聖女の首輪

製作する黒猫

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12 満点

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 バーシャス王国についた私は、ワーゼルマンの家族である王家の方々と面会した。3日後には歓迎パーティーを催してくれるそうで、私はその間にゆっくり旅の疲れを癒して欲しいと言われた。



「あれ、これって覚えがある。」

 王家との面会後、部屋から出ることなく2日が過ぎた。この引きこもり生活には覚えがある。ケントの離宮で生活していた時と同じだ。



 あの時は、ケントを貶めてやるという目標があったが、今のところ何の目標もないまま過ごしているので、張り合いがない。

 歓迎パーティーに出席して、ワーゼルマンと結婚して・・・それから、何をすればいいのだろう。



「チカ、元気がないようだけど、どうしたの?」

「特に何かあったわけじゃないけど、この国で私は何をすればいいのかなって考えていたら、特にすることないかなと思って。」

「そんな寂しいことを言わないでよ。これからはここがチカの国になるのだから、この国をよくするために俺と一緒に頑張ろう。」

 ワーゼルマンは私の手を握って、嘘くさい笑顔を浮かべた。

 にこにこと私も返す。



 私は、何がしたかったんだ?

 この世界に来て、ケントに復讐したいと思った。この世界に来る前は、いじめられない生活が欲しかった。その前は・・・?



 その前・・・ケントが私のことを悪く言って、いじめが始まる前。

 私は、勉強しか取り柄がない、それも頭がいいのではなく、人の何倍も勉強をしてやっとテストで80点以上とれるくらいの、そんな胸を張って自慢できるほどのないくらいの・・・中途半端な取り柄。



 そういえば、暗い顔をして83点の答案を見ていたら、ケントが話しかけてきたことがあった。







「なんだ、赤点か?」

「え、違うけど。頑張って勉強したのに、なかなかいい点数とれないなって思って。」

「・・・なんだ、いい点数じゃないか。」

「・・・」

「なら、何点なら満足なんだ?」

「満点。」

 いつかとってみたい点数。憧れの点数を話せば、ケントは笑った。私はそれに対して嫌な気持ちになった。だって、とれるわけがないって馬鹿にされたと思ったから。



「努力家のお前なら、いつかとれるよ。それまで応援してる。」

「え・・・無理だって思わないの?」

「思わない。だって俺、お前がテストで一桁の点数をとっていたのを知っているからな。それが83点って、すごいな。」

 私は顔が熱くなった。確かに、テストで一桁の点数をとっていたことがあって、まさかそれを知られていたなんて恥ずかしすぎる!







 なんてことがあった。

 なんであんなにテストの点数にこだわっていたかというと、ケントが言っていた一桁の点数を馬鹿にされて恥ずかしかったから。もうあんな恥ずかしい思いはしたくないって、頑張っていた。

 勉強を頑張るようになって80点以上をとれるようになったら、恥ずかしい思いをすることはなくなって、次は満点を目指すようになったっけ。



 目指していたことは思い出せたけど、今更テストの満点をとっても・・・というより、この世界にテストがあるとは思えないし、参考にならないな。

 ワーゼルマンが言っていた、国をよくすることを頑張ればいいのかな。でも、どう頑張ればいいんだろう。



 この国をよくするために、何をすればいいのかがわからない。勉強と違って、教科書はないし、導いてくれる先生もいない。



 どうすれば、この国はよくなる?







 歓迎パーティーの日がやってきた。

 私は、新緑をイメージしたというドレスを着て、ワーゼルマンにエスコートしてもらって参加をする。



 前にいた世界とは科学技術が遅れているこの世界だが、パーティー会場は夜だというのに真昼間のように明るく、懐かしく感じる。

 今まで夜の明かりと言えばランプかロウソクだった。この会場の明かりも同じものだろうが、10や20という数ではなく、100単位はあるだろう明かりは、全く別の物に思える。



 そうだ、電気。電気を作って、その電気で動く電化製品を作れば、この国はよくなる?

 前の世界と同じくらいに科学技術を発展させれば、この国を良くしたことになるだろうか?でも、それだけのことをする知識がない。



 テストのための勉強なんて、もうほとんど覚えていない。覚えていたとしても、道具を使って電気を作ったり・・・なんてこと、道具がなければできない。電化製品だって、設計もわからなければ、それを作る道具もないのだ。



 無理な話だった。



 それに、電化製品を広めたとして、国を良くしたことになるだろうか?前の世界は電化製品があふれていたが、いい国だとは思えない。

 平和だったけど、物に恵まれていたけど、私は辛かった。



 それはたぶんいじめのせい。なら、この世界からいじめをなくす?そんなの、電化製品を広めるより難しい。



 私にできることってなんだろう。



「チカ、一曲どうかな?」

「喜んで。」

 にこにこと笑って、私はワーゼルマンの手を取った。

 私、何でこの手を取ったんだろう。



 その時のことを思い出す。

 ケントの復讐を考えて、やっとケントが私に対して含む視線を向けるようになった頃。ワーゼルマン、バーシャス王国一行は私の誘拐計画を実行した。



「助けに来たよ、聖女チカ。」

「助け?」

「はい。自由を奪われたあなたを、俺は助けたい。」

 嘘くさい笑顔だと思った。まるで鏡を見ているようだと。



 この時、ワーゼルマンも自分と同じで、何かを成し遂げたいのだと思った。だから私は、私が復讐を遂げた後になら・・・



 彼の手を取ると決めた。





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