聖女の首輪

製作する黒猫

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 ドラゴンから、ケントが死んだことを伝えられた。まさか、そのために私に会いに来たのかと思ったら違った。



「ワレハ ソコマデヒマデハ ナイ」

「まぁ、そうだよね。それなら何の用?」

「オレイヲ」

「・・・おれい?礼を言いに来たの?」

「ソノトオリダ オレイトシテ ソノイノチ ウバッテヤロウ」

「命を奪うって、それ、復讐・・・」

 どうやら、ドラゴンが恨んでいるのはケントだけではなく、私のことも恨んでいるようだ。それも仕方がないことだと思う。



 私は勇者に力を与えていた。そのせいで、ドラゴンは勇者に殺されてしまったのだ。その復讐の手伝いを私はしたわけだが、それで許されるわけがなかった。



「話は分かったけど、私を殺すことができると思っているの?勇者にあっけなく倒されたドラゴンの末っ子さん。」

 ドラゴンからものすごいプレッシャーを感じる。私は背中に冷や汗を流しながらも、鼻で笑ってドラゴンを見上げた。



 私だって、ケントと共に魔物の討伐に行った経験はある。そこでわかったことは、魔物に舐められたら終わりだということ。

 魔物を倒す力がなくても、力があるようなふりをしていれば、みだりに襲われたりしないのだ。



 悲鳴をあげたり、泣いたりした者から、魔物は襲いに行く。



「キノツヨイメスハ コノミダ」

「・・・気の強い、メス?」

 メスって、私のこと?今この場にいる女性は私一人だ。つまり、このドラゴンにとって私は好みらしい。どうでもいいけど。



「ワレト トモニ クルガイイ ソノタメニ ワレハ ジャマスルイノチヲ ウバオウ」

「狙いは俺たちのようだよ、チカ。」

「あー、私以外が危険ってこと?ふーん。」

「あの、チカ?まさかと思うけど、自分が危険ではないなら俺たちを見殺しにしようなどとは、考えていないよね。」

「・・・」

「チカ・・・」

 どうしようか。見殺しにするつもりはないが、ドラゴンから逃げ切るには力を使わなければならない。

 私は、自分を守る騎士を一人だけ選ぶことができ、その騎士に力を与えることができる。ケントは、この世界に来た時に大きな力を手に入れたが、それに合わせて私の騎士になったことでさらに人間離れした力を使っていたのだ。だから、ドラゴンを倒すことができた。



 そんなケントを見て思ったことは、力がありすぎるとろくな人間にならないということだ。

 この世界に来る前からケントはどうしようもない人間だったが、この世界に来て大きすぎる力を手に入れてからは、周囲を顧みることもなくなって救いようのない人間になったと思う。

 そう思っているからこそ、騎士を選ぶ気にはなれないのだ。



 バーシャス王国では、騎士を選ばずに回復魔法だけで国の役に立とうと思っていたが、それではこの場をやり過ごすことはできない。



 騎士に選ぶなら、ワーゼルマンだが、一度騎士に選べば騎士から外すことはしたくない。一度騎士から外せば、その者はもう騎士に選べなくなる。それではいざという時ワーゼルマンを騎士にして危機を脱するという手が取れなくなる。

 別の者を騎士にするのは論外だ。ワーゼルマンを騎士に選ばなかったことを悪くとらえるものが出てくることが予想できる。付け入る隙はない方がいい。



 あれこれ考えても、答えは一つしかない。ワーゼルマンを騎士にする。

 ワーゼルマンたちを見殺しにして、ドラゴンと生きていくという選択肢は、私の中に全くない。それは、ワーゼルマンが私の思いを尊重してくれたからだ。



 嘘くさい笑顔は苦手だが、私を尊重して何年も待ってくれた恩は忘れない。



 それに、私は人間なので、人間らしい文化的な生活をしたい。



 私は、逃げ切るどころか、ドラゴンを倒せるような力をワーゼルマンに与えた。さて、彼はどう変わるのだろうか。



 変わったとしても、わからないけど。



「私は、あなたたちを見殺しにするつもりはないよ。だってこれからあなたが私を守ってくれるんでしょ?」

「努力するよ。力を与えられたからには、君を裏切らないよう努力する。」

 何も言っていないが、力を与えたことに気づいたようだ。彼が与えられた力ということを意識して、力に溺れないことを祈る。



「ドラゴン、俺は勇者よりも強くなったが、それでも戦うかい?」

「チカラヲアタエルノハ ダレデモヨカッタノカ」

「聖女がいいと思った相手なら、誰でもいいようだよ。」

「ナラ ナゼアノヨウナ オロカモノニ ニクムゾ ニクイ コノミデハアルガ ニクイ」

 ドラゴンは私を一睨みして、飛び立った。



「モウ ワレシカイナイ ニンゲンナド ドウデモイイガ ホカノシュゾクニツミハナイ シヌワケニハイカナイ ホカノシュゾクノタメニ」

「あなたが死んだらどうなるの?」

「ハナスツモリハナイ ガ イキモノガ スメナクナル トハ オシエテヤル」

「そう。さようなら、もう会うこともないでしょ。」

「ソウ ネガウ」

 ドラゴンは飛び去って行った。

 私はドラゴンを指さしてワーゼルマンに聞いた。



「殺さなくていいの?」

「別にあの国をつぶす気はないよ。」

「いや、いい素材が手に入ると思うけど、いいのかなって。」

「とんでもないことを言うね。確かにドラゴンの素材は欲しいところだけど、あのドラゴンを殺した後が大変だってわかっているのに、殺さないよ。」



 とりあえず危機は脱したが、強くなったワーゼルマンが力を振うことなく終わった。

 それから数日後に王都についたが、全く力を振うことがなかった。



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