23 / 76
悪意への反撃4
しおりを挟む
宣言通り、シルヴァン様は毎日屋敷を訪れて僕に声をかけてきた。その時は何時もオーバン様かボーモンさんが傍にいて彼と二人きりになることはない。
「お前って、ずっとこの屋敷の中で過ごしているのか?」
「……はい。外に出るのは、怖いから」
オーバン様は隠そうとしているけど、完全に隠せてはいなかった。パーティーの後も聖女様がしつこくオーバン様に絡んで来ては僕の悪口を吹聴していると使用人達が話していた。僕が原因で、オーバン様はフェリシアン様との関係にも亀裂が入り、何時対立しても可笑しくない状況になっている、と。王宮では僕は不幸を招く悪魔だと言われているらしい。僕にそんな力はないし、全て彼らの思い込みなのに。
「あの、さ。少し前に言っていたことって、本当なのか?」
「少し前?」
「フェリシアン殿下とは最初から赤の他人だった、って」
「本当です」
「好きじゃ、なかったのか?」
「分かりません。あの頃のことは、あまり思い出したくないので」
「……そう、か。そうだよな。悪い。それじゃあ、オーバンのことは?」
「…………」
オーバン様の名前が出て来て、僕は固まってしまった。オーバン様の微笑む姿や、無邪気な子どものように喜ぶ姿、僕の為に怒ってくれる姿を一気に思い出して、顔に熱が集まるのを感じる。
「顔が真っ赤だぞ? 好きなんだな。オーバンのこと」
「はい」
「だから、今もこうして勉強してるのか?」
「……オーバン様の役に、立ちたいから」
「悪かった」
「え?」
「演技だとか、邪魔だとか、色々と酷いことを言っただろう? 必死に努力していたお前に」
「それは」
「そんなこと、今はもう思っていない。毎日此処に通って、お前と向き合っていたら、嫌でも理解するんだよ。俺の方が間違ってたんだって」
部屋の隅に控えているボーモンさんは何も言わない。敵意がないのは本当なんだろう。シルヴァン様は毎日僕に会いに来た。オーバン様とボーモンさんが追い出そうとしても、彼は諦めずにこの屋敷を訪れては僕に声をかけてくる。任務のこととか、王宮での出来事とか、世間話とか、色々。まだ恐怖は残っているけど、最初に会った時のように震えなくなった。
「信じて、くれるんですか?」
「信じるしかないだろ? お前は何時も一生懸命で、健気で、勉強熱心で、努力家で、そんな奴が他人を虐めるなんてあり得ない」
「…………」
「今は難しいかもしれねえけど、何かあったら俺を頼れ。こう見えて、俺は騎士団副団長だからな」
「ありがとう、ございます」
シルヴァン様から敵意が消えたのは確かだ。彼も、僕のことを信じてくれた。まだ怖いけど、シルヴァン様が味方になってくれたのは、少しだけ嬉しいかもしれない。
「お前って、ずっとこの屋敷の中で過ごしているのか?」
「……はい。外に出るのは、怖いから」
オーバン様は隠そうとしているけど、完全に隠せてはいなかった。パーティーの後も聖女様がしつこくオーバン様に絡んで来ては僕の悪口を吹聴していると使用人達が話していた。僕が原因で、オーバン様はフェリシアン様との関係にも亀裂が入り、何時対立しても可笑しくない状況になっている、と。王宮では僕は不幸を招く悪魔だと言われているらしい。僕にそんな力はないし、全て彼らの思い込みなのに。
「あの、さ。少し前に言っていたことって、本当なのか?」
「少し前?」
「フェリシアン殿下とは最初から赤の他人だった、って」
「本当です」
「好きじゃ、なかったのか?」
「分かりません。あの頃のことは、あまり思い出したくないので」
「……そう、か。そうだよな。悪い。それじゃあ、オーバンのことは?」
「…………」
オーバン様の名前が出て来て、僕は固まってしまった。オーバン様の微笑む姿や、無邪気な子どものように喜ぶ姿、僕の為に怒ってくれる姿を一気に思い出して、顔に熱が集まるのを感じる。
「顔が真っ赤だぞ? 好きなんだな。オーバンのこと」
「はい」
「だから、今もこうして勉強してるのか?」
「……オーバン様の役に、立ちたいから」
「悪かった」
「え?」
「演技だとか、邪魔だとか、色々と酷いことを言っただろう? 必死に努力していたお前に」
「それは」
「そんなこと、今はもう思っていない。毎日此処に通って、お前と向き合っていたら、嫌でも理解するんだよ。俺の方が間違ってたんだって」
部屋の隅に控えているボーモンさんは何も言わない。敵意がないのは本当なんだろう。シルヴァン様は毎日僕に会いに来た。オーバン様とボーモンさんが追い出そうとしても、彼は諦めずにこの屋敷を訪れては僕に声をかけてくる。任務のこととか、王宮での出来事とか、世間話とか、色々。まだ恐怖は残っているけど、最初に会った時のように震えなくなった。
「信じて、くれるんですか?」
「信じるしかないだろ? お前は何時も一生懸命で、健気で、勉強熱心で、努力家で、そんな奴が他人を虐めるなんてあり得ない」
「…………」
「今は難しいかもしれねえけど、何かあったら俺を頼れ。こう見えて、俺は騎士団副団長だからな」
「ありがとう、ございます」
シルヴァン様から敵意が消えたのは確かだ。彼も、僕のことを信じてくれた。まだ怖いけど、シルヴァン様が味方になってくれたのは、少しだけ嬉しいかもしれない。
1,787
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる