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番外編「初恋」5【オーバン視点】
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クウと出会ってから、私は何時も彼のことを考えていた。ボーモンに聞いたら、クウはフェリシアン殿下の伴侶に選ばれた神子様だと判明した。あの時、クウを探していたのはフェリシアン殿下だったのか。可愛いクウが突然いなくなって、殿下も心配だったに違いない。それに、フェリシアン殿下はとても優しい方だと聞いている。王立学園でも殿下の人気は凄まじい。私は遠目でチラッとしか見たことがないが、殿下が傍にいるならクウもきっと幸せになれる。
「ボーモン。今日も剣術を教えてくれ」
「またですか? オーバン様」
「このままではダメだと気付いたんだ。私はクウの伴侶になれない。だから、私はクウを一番近くで守れる騎士になりたいんだ」
あの時、クウが声をかけてくれなければ、私は周囲の悪意に押し潰されていた。暗く冷たい地獄のような場所から救い出してくれたクウを守りたい。その為には力が必要だ。誰にも負けない力が。
「変わりましたね。オーバン様」
「今の私ではクウに相応しくない。クウを守る為には力と権力と金が必要だ。ボーモン、私はフォンテーヌ公爵家を継ぐ。お父様とお母様が愛した家を、歴史を、誇りを、私自身の手で必ず取り戻してみせる。付いて来てくれるか?」
「愚問ですな」
「ありがとう。ボーモン」
クウに相応しい人になりたい。その為だけに私は今迄以上に努力した。伴侶になることは叶わなくても、クウの側で守れることができれば、彼の優しい笑顔を見ることができれば、私は満足だった。クウにはフェリシアン殿下がいるからと、油断していたのだ。
「オーバン様。落ち着いて聞いてください。クウ様が、消えてしまいました」
「え?」
目の前が真っ暗になった気がした。ボーモンの話によると、フェリシアン殿下は後から来た聖女様を選び、クウを捨てたと言う。
「噂では、フェリシアン殿下に構ってほしくて問題ばかり起こしていた、と、聖女様に意地悪をして殿下に捨てられた、と」
「なん、だ? その、理由は……」
パーティーからまだ半年も経っていない。それなのに、殿下はクウを捨てたのか? どうして? なんで、捨てたんだ? クウは、とても優しい人なのに。周囲から疎まれていた私にも優しくしてくれたのに。クウが問題ばかり起こした? 聖女様に意地悪をした?
「噂の真偽は分かりません。ですが、フェリシアン殿下は、その噂を信じて……」
裏切られた気分だ。フォンテーヌ公爵家を継ぐならば、フェリシアン殿下とも信頼関係を築かなければならないと考えていたのに。殿下なら、クウを幸せにしてくれると信じていたのに! こんなことになるなら、クウと出会ったあの時、小さな手を離さなければよかった! あのまま、クウを攫ってしまえばよかった!
「はは。なんで、こうなるんだ?」
「オーバン様」
「どうして、みんな、居なくなるんだ? 俺の大切な人は、みんな、みんな、俺の前から居なくなる! 誰かに奪われる! お父様も、お母様も、クウも! どうして……」
両手で顔を覆う。ぼたぼたと涙が床に零れ落ちて、水たまりが広がった。泣いても泣いても涙が止まらない。嘆いていても現実は変わらない。クウはもう、何処にも居ないのだから。
「オーバン様。クウ様は亡くなった訳ではございません。女神様のところに戻り、再び転生する準備期間に入ったのです」
「え?」
「伴侶に捨てられる事例は今回が初めてですが、クウ様は再び転生します。この国ではない、別の国に」
「本当、か?」
「はい。きっと、また会えます。クウ様は優しい方ですので、直ぐに新しい伴侶が見付かりますよ」
「……私ではダメなのか?」
「神子様と聖女様を伴侶にできるのは、召喚された国の者でなければなりません。法律でそう決まっているのです」
「…………」
クウはまたこの世界に転生する。それはとても嬉しいことだ。またクウと出会えるのだから。次にクウが転生したら、私が彼の伴侶になりたい。それなのに、その資格すらないなんて。新しい伴侶と幸せになってほしいと願わなければならないのに、他の誰かがクウに触れるのかと思うとイライラする。
