あまりものの神子《完結》

トキ

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過保護7【シルヴァン視点】

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 オーバンが過保護になる理由は分かるし、クウが心配なのも分かる。神官長達の悪事のせいでクウは少し対人恐怖症に陥っているんだと思う。クウも屋敷の外に出ようとはしないし、オーバン達も無理矢理連れて行くことはしない。むしろ、今はオーバンがクウを囲い込んでいる状態だ。それが悪いことだとは思わない。真実を明るみにしたとは言え、クウに対する悪意が完全に無くなった訳じゃない。

「そう言えば、今年召喚された聖女と神子はどうなったんだ?」
「女神様のところへ帰ったよ。『こんな国、絶対に嫌だ』と吐き捨てて」
「あぁ、やっぱり、そうなっちまったか」

 王宮にある執務室で書類を整えるオーバンを眺めながら、俺は小さくため息を吐く。彼女達は最初こそ神官長達の言葉を信じていたが、オーバンの屋敷を訪れた時に何かが可笑しいと気付いたようだ。パーティーではフェリシアン殿下に選ばれた聖女様がクウの悪口を吹聴して、神官長や貴族達も便乗して、少しずつ疑問を抱くようになった。

「自分の立場をよく理解していたよ。女神様のところへ帰る直前、みんな俺に会いに来て頭を下げたんだ。『あの子を悪者にしてごめんなさい』と。賢い子達だ」
「お前が動く前に気付いたってことだろ? 俺よりも優秀じゃねえか」

 そう言えば、パーティーの時も食事会の時も、あの子達は少し離れた場所で神官長達を眺めているだけだったな。チラッと様子を見ると、疑惑の目を向けていたように思う。まあ、あの聖女様がクウに拘って喚き散らしていたから、嫌でも目立っちまうし、逆に聖女様がクウを嵌めたんじゃないかって思うのも仕方なかったのかもしれない。

「彼女達が、たった一人に深く愛されることを心から願うよ」
「この国以外で、だろ?」
「暫くの間、この国には神子も聖女も喚ばないそうだ。一人の神子を陥れ、身も心も深く傷付けて魂をも消し去ろうとした罰だと女神様が仰っていた。いい薬にはなるだろう?」
「自業自得って訳だ」

 それは俺にも言えることだ。俺だってクウに許されないことをした。やっと心を開いてくれて、よく笑うようになったけど、敵意を向けてしまった時のことは一生忘れられない。忘れてはいけない俺の罪だ。これが償いになるのかは分からない。でも、俺はクウを守りたい。オーバンと一緒にいる時のクウは、本当に幸せそうで、その笑顔を守っていきたいと思ったんだ。

「クウを傷付けたら許さないからな?」
「分かってるって。もう二度とあんなことはしねえよ。クウの作るお菓子は美味しいし、笑顔も可愛いし」
「貴様がクウを語るな!」
「嫉妬深いな! 本当に! お前からクウを奪ったりしねえから安心しろ!」

 いや、でもちょっとだけ、俺がクウの伴侶になってもいいかなって、いや、嘘だ。冗談だ。そんなの絶対に無理だから、剣を抜こうとしないで? お願い。オーバン。
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