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第5章
話の真相
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カイリがシンジュを愛しているなら、何故シンジュは泣き崩れているのか。故郷の海に帰れる筈なのに、どうして「帰りたくない」と言うのか。
今も尚、「リベルさま」と弟の名を呼び、涙を流すシンジュの姿はとても痛々しい。やっと、両想いになれたと言うのに、今度こそ結ばれる恋だと思っていたのに、シンジュはまた泣いている。
あの頃に戻ったみたいだ。リベルテが初めてシンジュを連れて帰って来た頃に。何かに怯え、静かに涙を流していた頃に。過去を思い出し、ユリウスは静かに目を閉じた。
シンジュを救えるのは、リベルテだけだ。リベルテ以外の者が何を言おうと、守ろうとしても、シンジュは心から笑う事は無いだろう。分かっているからこそ、ユリウスは何も出来ない自分が悔しくて仕方なかった。
そんな時、コンコンと扉を叩く音がして、ユリウスはゆっくりと扉の前へ向かう。そっと扉を開くと、其処にはリベルテが立っていた。
「兄上、シンジュが……」
リベルテは途中で言葉を詰まらせた。ユリウスの部屋の隅で、小さく蹲り泣き続けるシンジュの姿を見てしまったからだ。リベルテが慌ててシンジュに駆け寄ろうとしたが、ユリウスが彼の腕を掴んだ。
「話がある。シンジュは夕が見ているから大丈夫だ」
「っ」
リベルテの腕を掴んだまま、ユリウスは夕に「出掛けてくる」と伝えると、足早に部屋から出て行った。狼狽えるリベルテの腕を引っ張り、ユリウスは広い廊下を無言で歩き続けた。
ユリウスが向かったのは鍛錬場だった。目的の場所に着くと、ユリウスはリベルテの腕を離し、振り向いた。
「本気なのか?」
「何が?」
「シンジュとカイリの事だ」
ユリウスはリベルテに聞いた。シンジュをカイリに託すつもりなのか。シンジュを海に帰すつもりなのか。
「シンジュを、諦めるのか? 本当に、海に帰すのか?」
「…………」
リベルテは何も答えなかった。ユリウスから視線を逸らし、複雑な表情をしている。何も答えないリベルテに、ユリウスはもう一度聞いた。「カイリに託すのか」と。
「聞いて、いたのか?」
「シンジュが聞いたそうだ。お前と、カイリの話を……」
「そう、か……」
だから、シンジュは……
小さく呟くリベルテに、ユリウスは「本気か?」と聞くが、リベルテは黙ったままだった。暫く黙った後、リベルテはユリウスの目を見て、ユリウスの疑問に答えた。
「確かに俺は、彼奴に『シンジュを頼む』と言った」と。
ユリウスはリベルテが何を言っているのか理解できなかった。何度も「それは本心か?」と問い詰めると、リベルテは真剣な顔をしてコクリと頷いた。
「シンジュが聞いていたのは予想外だったけど、俺がどれだけ本気かは伝わっただろう」
「何を言っている?」
「そのままの意味だ。シンジュは人魚だ。それなら、同じ人魚であるカイリと結ばれた方が、シンジュは幸せになれるんじゃないかと思った。だから……」
「託すのか? 俺に懇願してまで取り戻したシンジュを、一度は失った最愛の恋人を、お前は簡単に手放すのか?」
「兄上? 何言ってんだ? それじゃあまるで、俺がシンジュを誰かに託すみたいな」
「お前が言ったんだろ!」
リベルテが何を言いたいのか分からない。シンジュが命を落とした後も、ずっとシンジュを想い続けていたにも関わらず、リベルテは同じ人魚だからと言う理由でカイリに託そうとしている。
お前がシンジュを護るんじゃなかったのか?
何の為に、神子の守り人になったんだ?
シンジュの気持ちはどうなる?
お前と同じように、シンジュもずっとお前の事を想い続けていたのに……
「お前の覚悟は、その程度のものだったのか?」
「あ、兄上? お、怒ってるのか? 覚悟って、何の覚悟だ?」
「この、大馬鹿者!」
「い!?」
耐え切れなくなったユリウスは、リベルテの頬を引っ叩いた。沢山の人達の協力を得て、シンジュを蘇らせたと言うのに、やっと両思いになれたと言うのに、リベルテはカイリに託すと言う。その事をユリウスが問い詰めると、意味が分からないと言った表情をして、ユリウスに聞き直した。その態度に、ユリウスの怒りが爆発した。
「シンジュを護るのはお前だろ! 赤の他人同然の奴にっ、簡単に渡すなんて言うな!」
「はぁ!? 俺が何時そんな事を言ったんだよ! 確かに最初は言ったけど」
「シンジュの想いは無視するのか! こんな重要な話を、どうしてシンジュに教えなかった!」
「俺が何時シンジュの思いを無視したんだよ! やっと取り戻したんだぞ! 俺がシンジュを手放す訳ねぇだろ!」
「ならどうして託す何て言った!」
「言ったけど! それは彼奴の本心を見抜く為に態と言っただけだ! 彼奴が、本当に心からシンジュを愛しているなら、シンジュを絶対に幸せにするって言うなら、考えたかもしれない」
「どう言う事だ?」
「どうもこうも、兄上、シンジュから話を聞いてるんだよな?」
「あぁ。お前がカイリにシンジュを託そうとしているとな。そのせいでシンジュはずっと落ち込んだままだ」
「えっと、その後は、聞いてないのか?」
「後? まだ続きがあるのか?」
ユリウスがリベルテに聞くと、リベルテは一人納得したのか、「そう言う事か」と言って頭に手を置いた。「兄上が怒る訳だ」と言って深いため息を吐く。
