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23 罪人
しおりを挟む私は、人差し指を立てました。
「では、まず一つ目。この現象を引き起こしたものについてです。これは、禁書ですが七禁書ではなく、その七禁書喰らいの書を模倣して作られた喰らいの書の劣化版の禁書でございます。作成者ですら発動させたことのない禁書ですが、作成者の話を聞くとほぼ今わが国で起こっている現象と同じことが起きるだろうと証言を取りました。」
「七禁書の劣化版・・・そのようなものを作った者がいたのか!?」
「はい。その者は、喰らいの書の対抗書を所持しており、それを研究し喰らいの書が発動された時、どのような現象が起こるのかを予想し、その禁書を作りました。」
「喰らいの書の対抗書だと!それは、隣国に・・・その書は、隣国へ融和の証として贈ったものだ。まさか・・・!」
隣国の者による、国規模の侵略・・・などと思っているのでしょうね。外野が無駄口をたたきます。私は懐から扇を取り出して、目の前の机を叩きました。
乾いた音が響き、ざわめきが収まります。
「話は最後までお聞きください。確かに、この書の作成者は隣国の者・・・ですが、その者は以前、この国の貴族でした。作成者は、私の伯父にあたる隣国の伯爵です。」
「あの者か・・・ヘレーナ嬢の伯父・・・」
疑いのまなざしが私へと向けられます。私の伯父が禁書の作成者というのなら、私は先ほど疑われても仕方がありません。ですが、それは私だけではありません。
「伯父は、研究者肌の方のようで、七禁書に対抗できる禁書を研究し尽くしてしまい、研究テーマを失いました。そこで、対抗書のすばらしさに感動した伯父は、その対抗書の対抗すべき書の研究を行い、自分の手元にない喰らいの書を自ら作り出しました。」
「その禁書がどういう経緯で作成されたのかは分かった。そして、その禁書もこの現象を引き起こした可能性がある禁書であることも。それで、重要なのはここからだ。」
「一応ここで弁解をいたしますと、私が伯父に初めて会ったのは、この現象が起こった後です。そして、禁書の存在を知ったのも同じです。」
「・・・それだけでは、疑いを晴らすことはできないぞ?」
「承知しております。」
私は、人差し指と中指を立てました。
「2つ目、禁書を発動させたのは誰か?私は、この現象が起こってから伯父に会い、禁書の存在を知りました。これを知るまでは七禁書の喰らいの書が原因と考え、伯父には対抗書を貸していただけるよう頼みに行ったのです。」
「それが、隣国へと逃亡した理由だと?」
「逃亡ではありません。」
「・・・」
「・・・」
「それで?」
「伯父の屋敷に、伯父が作成した禁書はありませんでした。伯父は、それを誰かに貸したと言っています。」
「そのような危険なものを人に貸すとは・・・」
「えぇ。ですから、そのような危険なものを貸すほど、伯父の信用が置ける人物・・・大切な人だったと推測されます。」
「推測・・・ということは、お主の伯父は口を割らなかったのか?」
「いいえ、私がお聞きしませんでした。」
「話にならならんな。」
「聞く必要がなかったのですよ・・・わかりますよね、流石に。」
「・・・」
私に向けられていた疑いの目が、今度はお母様に向けられました。私の伯父ということは、母方の伯父なので・・・母にしてみれば実の兄なのです。
一度しかあったことがない姪と、一緒に暮らしていた時期のある妹。どちらが信頼に足るでしょうか?答えは明白です。
「しかし、どれも決定的な証拠がないな。ヘレーナ嬢の疑いは、証言と状況証拠。公爵夫人の疑いも同様・・・どちらも決定的な証拠がない。」
「いいえ、あります。」
「・・・なんだ?」
「・・・」
「ヘレーナ嬢?」
私は、お母様の方へ目だけを向けます。すると、お母様と目が合いました。目が合うと、余裕の笑みをお母様は浮かべます。
「禁書は、いまだに発動し続けたままです。それは、外に白い玉・・・死の雪が残っていることからそう考えられます。そして、七禁書であれば、手放すことができましたが、発動した禁書は七禁書ではありません。発動し続けるためには、それに触れている必要があります。」
「つまり、今もなお術者は、その禁書を所持していると?」
「・・・えぇ、ですから、お調べください。」
私は両手を広げます。
「私は、何もやましいものなど持っていません。どうぞ、お好きなようにお調べください。そして・・・」
「公爵夫人も調べよと?」
「・・・はい。答えはすぐに出ることになるでしょう。」
「そうであろうな。宰相・・・」
「では、お2人の所持品検査を行わせて・・・」
「拒否いたしますわ!」
「なっ!?」
「お、お母様?」
扇をばさりと開いて、口元を隠したお母様・・・横から見ている私には、不敵な笑みを浮かべているのが分かりました。
「お黙りなさい、ヘレーナ嬢!私とあなたはもうすでに他人・・・いいえ、私はあなたに罪を暴かれた罪人でしてよ!」
「っ・・・」
「夫人を取り押さえよ!」
「ティナ!何を!」
お父様の声がしました。今まで気づきませんでしたが、お母様に近いほうの貴族の並びの最前列に立っています。
「あなた、私を見捨てる気ですか!私の言う通りにすれば、公爵家の夫人ではなく、王妃にしてやろうと言ったのはあなたではないですか!」
「そ、そんなことは言っていない!」
これは、なんでしょうか?お父様がお母様に甘言をささやき、この現象をお母様が引き起こしたという筋書き?
お母様を騎士が囲み、お母様は魔力を練り上げて、白い玉を目の前に出現させました。
「決まりだな。夫人から禁書を奪え!殺してもかまわん!」
王の言葉に、騎士は斬りかかりますが、出現した白い玉が剣をはじき、騎士の生命力を奪いました。生命力を奪われた騎士は、命を落とします。
「なんで・・・出現したばかりの玉なのに!」
「レナ!私の後ろに!ハインリヒも、いつまでも落ち込んでいるなっ!」
「ディー!」
「はっ!何だこの状況は?な、白い玉が中まで入ってきたのか!」
「馬鹿なこと言ってないで、レナを守れ!玉は斬ろうとするなよ、弾き飛ばせっ!」
「わ、わかった!」
王子とディーの間に立たされました。その間に、私は考えます。
作ったばかりの玉は、少量の魔術しか吸えないはずです。しかし、ある程度魔力があるはずの騎士が、生気を奪われました。生気を奪えるのは、何度か魔力を吸って成長した玉だけだと聞きましたが・・・
「まさか、禁書自体が成長している!?」
「レナ、話は後!とりあえずここから出よう!」
「で、でも・・・」
「逃げるのは難しそうだな。」
出入りできる扉は2つあります。一つは、主に王族が使用する扉、こちらは小さく人が3人並んで歩ける程度の大きさです。
もう一つは、私も通ってきた大きな扉。こちらは、6人程度が並んで入っても余裕がある大きさの扉です。ですが、こちらには人がひしめき合っています。
白い玉が向かってくれば、避けるのは難しいですね。
そう思ったとき、ちょうど人が群がる大きな扉の方へ、3つの白い玉が弾き飛ばされていきました。・・・え?
「は、ハインリヒ様!?」
「仕方がない、弾き飛ばさなければ俺たちがやられていた。」
「・・・それならば、仕方がありませんね。」
「あっちは無理そうだな。こちらにはハインリヒもいることだし、小さいほうの扉から出るとしよう。」
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