「クウ様の為にも、今自分にできることをしましょう。オーバン様」
「分かった」
クウともう一度会える。たとえ伴侶になれなかったとしても、他国の誰かに選ばれたとしても、私はクウの為にフォンテーヌ公爵家を継ぐ。剣の技を磨いて、クウを守る騎士になる。待っていてください。クウ。必ず、貴方の元へ向かいます。
「ボーモン。今日も剣術を教えてくれ」
「またですか? オーバン様」
「このままではダメだと気付いたんだ。私はクウの伴侶になれない。だから、私はクウを一番近くで守れる騎士になりたいんだ」
あの時、クウが声をかけてくれなければ、私は周囲の悪意に押し潰されていた。暗く冷たい地獄のような場所から救い出してくれたクウを守りたい。その為には力が必要だ。誰にも負けない力が。
「変わりましたね。オーバン様」
「今の私ではクウに相応しくない。クウを守る為には力と権力と金が必要だ。ボーモン、私はフォンテーヌ公爵家を継ぐ。お父様とお母様が愛した家を、歴史を、誇りを、私自身の手で必ず取り戻してみせる。付いて来てくれるか?」
「愚問ですな」
「ありがとう。ボーモン」
クウに相応しい人になりたい。その為だけに私は今迄以上に努力した。伴侶になることは叶わなくても、クウの側で守れることができれば、彼の優しい笑顔を見ることができれば、私は満足だった。クウにはフェリシアン殿下がいるからと、油断していたのだ。
「オーバン様。落ち着いて聞いてください。クウ様が、消えてしまいました」
「え?」
目の前が真っ暗になった気がした。ボーモンの話によると、フェリシアン殿下は後から来た聖女様を選び、クウを捨てたと言う。
「噂では、フェリシアン殿下に構ってほしくて問題ばかり起こしていた、と、聖女様に意地悪をして殿下に捨てられた、と」
「なん、だ? その、理由は……」
パーティーからまだ半年も経っていない。それなのに、殿下はクウを捨てたのか? どうして? なんで、捨てたんだ? クウは、とても優しい人なのに。周囲から疎まれていた私にも優しくしてくれたのに。クウが問題ばかり起こした? 聖女様に意地悪をした?
「噂の真偽は分かりません。ですが、フェリシアン殿下は、その噂を信じて……」
裏切られた気分だ。フォンテーヌ公爵家を継ぐならば、フェリシアン殿下とも信頼関係を築かなければならないと考えていたのに。殿下なら、クウを幸せにしてくれると信じていたのに! こんなことになるなら、クウと出会ったあの時、小さな手を離さなければよかった! あのまま、クウを攫ってしまえばよかった!
「はは。なんで、こうなるんだ?」
「オーバン様」
「どうして、みんな、居なくなるんだ? 俺の大切な人は、みんな、みんな、俺の前から居なくなる! 誰かに奪われる! お父様も、お母様も、クウも! どうして……」
両手で顔を覆う。ぼたぼたと涙が床に零れ落ちて、水たまりが広がった。泣いても泣いても涙が止まらない。嘆いていても現実は変わらない。クウはもう、何処にも居ないのだから。
「オーバン様。クウ様は亡くなった訳ではございません。女神様のところに戻り、再び転生する準備期間に入ったのです」
「え?」
「伴侶に捨てられる事例は今回が初めてですが、クウ様は再び転生します。この国ではない、別の国に」
「本当、か?」
「はい。きっと、また会えます。クウ様は優しい方ですので、直ぐに新しい伴侶が見付かりますよ」
「……私ではダメなのか?」
「神子様と聖女様を伴侶にできるのは、召喚された国の者でなければなりません。法律でそう決まっているのです」
「…………」
クウはまたこの世界に転生する。それはとても嬉しいことだ。またクウと出会えるのだから。次にクウが転生したら、私が彼の伴侶になりたい。それなのに、その資格すらないなんて。新しい伴侶と幸せになってほしいと願わなければならないのに、他の誰かがクウに触れるのかと思うとイライラする。
「クウ様の為にも、今自分にできることをしましょう。オーバン様」
「分かった」
クウともう一度会える。たとえ伴侶になれなかったとしても、他国の誰かに選ばれたとしても、私はクウの為にフォンテーヌ公爵家を継ぐ。剣の技を磨いて、クウを守る騎士になる。待っていてください。クウ。必ず、貴方の元へ向かいます。
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