「最初に言っておくが、俺はシンジュを手放すつもりは無いぜ」
ユリウスの目を見て、リベルテははっきりと告げた。
今も尚、「リベルさま」と弟の名を呼び、涙を流すシンジュの姿はとても痛々しい。やっと、両想いになれたと言うのに、今度こそ結ばれる恋だと思っていたのに、シンジュはまた泣いている。
あの頃に戻ったみたいだ。リベルテが初めてシンジュを連れて帰って来た頃に。何かに怯え、静かに涙を流していた頃に。過去を思い出し、ユリウスは静かに目を閉じた。
シンジュを救えるのは、リベルテだけだ。リベルテ以外の者が何を言おうと、守ろうとしても、シンジュは心から笑う事は無いだろう。分かっているからこそ、ユリウスは何も出来ない自分が悔しくて仕方なかった。
そんな時、コンコンと扉を叩く音がして、ユリウスはゆっくりと扉の前へ向かう。そっと扉を開くと、其処にはリベルテが立っていた。
「兄上、シンジュが……」
リベルテは途中で言葉を詰まらせた。ユリウスの部屋の隅で、小さく蹲り泣き続けるシンジュの姿を見てしまったからだ。リベルテが慌ててシンジュに駆け寄ろうとしたが、ユリウスが彼の腕を掴んだ。
「話がある。シンジュは夕が見ているから大丈夫だ」
「っ」
リベルテの腕を掴んだまま、ユリウスは夕に「出掛けてくる」と伝えると、足早に部屋から出て行った。狼狽えるリベルテの腕を引っ張り、ユリウスは広い廊下を無言で歩き続けた。
ユリウスが向かったのは鍛錬場だった。目的の場所に着くと、ユリウスはリベルテの腕を離し、振り向いた。
「本気なのか?」
「何が?」
「シンジュとカイリの事だ」
ユリウスはリベルテに聞いた。シンジュをカイリに託すつもりなのか。シンジュを海に帰すつもりなのか。
「シンジュを、諦めるのか? 本当に、海に帰すのか?」
「…………」
リベルテは何も答えなかった。ユリウスから視線を逸らし、複雑な表情をしている。何も答えないリベルテに、ユリウスはもう一度聞いた。「カイリに託すのか」と。
「聞いて、いたのか?」
「シンジュが聞いたそうだ。お前と、カイリの話を……」
「そう、か……」
だから、シンジュは……
小さく呟くリベルテに、ユリウスは「本気か?」と聞くが、リベルテは黙ったままだった。暫く黙った後、リベルテはユリウスの目を見て、ユリウスの疑問に答えた。
「確かに俺は、彼奴に『シンジュを頼む』と言った」と。
ユリウスはリベルテが何を言っているのか理解できなかった。何度も「それは本心か?」と問い詰めると、リベルテは真剣な顔をしてコクリと頷いた。
「シンジュが聞いていたのは予想外だったけど、俺がどれだけ本気かは伝わっただろう」
「何を言っている?」
「そのままの意味だ。シンジュは人魚だ。それなら、同じ人魚であるカイリと結ばれた方が、シンジュは幸せになれるんじゃないかと思った。だから……」
「託すのか? 俺に懇願してまで取り戻したシンジュを、一度は失った最愛の恋人を、お前は簡単に手放すのか?」
「兄上? 何言ってんだ? それじゃあまるで、俺がシンジュを誰かに託すみたいな」
「お前が言ったんだろ!」
リベルテが何を言いたいのか分からない。シンジュが命を落とした後も、ずっとシンジュを想い続けていたにも関わらず、リベルテは同じ人魚だからと言う理由でカイリに託そうとしている。
お前がシンジュを護るんじゃなかったのか?
何の為に、神子の守り人になったんだ?
シンジュの気持ちはどうなる?
お前と同じように、シンジュもずっとお前の事を想い続けていたのに……
「お前の覚悟は、その程度のものだったのか?」
「あ、兄上? お、怒ってるのか? 覚悟って、何の覚悟だ?」
「この、大馬鹿者!」
「い!?」
耐え切れなくなったユリウスは、リベルテの頬を引っ叩いた。沢山の人達の協力を得て、シンジュを蘇らせたと言うのに、やっと両思いになれたと言うのに、リベルテはカイリに託すと言う。その事をユリウスが問い詰めると、意味が分からないと言った表情をして、ユリウスに聞き直した。その態度に、ユリウスの怒りが爆発した。
「シンジュを護るのはお前だろ! 赤の他人同然の奴にっ、簡単に渡すなんて言うな!」
「はぁ!? 俺が何時そんな事を言ったんだよ! 確かに最初は言ったけど」
「シンジュの想いは無視するのか! こんな重要な話を、どうしてシンジュに教えなかった!」
「俺が何時シンジュの思いを無視したんだよ! やっと取り戻したんだぞ! 俺がシンジュを手放す訳ねぇだろ!」
「ならどうして託す何て言った!」
「言ったけど! それは彼奴の本心を見抜く為に態と言っただけだ! 彼奴が、本当に心からシンジュを愛しているなら、シンジュを絶対に幸せにするって言うなら、考えたかもしれない」
「どう言う事だ?」
「どうもこうも、兄上、シンジュから話を聞いてるんだよな?」
「あぁ。お前がカイリにシンジュを託そうとしているとな。そのせいでシンジュはずっと落ち込んだままだ」
「えっと、その後は、聞いてないのか?」
「後? まだ続きがあるのか?」
ユリウスがリベルテに聞くと、リベルテは一人納得したのか、「そう言う事か」と言って頭に手を置いた。「兄上が怒る訳だ」と言って深いため息を吐く。
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ユリウスの目を見て、リベルテははっきりと告げた。
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