人望があった。彼は、そうやって自分の思い通りに事が運ぶのが面白かったのかもね。」

「人心掌握がうまいなんて、敵に回すと面倒そうだ。でも、彼がこの世界に召喚されたってことは、命を落とす危険にあったってこと。つまり、彼の計算が狂うことが起きたんだね。」

「・・・」

 そうだ。と、カンリは心の中で同意した。

 あの、空が赤く染まる夕方に、山本は新しい遊びを・・・いじめを行っていた。それがまさかあんな結果を生むなんて、確かに山本は思わなかっただろう。計算が狂ったのだ。



 笑いながら、山本は命令した。それが悲劇を生むとは知らず。



「飛び降りてみてよ。」

「え?」

「・・・なんでもない。ケイレンスには必要ないと思うけど、彼には気を付けたほうがいい。彼は、周りを味方につけるのがうまいから。」

「わかった。ありがとう・・・君が僕のことを心配してくれるなんて、少しだけ嬉しいよ。」

「・・・そう?」

「うん。」

 変なの。

 心の中でそう呟けば、顔に出ていたのかケイレンスははにかんで笑った。そのように笑う要素がどこにあったのか、カンリは疑問に思った。



 ま、いいか。





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