聖女の首輪

製作する黒猫

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5 友人の結婚式

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 きらびやかな舞踏会。光を降り注ぐシャンデリアの下では、花のようなドレスをまとった令嬢たちがうわさ話に花を咲かせる。



「ねぇ、聞きました?鳥飼の勇者様とつぼみ様の噂。」

「あら、それはどの噂かしら?ゴワンツ伯爵の夜会の噂?それとも、お勉強部屋の噂?」

「今日はどのような噂を作り出すのでしょうか?」

「飼っている鳥とは関係がないことは確かで、つぼみ様との噂であることは確かですわね。」

「あら、噂をすれば。」

 入場してきた勇者と幼い王女に一時だけ目を向けて、再び噂話に戻る。



「鳥かごの鳥には、餌をやってきたのでしょうか?」

「それが全く。今はつぼみ様にご執心だそうですわ。」

「まぁ、お可哀そう。もう愛でることもないのなら、放して差し上げればよろしいのに。」

「それが、大層飼い主になついてしまったようで、哀れですわ。頼るものが飼い主しかいないなら、それも致し方ないことでしょう。」

「飼うならば、最後まで愛で続けるのが当然ですのに。」

「本当に。」

 鳥・・・チカがケントを嫌っていたことは、周知の事実だった。

 召喚された当初、何かとケントから離れようとするチカを、何とかそばに置こうとするケントという構図はよく見かけられて、守られてばかりのチカはケントに大きく出られず、周囲もケントの言葉に逆らうことはできず、遂にチカは離宮という名の鳥かごに閉じ込められてしまった。

 それから5年。すっかりチカは飼われる鳥になってしまい、飼い主であるケントにすり寄ってさえずるしかできない鳥になってしまったのだ。



 それなのに、ケントが今夢中になっているのは、年下の王女。

 仲睦まじげに草陰から出てきた。抱き合っている姿を、窓の外から見た。すれ違いざまにあった勇者が、王女の香りをまとっていた。

 面白おかしく、勇者と王女の仲は噂で流されて、聖女は愛でられなくなった哀れな女性ということで、少しの同情を含まれた噂が流れる。



 可哀そうな聖女。ひどい勇者。それが周囲の認識だ。そして、それがさらに加速する。

 勇者と王女の結婚が、このパーティーで発表された。







 2人の結婚式が執り行われた。今回は、簡易の結婚式で2人の愛の誓いと、勇者の最後のドラゴン討伐出立式、宴が行われる。

 唐突に開かれたものなので、招待客は限られていた。しかし、この国貢献した勇者の結婚式と出立式ということで、王都の主だった貴族が招待を受け、賑わいを見せている。



 もちろん、聖女も招待されたが、結婚式の席は空いていた。来ることなどできるわけがないと誰もが理解を示し、勇者に向けられる視線は多少嫌悪が混ざっている。



 結婚式は教会で誓いを立てて終わる。勇者と王女の前に神父が立ち、神の前で生涯を共にすることを誓うのだ。



 神父が愛を説く。しんと静まった教会に神父の落ち着いたよく通る声が響き、ステンドグラスを通って色を持った光が降り注ぐ。

 勇者は顔を少し上げて神のシンボルを見上げ、王女は顔を俯かせて瞼を閉じて口元に笑みを浮かべている。



 それぞれがそれぞれの思いを抱き沈黙する中、それを邪魔するような音が響く。さして大きくもない、扉を開ける音。

 逆光の中現れたのは、にこにこと笑った、黒髪と黒い瞳の聖女だった。



 勇者と王女は振り返らず、ただ前を向いているので聖女が来たことを確認できないが、招待客の中には聖女の方を見て目を見開いている者もいる。

 そんな中で、優雅に聖女は進みだして、自分のために用意された席に着いた。



 最前列、招待客の誰もが聖女を認識し、驚きに目を見開く。そこに聖女がいるからというのもあるが、聖女が座ったのが聖女の席ではなく、王女の友人のために用意された席だったからだ。



 王女側は、王族は一切出席していないが席は用意されている。これはこの結婚に反対という意味ではなく、単に公務が詰まっていたのと急な予定であったからだ。

 だから、その席が空白であっても問題はない。ただ、そこに用意された友人の席は、疑問であった。誰の席なんだと。

 それは、聖女の席だった。



 どういうことなのか?

 聖女と王女は、勇者を取り合う恋敵と言っても過言ではない。その仲では険悪になることはあっても、仲良くなることはないはずだ。それが、友人の席へと着いた。



 招待客がどよめく中で、愛を誓い合った2人が振り返る。

 聖女と王女は目を合わせて笑い合い、勇者は固まった。







 夜の闇などないかのように、明るく照らされたホールで、豪華な食事と酒、着飾った人々が立っている。



 勇者の出立式を行う宴では、主役の勇者をそっちのけで聖女と王女に視線が集まった。勇者とは目もあわせずに王女と楽しそうにかわす聖女。そんな聖女に親し気に笑い返す王女。

 勇者は胡散臭そうに聖女を睨みつけているが、特に何も言わない。



 そして、招待客の目をひときわ集めているのが、聖女のネックレスだった。石のはまっていない求婚のネックレスを着けている聖女。

 勇者を忘れられない・・・そんな思いがあるのではないかと思うのに、勇者を奪った王女に対して、全く悪意を感じない。



 誰もが状況についていけない中、王女が手を合わせて思い出したように言う。



「そうでした。今日はあなたにサプライズを用意したの。もちろん受け取ってくれるわよね、チカ?」

「私に?そんな、今日はあなたのための宴でしょう?」

「だから、あなたの笑顔を私に贈って欲しいのよ。さぁ、受け取って。」

 王女が合図を出すと、最後の招待客が現れた。



「バーシャス王国、第一王子、ワーゼルマン・バーシャス・・・」

 身分を明かされたバーシャス王国の王子が入場し、聖女を見つめて微笑んだ。



 にこにこ笑う聖女は、心の中でぽつりとつぶやく。

 あの胡散臭い笑みだけは好きになれないな。





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