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本編
虚妄4
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夜の七時三十分。投稿者が指定した時刻通りに桜子は公園へ一人でやって来た。夜の公園は明かりが少なく、人通りもない。若い女性一人で歩くには物騒だが、桜子は怯えることなく息子の画像を公開すると宣言した男達を見据えた。
「すげえ! 本物の桜子だ! 近くで見ると本当にいい女だな!」
「櫂飛! 不躾に触るな! 桜子は俺の伴侶なんだぞ!」
「摘み食いしてもいいですよね? 政典さん」
「俺が隅々まで堪能した後ならな」
「やった!」
初対面にも関わらず、男達は桜子の全身を舐めるように眺め、いやらしい笑みを浮かべている。事前に調査して二人のことは知っているが、こんなにも醜悪な人間が存在するのかと逆に感心してしまう。
「桜子。五億はどうした? 息子の為に用意するんじゃなかったのか?」
「貴方達はバカなのかしら?」
「なんだと?」
「五億なんて大金、直ぐに用意できる訳ないじゃない。少し考えれば分かることでしょう? 画像を削除する為に五億も用意する人が本当にいると思う?」
「用意してねえのかよ! だったらお前が身体を売って稼ぐしかねえな!」
「そんなことをせずとも、直ぐに用意できるだろう? お前の兄に助けを求めればな?」
「雨之神を売れと脅すつもり? 無駄なことね。経営者が貴方達に変わった時点で誰も相手にしなくなるわ」
「お前は伴侶だろ! 大人しく従え! 俺は化身なんだぞ!」
「貴方が化身ですって? それはなんの冗談かしら? 細木政典さん」
桜子が鼻で笑う。政典は本気で自分は化身で、桜子が伴侶だと思い込んでいた。本物の化身の前で自分は化身だと言い張る度胸だけは認めるが、それ以外はバカとしか言いようがない。
「俺達をバカにしてんのか?」
「働きもせず居候している貴方を尊敬する人が存在するならこの目で見てみたいわ。ファンなんて一人もいないでしょう? 自称ミュージシャンの西山櫂飛さん?」
二人は顔を醜く歪ませて桜子を睨み付けた。桜子が自分達のことを調べていたと悟り、櫂飛が端末を取り出して「息子の画像を公開してやる!」と大声で叫び、SNSに画像を投稿した。しかし、桜子は慌てた様子もなく、二人に縋り付くこともなく、最初から最後まで落ち着いていた。
「あら? おかしいわね。画像が真っ黒よ?」
「は?」
「な! どういうことだ! これは!」
「そんな! 確かにあの画像を投稿したのに!」
「貴方、化身なんでしょう? 投稿できない理由くらい分かるわよね?」
化身であれば誰もが知っている常識。何度も言うが、化身は伴侶へ対する独占欲や執着心が凄まじく、伴侶の情報は一切漏れないよう徹底的に管理されている。それは化身も同様に、面白半分で化身と伴侶の画像をSNSや動画サイトに投稿しても最初から投稿できないか、真っ黒な画像が添付されるだけ。世間に公表しなければ撮影しても問題はないのだが、そのことを政典は知らないようだ。
「理由?」
「本当に分からないみたいね。化身なのに」
クスッと小馬鹿にしたように笑い、桜子は本物の化身と伴侶がどんな存在なのか、バカな二人でも分かるよう丁寧に説明した。化身とは神の寵愛を最も受けた存在で、伴侶は化身の魂の半身とも言える愛しい存在。故に、化身の愛は全て己の伴侶のみに注がれ、二人のように伴侶を共有する化身など1人も居ないのだと。更に言うと化身は美麗な姿をしており、一般人よりも優れた身体能力と才能を持ち合わせている。
化身が築き上げた功績や影響力は凄まじく、注目の的になるのが嫌で彼らは化身であることを徹底的に隠し、自ら吹聴することも絶対にしない。周囲に知られたら欲に塗れた輩に絡まれて色々と面倒だからだ。それに加え、愛しい伴侶にまでその被害が及ぶ可能性も高くなる。だから、政典のように「俺は化身だ!」と名乗るのは周りに「どうぞ襲撃してください」と言っているのと同じで、自らを危険に晒す愚行でしかない。きちんと説明した上で、桜子はもう一度政典に質問した。「貴方、本当に化身なの?」と。
