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しおりを挟む黙って話を聞くカンリに向かって、親友は決別を言葉にした。
「もう、私にかまわないで。私は生まれ変わったの。ずっとあなたと一緒にいるのが嫌で仕方がなかった・・・でも、いなければ一人になってしまうからずっと一緒にいたの。でも、もう違う。」
「・・・」
親友との友情は、徹底的に否定された。全てがカンリの妄想でしかなかったのだと突きつけられて、カンリは言葉も出ない。
「さようなら。」
「ここは引かせてもらうが、いずれ敵は討たせてもらうから。」
前後を挟まれていた魔族側だが、両脇は開いていたのでそちらから逃げて行った。ケイレンスはそれを止めることなく睨みつけるにとどめて、十分に距離が離れたのを確認してから、カンリの元に近づいた。
「ツキガミさん・・・」
「・・・・・」
「・・・いったん戻ろう。いいね?」
「・・・うん。」
「ツキガミ様!ケイレンス様!」
「どうした、ランズ!」
「こちらに急接近するグリフォンがいます!すぐに撤退を、私はここで敵を食い止めます!」
「数は!」
「・・・お気になさらず!対処できる数です!」
「・・・何体かと、聞いているんだよ!」
「5体です。」
「対処できないだろう!」
「しかし・・・3人いても同じことです。それに、今はツキガミ様が。」
「・・・わかった。私たちはドラゴンに乗って撤退する。私のワイバーンを残していく・・・ある程度時間を稼いだら、あなたも私のワイバーンと共に撤退しないさい!」
「・・・ありがとうございます!ツキガミ様をよろしくお願いします。」
「もちろんだよ。ツキガミさん、相乗りさせてもらうよ。」
「・・・うん。」
トカゲの首元に視線を固定したまま動かないカンリの後ろへ、ケイレンスは飛び乗った。少しだけ嫌そうなトカゲをなでてなだめる。
「悪いが、俺たちを運んでくれ。」
「ぎゃーう・・・」
不満そうに鳴きながらも、トカゲはタングッド城の方向へと飛ぶ。頭のいい乗騎だと感心したケイレンスは、手綱をカンリから受け取って、振り返ることなく進行方向を見据えた。
後方から、激しい戦闘音を聞いたが、それでも振り返らずただ前を向いた。
タングット城にある、ヘリポートのような場所。そこにトカゲは着地し、ケイレンスは飛び降りて、カンリに手を貸そうとしたが、その手を止めた。
「様子がおかしい・・・急とはいえ、兵士の一人も出迎えに来ないなんて。ツキガミさんはここで待っていて欲しい。私が見てくる。」
「・・・うん。」
「・・・ドラゴン、主をしっかり守るんだよ。」
「ぎゃう。」
当たり前だと鳴くトカゲに頷いて、ケイレンスは城の中へと続く扉を開けた。すると、城から吹き付けた暴風に吹き飛ばされて、数メートル飛んで転がる。
しっかり受け身を取っていたためすぐに起き上がったが、扉から出てきた人物を見て動きを止めた。
「魔族・・・!?」
「まだ人間が残っていたとは、驚いた。」
「・・・まさか。」
ケイレンスは、もうすでに城の人間は無力化されているだろうことを悟った。殺されているか、拘束されているかはわからないが、ここで待機していた者たちは王族含め、魔族の手におちたのだと。
遂に、隣国のタングットは終わったのだ。
「くっ・・・!」
脱出しなければと思い、ケイレンスは炎の玉を出して魔族にぶつけるが、魔族が出した風の魔法によって、炎の向かう先はずれて城壁にぶつかる。
素早く剣を抜いて敵に接近するが、あと少しで敵に剣が触れるというところで、先ほどの暴風が吹き荒れた。
「うあっ!?」
このままだと足場がないところに落ちると気づいたケイレンスは、自分も風魔法を使って軌道をずらすが、足が付けられたのはほんの一瞬。次いで吹いた風によって、ケイレンスの体は真っ逆さまに落ちっていった。
その光景を目に移したカンリは、再生される親友が落ちる光景を重ねて悲鳴を上げた。
「いやぁぁああああああああっ!」
トカゲから飛び降りて、駆ける。でも、身体強化された体でも、落ちるケイレンスに追いつくことは難しく、カンリも間に合わないことはわかっていた。
あの時とおんなじだ。
目の前で人が死ぬようなことが起きても、カンリは何もできない。ただ、見ていることしかできない。
どんなに勉強ができる頭も、褒められる運動神経も、何にも役に立たない。手に入れたギフトも、目の前で死んでしまいそうな人を助けることはできない。
自動回復は、自分にしか影響がない。死にゆく命を救うことはできない。
身体強化も、自分にしか影響がない。自分がどうにかできる範囲でないと、死にゆく命を救うことはできない。
制限解除など、どうやって使うか見当もつかない代物だ。
役に立たない。カンリとおんなじで、役に立たないのだ。
「・・・っ」
もう手遅れだと分かってしまって・・・カンリは膝から力が抜けて転ぶ。無駄に頭がいいせいで、もう無駄なあがきなんだと分かってしまう。
もう、ケイレンスは、地面の上だ。そんなの、見る前からわかっている。そう、あの時もそう思って、親友の時も、カンリは下を確認しなかった。
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