捨てられた子が龍の化身に溺愛されるまで《完結》

トキ

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本編

迷子と旅行2

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 乗り場へ向かう途中で念の為トイレを済ませ、コインロッカーからスーツケースを取り出した後、三人は改札口を通って新幹線乗り場までやって来た。乗り場には多くの人が並んでおり、逢珠真達も最後尾に並ぶ。するとアナウンスが流れ、新幹線が駅に到着した。

「か、かっこいい!」
「駅で新幹線を見るのは初めてか?」
「はい」
「乗るのも初めてなんだね」
「はじめて、です」

 ブシュ、と扉が開いて並んでいた人達が新幹線に乗車してく。逢珠真も二人と手を繋いで中へ入り、自分達が座る座席の番号を確認する。窓際の席に逢珠真、隣に文也、通路を挟んだ席に裕人。文也がお店側に連絡しているので、何時でも逢珠真に伝えられるようにとこの順番で座ったのだ。逢珠真は初めての新幹線だから、外の景色を楽しんでもらいたくて二人は彼を窓際に座らせた。

「文也。連絡来た?」
「いや。電話もしてみたんだけど、繋がらなくてさ。次の乗り換えの時にまた確認してみる」

 裕人が窓口で切符を買っている間に、文也が雨之神に電話をかけたが繋がらなかった。時間を置いて何度か試してみたが、結果は同じ。もしかしたら、親御さん達も突然我が子が行方不明になってあちこち探し回っているのかもしれない。公園でぽつんと座り込んでいたから、最初は虐待も疑ったが逢珠真はお家に帰れることを心から喜んでいた。

「事件に巻き込まれたのかな?」
「誘拐も考えられるが、放置するのは不自然だよな?」

 迷子と言えば迷子だが、逢珠真の家は物凄く遠い。一人で此処まで来たとは考えられないし、保護者の姿も見当たらなかった。謎は深まるばかりだが、動き出した窓の景色を見て純粋に喜んでいる逢珠真を見ると、二人とも「ま、いいか」となってしまう。事情ならこの子の家族に直接聞けばいい。そう考えて、二人は表情がころころと変わる逢珠真を見てクスッと笑った。

 逢珠真は新幹線の速さに驚き、文也と裕人に「とてもはやいです! すごいです!」と小さな声で伝えた。他の乗客の迷惑にならないよう心掛ける逢珠真に感心し、文也は彼の頭を優しく撫でる。

「育ちの良さが伺える」
「自慢のお子さんだろうな」

 座席にきちんと座って窓を眺める逢珠真を見て、二人はそんな感想を抱いた。常日頃、両親から言われているのか、両親の姿を真似しているだけなのか。どちらにしても逢珠真は年齢の割に落ち着いている。高層ビルが建ち並ぶ市街や田畑が広がる田舎の風景、海辺、夕日が沈む景色を眺める度に逢珠真は二人に報告し、日が沈みきると流石に疲れが出たのか眠ってしまった。

「寝ちゃったね」
「次、乗り換えな。起こすのは可哀想だから、交代で抱っこかおんぶして移動するか」
「それがいいね」

 駅に到着し、二人は新幹線を降りた。逢珠真は裕人がおんぶして、次の新幹線乗り場へ移動する。乗り場まで来ると、文也は端末を確認して「うわ」と小さな悲鳴を上げた。

「どうした?」
「不在着信、50件超えてる」
「本当だ。お店の人?」
「お店の番号だな。掛け直してみる」

 文也が不在着信の番号と雨之神の電話番号が一致していることを確認して発信ボタンをタップする。すると電話は直ぐに繋がった。

『逢珠真くん! 無事ですか!? 今何処ですか!? 何故東北に!? まさか、誘拐!?』

 電話が繋がった瞬間、スピーカーにしていないにも関わらず男性の声はなかり響いていた。隣で聞いていた裕人にも聞こえるくらいの声量で、どれだけ大きな声で話しているのかが分かる。

「落ち着いてください。えっと、あすまくん? のお父さんで合ってますか?」
『お父さんではありませんが、私も実質逢珠真くんのパパです!』
「いや、どっちだよ」

 通話で聞こえる声に、裕人が冷静にツッコミを入れる。このままでは話が進まないと、文也は今迄の出来事を通話相手に説明した。

「んん」
「あ、起きた?」
「ナイスタイミング! あすま、くん? 時雨さんって人、知ってる?」
「しぐれさん!?」

 時雨の名前を出した途端、逢珠真はバッと顔を上げて文也を見た。知り合いで合っているようだ。文也が時雨に逢珠真が起きたことを説明し、端末を彼の耳に近付けた。

『逢珠真くん!?』
「しぐれさん! えっと、あの……」
『大丈夫です。嶋さんから事情は聞きましたから。逢珠真くんが無事で本当によかった』
「あの、ひさめさん、は?」
『今も逢珠真くんを探しています。私から見付かったと連絡しておきますから、逢珠真くんはお兄さん達と一緒に無事に帰って来てくださいね』
「はい。しんぱいをかけて、ごめんなさい」
『謝らないでください。逢珠真くんは何も悪くないのですから。優しい人に巡り会えて、本当に良かったですね』
「うん」
『それじゃあ、逢珠真くん、嶋さんに代わってもらってもいいですか?』
「わかりました」

 話が終わると逢珠真は文也に「もう、だいじょうぶです」と伝えた。文也は時雨に今が何処の駅で、目的地に到着するのが何時になるかを説明した。まだ数回乗り換える必要があり、その都度写真を撮って送ると伝えると時雨は逢珠真の保護者である氷雨の連絡先を教え、そちらにも送ってほしいと依頼する。

「分かりました。では一旦切りますね。直ぐに写真を撮って送りますから、確認をお願いします」
『本当に、ありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいか』
「お気になさらず。では」

 無事に保護者と連絡が取れて二人は安堵の息を零す。時雨の慌てぶりを見ると、逢珠真は家族からとても大切にされていることが分かる。

「あちこち探し回ってて繋がらなかったんだな」
「良かった。間違ってるかもってずっと不安だったもん」
「行き先間違ってたら本当笑えねえよ。交通費だけでどれだけ飛んだことか」
「ははは。確かに」
「まあ、終わりよければすべてよし! という訳で、写真撮るから其処に立ってくれ」
「あいよ」
「わ」

 カシャ、と端末から音がして、文也が素早く時雨から教えてもらった連絡先に画像とメッセージを送る。時雨から説明してくれるので、誘拐犯に間違われることはないだろう。メッセージを送った後、アナウンスが流れ新幹線が停車する。何処行きかをもう一度確認し、三人は新幹線に乗車した。
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