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25 恨まれて
しおりを挟むカンリを襲った兵士は、魔族におちたタングット兵ではなかった。ともに戦うはずのタングット兵が、カンリを襲ったのだ。それも一人二人ではない。
まず、10人のタングット兵が、パグラントの拠点で騒ぎを起こした。これが、ランズが様子を見に行ってカンリの傍を離れた原因の騒ぎ。
それからひっそりと拠点に侵入していたタングット兵5人が、2つに分かれてカンリを探し、見つけたほうがカンリを襲った。
騒ぎを起こしたタングット兵は、ランズが指揮した兵士に捕らえられ、カンリを襲ったタングット兵もランズが捕らえた。残りのタングット兵は、ランズに指示された兵士が捕らえ、拠点にいるすべてのタングット兵が捕らえられた。一人無関係なタングット兵がいたが、それも一時捕らえた後解放している。
正直、この拠点はランズなしでは崩れるのではないかと思う。
「そんなことはありませんよ。何人か精鋭もいますし・・・それに、そろそろ王子たちもやってきます。ご安心を。」
「王子・・・って、誰が来るの?アスレーンはないと思うけど・・・ケイレンス?ヒックテイン?」
「どちらがよろしいですか?」
「・・・どっちでも。ランズは?」
「そうですね・・・ヒックテイン様ですね。ケイレンス様に剣の腕では後れを取っていますが、魔法はケイレンス様の方が得意です。きっとツキガミ様を守るのに役立つでしょう。」
「判断基準がおかしくない?」
「なにもおかしいことはありません。執事たるもの、ご主人様の安全が第一、利益が第二ですから。第三からもツキガミ様を優先させる項目が続きます。」
「・・・執事ってそういうものなの?」
「はい。」
「戦えるのも?」
「はい。ご主人様を守ることは、執事の職務の一つです。」
「・・・そう。」
ランズに聞いても無駄だろうと思い至って、カンリはそれ以上聞くことをやめた。それで結局誰が砦に来るのかと聞けば、ヒックテインだった。
よかったね、ランズ。
「そういえば、タングット兵はなんで私を襲ったの?魔族に下ったタングット兵ならわかるけど、一緒に戦うはずの・・・仲間がなぜ私を襲ったの?」
嫌なことを想像して、冷や汗を流しながら聞くカンリ。もしかしたら、山本が何かしたのかもしれないと、若干怯えを含んで聞けば、ランズは遠くの方を見て馬鹿にしたように笑った。
「ランズ?」
「失礼いたしました。いえ、本当に愚かなことだと思いまして・・・我々が力を貸すのが当然だと思っている、恩を感じていない愚かな連中だったもので。彼らは、タングット城が落ちたのは我々のせいだといっていました。」
「私たちのせい?」
「世迷言ですよ。確かに、城が落とされたのは想定外でしたが・・・我々がいなければとっくの昔に落ちていた城です。気にすることはありません。」
パグラントがタングットに協力するのは、人類共通の敵である魔族と戦っているから、という理由ではない。確かに国は協力関係を築いているが、その国はその国で自国を守らなければならない。本来協力する義務はないのだという。
ならなぜ協力しているかというと、タングットが魔族の手に落ちれば、次に被害を被るのがパグラントだからだ。
パグラントとしては、タングットの土地で戦争を終わらせたいと思うのが自然。好き好んで自国の土地を戦火に包ませようなどとは誰も思わない。自国で戦争になれば、勝ったとしても、復興などの面倒がかなりかかるのだ。
そういうこともあってパグラントは、タングットに協力している。それは他国も同じで、山本以外にも自国の騎士や兵士をタングットに派遣している国はある。
タングットに協力することはパグラントのためにもなるが、それは義務ではないので善意の協力という体だ。
「簡単に言えば、ボランティアに来た人に向かって、責任を擦り付けているってことかな?」
「似たようなものですね。彼らの言い分では、我々が城にいれば城は落ちなかった・・・と言っていました。そのようなことを言われても、鼻で笑います。」
「・・・自分たちに守る力が無いから頼っておいて、失敗すれば責任を追及する・・・どこの世界も変わらないってことだね。」
「頼ることを当然のことだと思っている・・・頼られた側は頼った側を助けなければならないとでも思っているのでしょうね。まぁ、なんにしても、頭のおかしい兵士の戯言ですから、お気になさらず。」
「・・・それだけなの?それだけが理由だと、私を襲った理由がわからない・・・あ、もしかして、一番弱そうだったから狙われた?」
パグラントに復讐をするとして、一般兵では復讐相手として弱いだろう。そうなってくると、象徴的な存在である王子や勇者などを狙う必要があるが、その中でカンリはたった一人の女性なので、弱いと思われたのだろう。
実際、対人間の場合はカンリが戦うことができなかったので正解だったが。
そのこともあったのだが、カンリが狙われた一番の理由は、カンリが恨まれていたからだ。
城が落とされた日、カンリは魔族側の召還された者との対話・・・親友と対話していた。それがなければ、魔族を倒して城へ帰還するのがもっと早かったのではないか、と彼らは思ったのだ。なので、対話をしたいと願ったカンリを、一番恨んでいる。
「おそらく、女性だから狙われたのでしょう。助けられておいて、助けた相手の力量も図っていないとは、嘆かわしいことですね。」
ランズはそう言って話を終えた。カンリが憎まれているということは、カンリ自身の耳に入れる必要はないと思ったのだ。
私が、守ればいいだけのことですから。
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