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独占欲1
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王宮内のごたごたも落ち着いたみたいで、オーバン様が屋敷にいる時間が多くなった。自室で残っている仕事を片付けたり、ボーモンさんに色々と指示を出したり、お客さんの対応をしたり。お客さんのほとんどは、オーバン様の婚約者候補だとシルヴァン様から教えてもらった。この世界は一夫多妻も許されていて、王侯貴族となると妻が複数いるのは珍しくない。勿論、一夫一妻を貫く人もいるけど、王家や高位貴族だと一夫多妻が推奨される。優秀な血筋を多く残す為だ。
「オーバンのこと、疑ってんのか?」
「疑ってはいません。でも、僕よりも綺麗で可愛い人は探せば幾らでも……」
僕にあるのは神子という空っぽの肩書きだけ。オーバン様と幸せになりたいと願いながら、捨てられるかもしれないという不安は消えてくれない。そんな筈はないと分かっているのに、オーバン様は、こんな僕を深く愛してくれているのに。
「そう暗い顔をするなよ。求婚者のほとんどは、過去に彼奴をいじめていた連中だ」
「え?」
「オーバンから聞いただろう? 彼奴、王立学園に通っていた時は女顔で、気も弱くて、何時も誰かにいじめられていた、って」
「…………」
「あの頃は彼奴も色々とバタバタしていて、身分を隠さなきゃいけなかった。多分、貧乏貴族かちょっと裕福な平民だと思われていたんだろうな。それが、蓋を開けてみたらどうだ? 彼奴は王家に深く関わりのある公爵家の嫡男で、剣の技を磨いて騎士団の団長を任されるようになった。女顔だった顔は成長して丸みがなくなり人形のような精巧な顔立ちに、体も程よく筋肉がついて男の身体になった」
「…………」
「オーバンは、ころころと態度を変える奴が大っ嫌いなんだ。極度の人間不信で、本当に心を許しているのはボーモンと俺くらい。そんなオーバンが、お前の為になると何時も必死になる。彼奴にとって、お前は特別なんだよ。ボーモンや俺よりも」
オーバン様が昔いじめられていたなんて信じられない。でも、オーバン様もボーモンさんもシルヴァン様も、口を揃えて同じことを言うから、いじめられていたのは事実。それなのに、オーバン様が実は公爵家の嫡男だと知ると、過去のことは忘れて媚を売るなんて、なんだかモヤモヤする。胸の奥がムカムカして、オーバン様に近付くな! と言ってやりたい。
「すっごくイライラします」
「オーバンを取られるのは嫌なんだろ? だったら、その気持ちをオーバンに伝えてやれよ。恥知らずなアホどもに『オーバン様は僕のものなんだ!』って知らしめてやろうぜ」
「でも、邪魔をしたらオーバン様の立場が……」
「オーバンを奪われてもいいのか?」
「嫌です!」
「なら決まりだ。今から乗り込もうぜ。客室に」
シルヴァン様に背中を押されて、僕はしっかりとした足取りで客室に向かった。もう、部屋で待っているだけなんて嫌だ。守られてばかりじゃ、オーバン様を奪われてしまう。権力とお金にしか興味のない最低な奴に、オーバン様を渡すものか! オーバン様は、僕の大切な人なんだから!
「オーバンのこと、疑ってんのか?」
「疑ってはいません。でも、僕よりも綺麗で可愛い人は探せば幾らでも……」
僕にあるのは神子という空っぽの肩書きだけ。オーバン様と幸せになりたいと願いながら、捨てられるかもしれないという不安は消えてくれない。そんな筈はないと分かっているのに、オーバン様は、こんな僕を深く愛してくれているのに。
「そう暗い顔をするなよ。求婚者のほとんどは、過去に彼奴をいじめていた連中だ」
「え?」
「オーバンから聞いただろう? 彼奴、王立学園に通っていた時は女顔で、気も弱くて、何時も誰かにいじめられていた、って」
「…………」
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「…………」
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オーバン様が昔いじめられていたなんて信じられない。でも、オーバン様もボーモンさんもシルヴァン様も、口を揃えて同じことを言うから、いじめられていたのは事実。それなのに、オーバン様が実は公爵家の嫡男だと知ると、過去のことは忘れて媚を売るなんて、なんだかモヤモヤする。胸の奥がムカムカして、オーバン様に近付くな! と言ってやりたい。
「すっごくイライラします」
「オーバンを取られるのは嫌なんだろ? だったら、その気持ちをオーバンに伝えてやれよ。恥知らずなアホどもに『オーバン様は僕のものなんだ!』って知らしめてやろうぜ」
「でも、邪魔をしたらオーバン様の立場が……」
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