恩人召喚国の救世主に

製作する黒猫

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 休憩を終えたカンリは、トカゲにまたがって再び戦場へと向かった。ヒックテインが先導し、後ろには山本がガンセルの乗騎に乗せてもらって付いてきている。

 山本の周囲には護衛だろうか、両サイドと背後に3人の騎士が引っ付いている。もちろん彼らも乗騎に乗っているが、初めてみる魔物なのでカンリには何の魔物かわからなかった。

 大きな鳥といった感じの魔物だ。



 オオトリでいいか。などと勝手に心の中の呼び名を決めて、先導するヒックテインに視線を戻して、空を飛ぶ。

 ヒックテインが目的地に到着したと合図を送ってきたので、カンリは戦場の様子を探った。降り立つに最適な場所を探しているのだ。



 トカゲ・・・ドラゴンは陸地を走るのには向いていない。空を飛ぶことで真価を発揮するので、移動は空を使うことになる。空での移動は右に出るものはいないし、回避能力はグリフォンより劣るが、強靭なうろこはちょっとやそっとの攻撃では傷一つ付けることはできない。そして、回数制限はあるが、強力なブレス攻撃ができるので、攻撃力も申し分ない。

 まさに、最上級の乗騎だ。



 しかし、そんな乗騎をカンリはうまく使えていないと感じた。それは、武器選びを誤ったからだ。

 今日手にしている武器は、槍。そして、相手は乗騎に乗っていない魔物。



「絶対、飛び道具の方がよかった・・・」

 トカゲに乗ったままだと、地上の魔物に攻撃することがやりにくく感じられ、それなら降りたほうがいいと休憩前はトカゲから降りて戦った。今もそうするつもりだ。

 トカゲ自身が攻撃もできるので、カンリはトカゲに乗っているだけで敵を倒すこともできるが、それだと槍と自分が合っているのかわからない。なので、降りてでも戦ったのだ。



「とりあえず。トカゲに乗ったままだと、槍は使いにくいことが分かったね。まぁ、相手も乗騎に乗っていれば別なのかもしれないけど・・・」

 魔物相手に、そういうのを求めるのは無理かと諦めた時、トカゲが警戒心をあらわにしたように鳴く。

 カンリは顔を上げてトカゲが睨みつける先をたどって、驚きに目を見開いた。



 ドラゴン・・・トカゲよりも小さいが、姿形はトカゲそっくりのドラゴンが、人のようなものを乗せてこちらに向かってきているのだ。



「応援?」

 人影なら、味方だろう。そう思ったカンリだったが、ヒックテインがこちらを焦った様子で見て何か叫んだことで、何かが違うと思った。

 そして、気づいた。



「紫・・・色の肌?」

「下げれ!ツキガミ!」

 こちらに指示を出し、同時に魔法を展開し炎の玉を紫の肌の人間に向けて放った。しかし、相手も魔法を放ってヒックテインの魔法は相殺される。

 さらに接近した敵、はっきりとその姿を捕らえたカンリは、見間違いでなく敵が紫色の肌をした人間だということを確認する。あれは人間なのか?魔物に操られた人間の死体か?カンリの頭に疑問が浮かぶ。



 敵は、ヒックテインが連続して放った魔法を次々と避け、次第に距離を詰めていく。ヒックテインはいらだちをあらわにしながら、腰に下げていた剣を抜く。しかし、そんなヒックテインを華麗によけて、カンリの方に迫る敵。剣を抜かない敵を不思議に思いつつ、槍を構えるカンリだったが、敵はカンリからだいぶ離れた場所で停止し、カンリに対して笑いかけた。



「お客人、人間たちにこき使われて大変だね。こっちに来ないか?」

「・・・これも魔法?よく聞こえる・・・」

「そう、風の魔法。それでどう?こっちの仲間にならない?戦えなんて言わないし・・・それに本当のことだって、ちゃんと教えてあげるよ・・・そこのお兄さんもね。」

 いつの間にか、カンリのすぐ後ろに山本がいた。護衛の騎士はうつろな表情で手綱を握るだけで、何も言ってはこない。



「本当のことって?もしかして、魔族に君みたいな人が混じっていることと関係があるの?」

 優しげに問う山本の声がカンリの耳元に届いた。つい顔をしかめるカンリを見て、紫の肌の男は面白そうに笑う。



「あぁ、もちろんだよ。俺はね、人間だよ。」

「聞くな、2人共!ガンセル殿、何を呆けているっ!」

 焦るヒックテインの声が聞こえたが、山本の背後にいる騎士ガンセルは、全く反応を見せない。



「このっ!」

「少し黙っていてくれないかな。」

 背後から斬りかかるヒックテインの剣を、魔法で作り出した結界のようなものを使って防ぎ、空いた手で水の玉を放った。それを炎の玉を放ち相殺しその場を離れるヒックテイン。



 しかし、そこへ敵は水の玉を放つ。先ほどまでとは比べ物にならないスピード、それでもヒックテインは魔法を展開し結界で自身を守る。だが、水が結界に触れた瞬間爆発し、衝撃で遠くへ吹き飛ばされた。



「邪魔者は消えた。さて、俺は人間で下にいる魔物になっている者たちも人間なんだ・・・つまり、この世界は人間同士で争っているってこと。そんな戦いに君たちが参加する。馬鹿馬鹿しいことだ。だから、こちらで保護しようと思ってね。そこの蛮族とは違って、戦えとは言わない。どう、いい話だと思うけど?」

「君だけでなく、下の魔物も?とてもそうとは思えないけど・・・」

「本当だよ。本当の魔物っていうのは、人間の言葉など使わない。でも、下の魔物は違うだろう?」

 確かに、山で出会った魔物は言葉を解さなかったのに、この線上にいる魔物は言葉を解す。



「それが本当なのかは確かめられないけど、ここで嘘をつく意味もあまりないように思う・・・どうする、ツキガミさん?」

「なんで私に聞くの?山本君には関係ないでしょ。」

「手厳しいな・・・ま、僕はパスかな。」

「そう、それは残念・・・」

 カンリの視界の端にヒックテインが映る。そろそろ合流できるだろう。



「あなたたちは・・・魔族は、私達を召喚することが無駄なことだと思ってる?」

「君たちを戦いに出すことに、否定的というだけだ。別に、君たち自身を否定したりしているわけではないよ。」

「そう。」

 カンリは人間と魔族を天秤にかけた。別に、同種族だからと人間に重きを置いたりはしない。カンリは、目的さえ叶えばいいのだから。





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