9 / 13
9 王女と聖女
しおりを挟む王女として生まれ、いずれ嫁ぐ身だというのが嫌で嫌で仕方がない今日この頃に、私は聖女に呼び出されました。
なぜという疑問符が浮かびましたが、呼び出しに応じない理由もないので、聖女と会うことにしました。
勇者が魔物討伐に出ている間、なぜか私が呼び出したという形になって、聖女が私のもとに来ました。
形式的な挨拶が終わって、気づくと人払いがされていて、なぜと疑問に思って警戒すると、聖女は自分が国王に頼んだと言って、笑います。
「あなたと、内密に話がしたかったんだ。エリーゼ王女。」
「私とですか?いったいどのようなお話しでしょうか。」
「エリーゼ王女、ずっとこの城で暮らしたいと思わない?もしそうなら、私がその手段を教えてあげるけど、どうかな?」
驚きました。まさか、ほとんど付き合いのない聖女が、私の思っていることを言い当てて、願いを叶えるための手段を思いつくなんて。
世間知らずの、学のない聖女だと思っていましたが、そうではないようですね。いえ、話を聞くまではわかりませんね。
「とても興味があります。ですが、それを教えていただいたら、私は何をすればよろしいのでしょうか?」
私が支払えないようなものを望むなら、これでこの話は終わりです。聖女の望むもの、そう考えて思いつくのは、勇者からの解放です。ですが、それは私にはできないことです。
お金や物であったら、用意できる可能性はありますが。
「王女様にしてもらいたいことは、王女様がこの城に残るために必要なことだけ。」
「まさか、本当にそれだけですか?」
「うん。なんで私がこの話をあなたにしたと思う?あなたが私の言う通りに動いてくれれば、私の利になるから。もちろん、あなたの望みも叶う。ウィンウィンってこと。」
「・・・あなたにも、私にもいい話・・・わかりました。聞かせていただきますか?」
「もちろん。簡潔に言えば、あなたには未亡人になってもらう。」
「・・・はい?」
全く思いつかなかったことを言われて、私はもしも未亡人になったらと考えます。結婚して、たとえば貴族に降嫁されたとして、夫が亡くなったとします。
未亡人になった後は?その家に残りますよね?あれ?
「未亡人になったとして、ここに帰ってこられるわけではありませんよね?」
「それは誰を想定してのことかな?それに、あなたは出て行かない。この城から一歩も出ることなく、未亡人になってもらう。」
「まさか、そんなことが可能なのですか?」
「わからない?ここまで言っても・・・ううん、私が未亡人になってもらうと言った時点で、検討くらいはつくと思うけど。」
「・・・まさか、勇者様と?」
「うん。エリーゼ王女には、ケントをおとしてもらう。ね、ウィンウィンでしょ?」
絶対に無理だと、私は思いました。だって、勇者が聖女を深く愛しているのは周知の事実で、そんな勇者を私が誘惑し結婚の意思を固めさせることなど、できるわけがありません。
私は困った顔をして、無理だと伝えました。
「難しく考えることはないよ。私が勇者から愛想を尽かされて、あなたが勇者に愛されればいいだけの話だよ。」
「・・・無理です。聖女様に愛想を尽かす勇者様など想像ができません。」
「それは、エリーゼ王女の想像力が足りないだけだよ。まず、私が愛想を尽かされるのは簡単。勇者に媚びて媚びまくり、甘えて甘えてしがみつく。そして、何もしない。これを続けて数年・・・最近やっと効果が出てきたような気がするの!あとは、別の好みの女の子がいれば、ケントはそっちになびくはず。」
「申し訳ありませんが、やはりそのようにうまくいくとは思えません。」
「そう・・・なら、エリーゼ王女は諦めてどこかのお嫁さんになるの?」
絶対にできない、無理としか頭にありませんでしたが、もしもうまくできたなら、私の願いが叶うということを思い出しました。
お嫁になんて行きたくない。ずっとこの城で優しい家族に囲まれて生活したい。そんな願いが叶うなら・・・
「ちょっとは希望を持って、動いてみたらどう?別に、ケントを殺せと言っているわけではないし、失敗してもちょっとケントとの関係が気まずくなるくらいだし。」
「勇者様との関係・・・犠牲になるのはそれくらいですね、確かに。」
「今まで交流がほぼない相手だから、どうでもいいよね。まぁ、ここから交流を持ってもらう予定なんだけど。」
それでも、問題はないでしょうと聞いてくるように聖女は笑いました。確かに、何も問題はありません。私には。
ですが、勇者が死ぬことに関して、聖女は何とも思わないのでしょうか?
私が勇者と結婚し未亡人となるには、勇者が私と結婚した後に死ななければなりません。
聖女が、勇者をよく思っていないことはよく知っていますが、それでも同じ世界から来た、同じ立場の、この世界で唯一理解しあえる人が死ぬことを、聖女は受け入れられるのでしょうか?
「やるかどうかは、エリーゼ王女に任せるよ。まずやることは、ケントを護衛騎士に任命すること。それで交流をもって、ケントに好印象を持ってもらえるように振舞う。」
「お待ちください。」
「とりあえず最後まで聞いてくれる?それとも、もうわからないところがあった?」
「えぇ。まず初めからわかりません。あなたは、なぜこの方法を・・・勇者様の命を失うような方法を選ばれたのですか?方法はいくらでもあるはずです。」
「ないよ。というより、方法ではなくて、目的だから。」
「方法ではなく、目的・・・?」
私は、勇者から解放されたい聖女が、勇者が死ぬことによって解放されようとしているのかと思いました。ですが、その考えが違ったのです。
「エリーゼ王女は、この城に残りたいからケントと結婚します。私は、ケントを殺したいから、あなたに協力します。」
「勇者様を殺したいから・・・?」
「まぁ、殺すのは私ではないけどね。」
「・・・私は、まだ最後まで話を聞いていませんでしたね。私がなぜ未亡人になるのかを。」
聖女の目を見て、私は彼女のことについて聞くのはやめました。話す気はないのでしょう、なら聞く必要はありません。
私は、私の望みを叶えるために動けばいいのですから。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました
あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。
そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。
平民出身のヒロインの「善意」、
王太子の「優しさ」、
そしてそれらが生み出す無数の歪み。
感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。
やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。
それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。
なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。
これは、
「断罪される側」が最後まで正しかった物語。
そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。
遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)
スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」
唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。
四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。
絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。
「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」
明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは?
虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜
音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった!
スキルスキル〜何かな何かな〜
ネットスーパー……?
これチートでしょ!?
当たりだよね!?
なになに……
注文できるのは、食材と調味料だけ?
完成品は?
カップ麺は?
え、私料理できないんだけど。
──詰みじゃん。
と思ったら、追放された料理人に拾われました。
素材しか買えない転移JK
追放された料理人
完成品ゼロ
便利アイテムなし
あるのは、調味料。
焼くだけなのに泣く。
塩で革命。
ソースで敗北。
そしてなぜかペンギンもいる。
今日も異世界で、
調味料無双しちゃいます!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる