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本編
家族2
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ケーキを堪能した後、逢珠真は氷雨と一緒にお風呂に入った。温泉旅館のような広い浴場で全身丁寧に洗い、髪も氷雨に洗ってもらう。しっかり洗ったのを確認して湯船に浸かる。逢珠真は氷雨の筋肉を間近で見ることができて、肩や腕に触れては「すごいです!」と喜んだ。お腹にも触れて「ぼくも、こうなりたいです!」と氷雨に告げる。
「そろそろ出ようか。のぼせたら大変だからね」
逢珠真をしっかりと抱いて立ち上がる。浴場の入り口に置いていたフェイスタオルで身体を拭いて脱衣所へ向かう。籠の中に入れているバスタオルで残った水気を拭き取り、二人ともパジャマに着替えた。
「逢珠真、おいで。髪を乾かしてあげる」
脱衣所に設置された鏡の前に逢珠真を座らせ、ドライヤーで髪を乾かしていく。柔らかな黒い髪が熱風で靡き、丁寧に櫛で梳く。
「つやつや」
「天使の輪っかができているね」
逢珠真の髪はさらつやで、天使の輪が輝いていた。お風呂上がりで頬も赤く染まっていて、ぷくっとした頬が可愛らしい。氷雨が「先にお部屋に戻ってもいいんだよ」と言ったが、逢珠真は首を横に振って「ひさめさんといっしょがいいです」と言って、中央のベンチにちょこんと座って氷雨が髪を乾かす姿を静かに眺めていた。
「きれい」
氷雨の髪は長く、腰の下あたりまで真っ直ぐ伸びている。普段は後頭部の中央で結んでいるが、髪を解いた氷雨を見ることができるのはお風呂の時だけで、逢珠真は髪を乾かす氷雨の姿を見るのが大好きだ。水気を含んだ髪が少しずつ乾いて、さらさらと風に靡く姿があまりにも美しくて、まるで御伽噺に出てくるお姫様のようだと逢珠真は内心思っていた。
「終わったよ。部屋に戻ろうか。逢珠真」
「はい。あ、あの、ひさめさん。き、きょうも、いっしょにねてくれますか?」
小さな手をもじもじさせながら、逢珠真はちらちらと氷雨を見上げながらお願いした。氷雨に抱きしめられて眠るととても安心するのだ。迷惑だったかな? 我儘を言っちゃいけなかったかな? と逢珠真が不安に思っていると、ふわっと抱き上げられる。
「いいよ。一緒に寝ようか。逢珠真」
氷雨は逢珠真が我儘を言っても怒らない。何時も「いいよ」と言ってお願いを聞いてくれる。綺麗で、格好よくて、優しくて、料理上手で、氷雨と家族になれて逢珠真は心から神様に感謝した。もう、これ以上の幸せは来ないかもしれないと逢珠真は少しだけ未来が怖くなる。大人になっても氷雨に溺愛される日々がずっと続くなんて、この時の逢珠真は思いもしなかった。
「おやすみなさい。ひさめさん」
「おやすみ。逢珠真」
二人でベッド入ると、ちゅ、とおでこにキスされて、逢珠真はぎゅっと氷雨に抱きついて深い眠りに就いた。これからもずっと、ひさめさんといっしょにいられますようにと、神様に祈りながら……
朝起きて洗面所へ向かう。顔を洗い、歯を磨き、トイレを済ませてリビングへ。ソファの上に用意されていた制服に着替え、逢珠真は椅子に座った。
「おはよう。逢珠真」
「おはようございます。ひさめさん」
朝食はふわふわのオムレツにこんがり焼かれたベーコン。焼きたてのパンとサラダ。飲み物はホットココア。氷雨も座って、二人で手を合わせて「いただきます」と告げる。
「朝はパンでよかった? 和食がいいなら何時でも言ってね」
「ひさめさんがつくるおりょうり、ぜんぶおいしいです」
「ふふ。ありがとう」
美味しい朝食を食べ終えて食器を片付ける。逢珠真はリビングに戻ってランドセルの中を確認する。忘れ物はない。カチッときちんと錠前を閉じてランドセルを背負う。黄色い帽子を被り準備万端。
「お待たせ。逢珠真」
「ひさめさ……」
準備が整った氷雨がリビングに入ってきて、逢珠真は息を呑んだ。濃紺のスーツ姿の氷雨は何倍も格好よくて、そして美しかった。「行こうか」と手を差し出され、逢珠真はドキッとしつつ慌てて氷雨の手を握る。車に乗って移動している間も、逢珠真はずっとドキドキしていた。車を運転する氷雨も格好よくて、時々チラッと腕時計で時間を確認する姿は女の子が「キャー!」と歓声を上げそうになるくらい美しかった。
「今日は俺も挨拶するからね」
「はい」
「霧島先生には事前にお話ししているから、緊張しなくて大丈夫だよ」
「ん」
一番近い駐車場に車を停め、氷雨と共に小学校へと向かう。正門の前で氷雨が今日の予定を簡単に説明し、逢珠真の手を引いて校舎の中へ足を踏み入れる。氷雨が一緒に挨拶をしてくれるから怖くない。一週間ぶりの学校だが、逢珠真の足取りは軽く、氷雨の手をぎゅっと握りしめて「ひさめさん。ぼくはだいじょうぶです」と告げてニコッと笑ってみせた。
ひさめさんといっしょなら、なにもこわくない!
「そろそろ出ようか。のぼせたら大変だからね」
逢珠真をしっかりと抱いて立ち上がる。浴場の入り口に置いていたフェイスタオルで身体を拭いて脱衣所へ向かう。籠の中に入れているバスタオルで残った水気を拭き取り、二人ともパジャマに着替えた。
「逢珠真、おいで。髪を乾かしてあげる」
脱衣所に設置された鏡の前に逢珠真を座らせ、ドライヤーで髪を乾かしていく。柔らかな黒い髪が熱風で靡き、丁寧に櫛で梳く。
「つやつや」
「天使の輪っかができているね」
逢珠真の髪はさらつやで、天使の輪が輝いていた。お風呂上がりで頬も赤く染まっていて、ぷくっとした頬が可愛らしい。氷雨が「先にお部屋に戻ってもいいんだよ」と言ったが、逢珠真は首を横に振って「ひさめさんといっしょがいいです」と言って、中央のベンチにちょこんと座って氷雨が髪を乾かす姿を静かに眺めていた。
「きれい」
氷雨の髪は長く、腰の下あたりまで真っ直ぐ伸びている。普段は後頭部の中央で結んでいるが、髪を解いた氷雨を見ることができるのはお風呂の時だけで、逢珠真は髪を乾かす氷雨の姿を見るのが大好きだ。水気を含んだ髪が少しずつ乾いて、さらさらと風に靡く姿があまりにも美しくて、まるで御伽噺に出てくるお姫様のようだと逢珠真は内心思っていた。
「終わったよ。部屋に戻ろうか。逢珠真」
「はい。あ、あの、ひさめさん。き、きょうも、いっしょにねてくれますか?」
小さな手をもじもじさせながら、逢珠真はちらちらと氷雨を見上げながらお願いした。氷雨に抱きしめられて眠るととても安心するのだ。迷惑だったかな? 我儘を言っちゃいけなかったかな? と逢珠真が不安に思っていると、ふわっと抱き上げられる。
「いいよ。一緒に寝ようか。逢珠真」
氷雨は逢珠真が我儘を言っても怒らない。何時も「いいよ」と言ってお願いを聞いてくれる。綺麗で、格好よくて、優しくて、料理上手で、氷雨と家族になれて逢珠真は心から神様に感謝した。もう、これ以上の幸せは来ないかもしれないと逢珠真は少しだけ未来が怖くなる。大人になっても氷雨に溺愛される日々がずっと続くなんて、この時の逢珠真は思いもしなかった。
「おやすみなさい。ひさめさん」
「おやすみ。逢珠真」
二人でベッド入ると、ちゅ、とおでこにキスされて、逢珠真はぎゅっと氷雨に抱きついて深い眠りに就いた。これからもずっと、ひさめさんといっしょにいられますようにと、神様に祈りながら……
朝起きて洗面所へ向かう。顔を洗い、歯を磨き、トイレを済ませてリビングへ。ソファの上に用意されていた制服に着替え、逢珠真は椅子に座った。
「おはよう。逢珠真」
「おはようございます。ひさめさん」
朝食はふわふわのオムレツにこんがり焼かれたベーコン。焼きたてのパンとサラダ。飲み物はホットココア。氷雨も座って、二人で手を合わせて「いただきます」と告げる。
「朝はパンでよかった? 和食がいいなら何時でも言ってね」
「ひさめさんがつくるおりょうり、ぜんぶおいしいです」
「ふふ。ありがとう」
美味しい朝食を食べ終えて食器を片付ける。逢珠真はリビングに戻ってランドセルの中を確認する。忘れ物はない。カチッときちんと錠前を閉じてランドセルを背負う。黄色い帽子を被り準備万端。
「お待たせ。逢珠真」
「ひさめさ……」
準備が整った氷雨がリビングに入ってきて、逢珠真は息を呑んだ。濃紺のスーツ姿の氷雨は何倍も格好よくて、そして美しかった。「行こうか」と手を差し出され、逢珠真はドキッとしつつ慌てて氷雨の手を握る。車に乗って移動している間も、逢珠真はずっとドキドキしていた。車を運転する氷雨も格好よくて、時々チラッと腕時計で時間を確認する姿は女の子が「キャー!」と歓声を上げそうになるくらい美しかった。
「今日は俺も挨拶するからね」
「はい」
「霧島先生には事前にお話ししているから、緊張しなくて大丈夫だよ」
「ん」
一番近い駐車場に車を停め、氷雨と共に小学校へと向かう。正門の前で氷雨が今日の予定を簡単に説明し、逢珠真の手を引いて校舎の中へ足を踏み入れる。氷雨が一緒に挨拶をしてくれるから怖くない。一週間ぶりの学校だが、逢珠真の足取りは軽く、氷雨の手をぎゅっと握りしめて「ひさめさん。ぼくはだいじょうぶです」と告げてニコッと笑ってみせた。
ひさめさんといっしょなら、なにもこわくない!
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