あまりものの神子《完結》

トキ

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悪意への反撃4

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 宣言通り、シルヴァン様は毎日屋敷を訪れて僕に声をかけてきた。その時は何時もオーバン様かボーモンさんが傍にいて彼と二人きりになることはない。

「お前って、ずっとこの屋敷の中で過ごしているのか?」
「……はい。外に出るのは、怖いから」

 オーバン様は隠そうとしているけど、完全に隠せてはいなかった。パーティーの後も聖女様がしつこくオーバン様に絡んで来ては僕の悪口を吹聴していると使用人達が話していた。僕が原因で、オーバン様はフェリシアン様との関係にも亀裂が入り、何時対立しても可笑しくない状況になっている、と。王宮では僕は不幸を招く悪魔だと言われているらしい。僕にそんな力はないし、全て彼らの思い込みなのに。

「あの、さ。少し前に言っていたことって、本当なのか?」
「少し前?」
「フェリシアン殿下とは最初から赤の他人だった、って」
「本当です」
「好きじゃ、なかったのか?」
「分かりません。あの頃のことは、あまり思い出したくないので」
「……そう、か。そうだよな。悪い。それじゃあ、オーバンのことは?」
「…………」

 オーバン様の名前が出て来て、僕は固まってしまった。オーバン様の微笑む姿や、無邪気な子どものように喜ぶ姿、僕の為に怒ってくれる姿を一気に思い出して、顔に熱が集まるのを感じる。

「顔が真っ赤だぞ? 好きなんだな。オーバンのこと」
「はい」
「だから、今もこうして勉強してるのか?」
「……オーバン様の役に、立ちたいから」
「悪かった」
「え?」
「演技だとか、邪魔だとか、色々と酷いことを言っただろう? 必死に努力していたお前に」
「それは」
「そんなこと、今はもう思っていない。毎日此処に通って、お前と向き合っていたら、嫌でも理解するんだよ。俺の方が間違ってたんだって」

 部屋の隅に控えているボーモンさんは何も言わない。敵意がないのは本当なんだろう。シルヴァン様は毎日僕に会いに来た。オーバン様とボーモンさんが追い出そうとしても、彼は諦めずにこの屋敷を訪れては僕に声をかけてくる。任務のこととか、王宮での出来事とか、世間話とか、色々。まだ恐怖は残っているけど、最初に会った時のように震えなくなった。

「信じて、くれるんですか?」
「信じるしかないだろ? お前は何時も一生懸命で、健気で、勉強熱心で、努力家で、そんな奴が他人を虐めるなんてあり得ない」
「…………」
「今は難しいかもしれねえけど、何かあったら俺を頼れ。こう見えて、俺は騎士団副団長だからな」
「ありがとう、ございます」

 シルヴァン様から敵意が消えたのは確かだ。彼も、僕のことを信じてくれた。まだ怖いけど、シルヴァン様が味方になってくれたのは、少しだけ嬉しいかもしれない。
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