恩人召喚国の救世主に

製作する黒猫

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 動けなくなったカンリを、魔族の魔法が襲う。風を刃のようにした魔法で、触れれば切断されるような威力を持っている。

 トカゲはすぐさま動いて、カンリを口にくわえて飛び立つ。固いうろこに魔法が当たってひびが入ったが、傷は深くない。



 落ちるように飛んだトカゲを見て、魔族の方は急所に当てたかと勘違いし、余裕の表情を浮かべて城の下を覗き見た。



 しかし、何も見えない。真っ白な光だけが見えて、慌てて尻もちをつくように回避をした魔族。その行動は正解で、魔族を狙ったトカゲのブレスが、魔族の前で下から上へと通り過ぎる。



「なっ・・・」

「ぎゃう!」

「これならどうかなっ!」

 トカゲの背には、片手に炎をまとった剣を振りかざすケイレンスがいた。炎が剣から離れ、刃となって魔族を襲う。唐突に風の魔法を放つ魔族だが、驚きの連続で反応が遅れ、利き手が炎に包まれもがいた。



 それを確認することもなく、トカゲは上空にあがって城を離れた。全力で飛ぶトカゲに追いつくことは魔族にはできないだろう。手に移った炎を消した魔族は、悔しそうに歯噛みした。



「ガーグル、どうした。」

 城の中から出てきた仲間に目も向けず答える魔族。



「ちっ・・・逃げられたんだよ・・・ドラゴンに乗った男、たぶん、パグラントの王子だ。」

「パグラントか・・・ならいいだろう。今回の目的はタングットだ。あまり欲張ることはないさ。」

「お前なぁ・・・」

「逃がしちまったもんはしょうがない。ほら、行くぞ。」

 諦めきれないようにトカゲが逃げて行った方角を睨む魔族だったが、すでにその姿も見えないことを確認して、大きく舌打ちをした後城の中へと戻っていった。







 タングット城を脱出したカンリたちは、スピードを緩めてパグラント城への帰路についた。しかし、消耗は激しく、カンリも精神的に参っていたため、野宿をすることにした。



「本当は、このまま帰った方がいいのかもしれないけど・・・僕の魔力も心もとないから、今日はここで休もう。」

「・・・うん。」

「ごめんね。君を悲しませた。」

「・・・私が・・・私の力が足りなかっただけだよ。もう、あなたは駄目かと思った。」

「私は、そんなに弱くない。確かに、君のようにギフトを3つも持っているわけではないし、攻撃特化というわけでもないけど・・・王族はね、生き残るすべを何個も持っているもんなんだよ。ちょっとやそっとでは死なないから、安心して欲しい。」

「・・・よかった・・・」

「・・・っ!?」

 涙を流しながら笑うカンリを見て、ケイレンスの心臓が跳ね上がった。

 カンリは、純粋にケイレンスが死ななかったことを喜んでいるのだと思い、上辺ではない言葉がケイレンスの心に刺さったのだ。



「・・・失礼な娘だって、思っていたけど。それもいいもんだね。」

「え?」

「いや、なんでも。」

「・・・ところで、どうして城のてっぺんから落ちて無事だったの?もしかして、落ちても平気なくらい防御力が高いの?」

「いや、そんな防御力高かったら、私は無傷のはずでしょ?」

 あきれたように笑うケイレンスの体は、あっちこっちから血が流れていた。細かい傷が何個もあるのだ。対して、自動回復があるカンリは、服が汚れているだけで全くの無傷だ。すでについた傷は癒えていた。



「風の魔法で飛んだんだ。あまり長い時間は飛べないけど、落ちた時から地面までくらいなら飛べる・・・というより、落下のスピードを落としたという方が正解かな。制御が難しくてね。」

「・・・そっか。なら、今後落ちる人がいても心配しなくていいね。」

「いや、普通はそのまま落ちるから、助けられるなら助けてくれるかな?私は大丈夫だけど、アスレーンあたりから怪しいし。ヒックテインは大丈夫かな?ってくらいだから。」

「・・・ケイレンスって、意外とすごかったりするの?」

「自分で言うのもなんだけど・・・剣も魔法も本職の人に負けない程度には鍛えているから、ちょっとやそっとじゃ負けないよ?ただ、相手が人間ならの話だけどね。」

「・・・魔族って、反則的に強いんだね。」

「今更気づいたの?」

「・・・うん。魔物に知性が備わったくらいかと・・・元人間だって知った時は、人間より少し強くて、魔法が使えるくらいだと思っていた。」

「四足歩行は、その程度だと思っていいよ。でも、さっき会ったような魔族、ワイバーンやグリフォンに乗っているような魔族は桁違いの強さだよ。」

「うん、わかった。」

「・・・さて、話は後にして、そこら辺から枝を拾ってきてくれるかい?あぁ、私の目の届くところでね。私は、野宿の準備をするから。」

「うん・・・よろしく。」

「ツキガミさんもね。なるべく、乾いた枝を頼むよ。それで焚火を作るから。」

「木の枝は集め終わりました。」

「「・・・!?」」

 第三者の声が聞こえたため、2人は声も出さずに驚いて、声の方へと目を向けた。

 そこには、ちょっと薄汚れてはいるがたいした傷を負っていないランズが、言葉の通り集めた枝を持って立っていた。



「ら、ランズ!?」

「いつからそこにいたんだい?」

「最初からですが。親睦を深めるために大切な会話をしているようでしたので、声はおかけしませんでした。」

「・・・最初から?」

「はい。もともと私がここで野営しようと準備を進めていたところに、お2人方が現れたのです。・・・やはり、気づいていなかったのですね。」

 全く気付かなかったと思い、ぞっとする2人。ランズが敵だったのなら、無防備なところを襲われていただろう。



「まぁ、私に気づかなかったことは、気にすることではありませんよ。執事たるもの、そばにあることが当然・・・空気と変わらないものですから。」

「・・・つまり、ランズは影が薄いってこと?」

「薄いというよりは、薄くするようにしています。」

「いや、こういう時は普通にしていてくれ。いいな?」

「いいでしょう。では、野営の準備をいたしますので、歓談をお続けください。」

「・・・わるいけど、頼むよ。私は、少し休ませてもらう。」

「ケイレンス、無理していたの?」

「まぁ、だって、ツキガミさんは野宿したことが無いから、わからないでしょ?やれる人がやらないと・・・ま、気にしないで。」

「・・・ありがとう。」

「はい、ではあちらへ。ツキガミ様はこちらへ。すぐにお茶の用意をいたします。」

 邪魔者のようにケイレンスを追い払ったランズは、てきぱきと動いて集めた枝で焚火を作りお湯を沸かした。どこから取り出したのか、茶器もしっかり準備されている。



 そういう、ギフト・・・なんだろうな。



 無理やり自分を納得させ、カンリはそれ以上考えるのをやめた。







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