「すげえ! 本物の桜子だ! 近くで見ると本当にいい女だな!」
「櫂飛! 不躾に触るな! 桜子は俺の伴侶なんだぞ!」
「摘み食いしてもいいですよね? 政典さん」
「俺が隅々まで堪能した後ならな」
「やった!」
初対面にも関わらず、男達は桜子の全身を舐めるように眺め、いやらしい笑みを浮かべている。事前に調査して二人のことは知っているが、こんなにも醜悪な人間が存在するのかと逆に感心してしまう。
「桜子。五億はどうした? 息子の為に用意するんじゃなかったのか?」
「貴方達はバカなのかしら?」
「なんだと?」
「五億なんて大金、直ぐに用意できる訳ないじゃない。少し考えれば分かることでしょう? 画像を削除する為に五億も用意する人が本当にいると思う?」
「用意してねえのかよ! だったらお前が身体を売って稼ぐしかねえな!」
「そんなことをせずとも、直ぐに用意できるだろう? お前の兄に助けを求めればな?」
「雨之神を売れと脅すつもり? 無駄なことね。経営者が貴方達に変わった時点で誰も相手にしなくなるわ」
「お前は伴侶だろ! 大人しく従え! 俺は化身なんだぞ!」
「貴方が化身ですって? それはなんの冗談かしら? 細木政典さん」
桜子が鼻で笑う。政典は本気で自分は化身で、桜子が伴侶だと思い込んでいた。本物の化身の前で自分は化身だと言い張る度胸だけは認めるが、それ以外はバカとしか言いようがない。
「俺達をバカにしてんのか?」
「働きもせず居候している貴方を尊敬する人が存在するならこの目で見てみたいわ。ファンなんて一人もいないでしょう? 自称ミュージシャンの西山櫂飛さん?」
二人は顔を醜く歪ませて桜子を睨み付けた。桜子が自分達のことを調べていたと悟り、櫂飛が端末を取り出して「息子の画像を公開してやる!」と大声で叫び、SNSに画像を投稿した。しかし、桜子は慌てた様子もなく、二人に縋り付くこともなく、最初から最後まで落ち着いていた。
「あら? おかしいわね。画像が真っ黒よ?」
「は?」
「な! どういうことだ! これは!」
「そんな! 確かにあの画像を投稿したのに!」
「貴方、化身なんでしょう? 投稿できない理由くらい分かるわよね?」
化身であれば誰もが知っている常識。何度も言うが、化身は伴侶へ対する独占欲や執着心が凄まじく、伴侶の情報は一切漏れないよう徹底的に管理されている。それは化身も同様に、面白半分で化身と伴侶の画像をSNSや動画サイトに投稿しても最初から投稿できないか、真っ黒な画像が添付されるだけ。世間に公表しなければ撮影しても問題はないのだが、そのことを政典は知らないようだ。
「理由?」
「本当に分からないみたいね。化身なのに」
クスッと小馬鹿にしたように笑い、桜子は本物の化身と伴侶がどんな存在なのか、バカな二人でも分かるよう丁寧に説明した。化身とは神の寵愛を最も受けた存在で、伴侶は化身の魂の半身とも言える愛しい存在。故に、化身の愛は全て己の伴侶のみに注がれ、二人のように伴侶を共有する化身など1人も居ないのだと。更に言うと化身は美麗な姿をしており、一般人よりも優れた身体能力と才能を持ち合わせている。
化身が築き上げた功績や影響力は凄まじく、注目の的になるのが嫌で彼らは化身であることを徹底的に隠し、自ら吹聴することも絶対にしない。周囲に知られたら欲に塗れた輩に絡まれて色々と面倒だからだ。それに加え、愛しい伴侶にまでその被害が及ぶ可能性も高くなる。だから、政典のように「俺は化身だ!」と名乗るのは周りに「どうぞ襲撃してください」と言っているのと同じで、自らを危険に晒す愚行でしかない。きちんと説明した上で、桜子はもう一度政典に質問した。「貴方、本当に化身なの?」と。
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