幻想美男子蒐集鑑~夢幻月華の書~

紗吽猫

文字の大きさ
12 / 75

都市伝説 幻想図書館 解①-1

しおりを挟む


   二人は扉の先で足を止めた。コツン…コツン…と床に音が響く館内。結晶と豪邸のような内装が混ざりあった壁。館の中央が吹き抜けになっており、壁に埋め込まれた天井まで伸びる本棚と床に人の背よりも高く積み上げられた本の山。ひと目で図書館だとわかるが、どう見ても誰かが本を読みに来るような環境ではない。なにせ足の踏み場がないのだから。
   おかしな点で言えば、その本棚も所々に絵画が埋め込まれている。しかもその絵画はゆっくりと絵が切り替わっていく。
   館内に灯りはなく、吹き抜けの天井から後光のように差し込む月明かりで照らされているだけだった。だが、そのおかげか、結晶の壁や本棚の結晶部分がきらきらと輝きを放ち、幻想的な雰囲気を作り出している。

「ここが…幻想図書館の中…」

   見上げるほどに高い天井。宮殿の書架の様でもある。
   静かな館内には声がよく響く。これだけ足元すら埋め尽くすほどの本の山があるというのに音が響くのはこの結晶達の影響だろうか。
   きょろきょろと周囲を見渡し眺めているオルメカの横で、ソロモンが呟いた。

「…ここに入っていった魂の欠片は何処に消えた…?」

   その声は小さいものだったが、音がよく響く館内であれば聞き逃すほどでもない。オルメカはその声を聞いて彼の方に振り向いた。
   その横顔は月明かり程の灯りということもあり表情は上手く読み取れなかったが、彼の金色の髪と左側の耳の後ろにつけていた七色の羽根の形の髪飾りがきらきらと輝いている。
…やっぱりキレーだなー…。美男子はこの世の宝だよ…。

   思わず横顔に見とれてしまう。なんだかんだ幻想的な空間に美男子…。絵画もんだとオルメカはうんうん頷いている。が、冷たい視線に気づいて苦笑いで誤魔化す。
   いやいや、この流れ何回目だ自分。

   話を戻そう。

「そうだよね、魂の欠片?が入っていったはずなのに…」

   見渡してもそれらしきものが見当たらない。あるのは本ばかりだ。
   二人がもう一歩、館内に歩み出した時、初めて聞く少年の声が聞こえた。

「いらっしゃい。ようこそ、夢幻の世界へ」





   声は館内に響く。反響し、何処から聞こえてきたのか、正確な位置はわからない。ソロモンとオルメカは少し身構えながら辺りの様子をうかがう。別段変な所は見つからない。ならば、と部屋の中央に積み上げられた本の山を見る。人が隠れているならこの山の向こうだろう。そう思い、じりじりと本の山に近づく。そんな二人が中央の本の山が目の前に来た時、また声が聞こえてきた。

「…あれ?貴方は誰ですか?」

   声が聞こえた方を見る。今度はすぐ近くに聞こえた。そう、本の山…その上からだ。そう思考が辿り着いたオルメカはバッと本の山、その一番上を見上げる。

「…男…の子…?」

   積み上げられた本の山の上。こちらを覗き込むように少年がひょこっと顔を出している。

   目を閉じた猫のような耳としっぽがついた帽子、口元まで隠れるような大きな上着にボタンの代わりなのか首元に大きな時計がついている飾りがある。右眼は前髪で隠しており、アルビノのように白い肌、紅い瞳の美少年。手元にハート型の立体パズルを抱いている。

「あ…あ…っ」

   わなわなと体を震わせながらオルメカは少年を指差す。驚いた様な表情をしており、声が上手く出ないようだ。その様子を見て使い物にならないと判断したソロモンが少年に問う。

「すまないな。勝手に入らせてもらった。…お前は、この図書館の番人か…?」

   ソロモンのその問いに、少年はきょとんとする。小首を傾げ「ばんにん、とはなんですか?」と答えた。

「ボクはここに来た子を案内しているだけです。それとは違うのですか?」

   「番人」という言葉を知らないようだ。だが、この少年はソロモンから見て十二、三歳に見える。これだけ本に溢れた場所で、言葉を知らないことがあるのだろうか?この少年は本の虫…そう呼ばれるような読書好きという訳では無いのか?

「…いや、同じ意味ではない。まぁいい。ここで案内していると言ったな。ここに住んでいるのか?」

「すむ?とはなんですか?ボクは目が覚めた時からここに居ます。それはすんでいるということに事になりますか?」

   少年の答えにソロモンは軽く混乱する。何を言っているんだ?この子供は。まさかとは思うが…記憶が無いのだろうか。
   改めて少年に質問しようとした時、視界の端をオレンジの何かが横切った。咄嗟にその何かを目で追う。…オレンジ色の髪…オルメカだ。そう認識した時には彼女は飛び上がり、本の山に飛び込む。

…いや、違う。よく見ると飛び込んだ先にはあの少年が居る。少年を抱きしめるように飛びつき、バランスを崩し、少年が乗っていた本の山が崩壊した。その勢いのまま、オルメカと少年は本の山に埋もれたのだ。

   バラバラと本が舞う。バサバサと音を立てて散らかる本はどれも分厚めの物なので、埋もれてしまえば相当な重量になる上、角で打てばかなり痛いはずだ。
   大慌てでソロモンは本を退けて二人を発掘する。

「おい…!一体、何をやって……!!」

   上に乗っていた本を退け終えると二人の姿が見え、ソロモンはオルメカを叱ろうとした。今のはあまりにも危険すぎる。だが、彼がその続きを言うことは出来なかった。…オルメカによって遮られた。

「会いたかったよー!!!美少年くーん!!!」

   ガシッと少年を抱きしめ、その頬に頬ずりしている。目の錯覚だろうか、彼女の周囲をハートが乱舞しているように見える。ソロモンは目を細め、その光景を凝視する。やはりハートが舞っているように見える。そんな馬鹿な。慌てて自身の両目を擦り、再度、目を細めて見てみる。
   今度は流石にハートは見えなくなっていた。だが、少年に頬ずりしているオルメカは見える。これは見間違いではなかったらしい。突然の出来事に彼女の腕の中にいる少年は、声も出ないほど石化したように固まっていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

台風のよる、君ひそやかに、魔女高らかに

にしのくみすた
ファンタジー
【空を飛ぶ魔女たちの、もちもち百合ファンタジー・コメディ!】 台風の夜、魔女はホウキで空を翔け――嵐と戦う! この街で台風と戦うのは、ホウキで飛ぶ魔女の仕事だ。 空を飛ぶ魔女に憧れながらも、魔法が使えない体質のため夢を諦めたモチコ。 台風の夜、嵐に襲われて絶体絶命のピンチに陥ったモチコを救ったのは、 誰よりも速く夜空を飛ぶ“疾風迅雷の魔女”ミライアだった。 ひょんな事からミライアの相方として飛ぶことになったモチコは、 先輩のミライアとともに何度も台風へ挑み、だんだんと成長していく。 ふたりの距離が少しずつ近づいていくなか、 ミライアがあやしい『実験』をしようと言い出して……? 史上最速で空を飛ぶことにこだわる変な先輩と、全く飛べない地味メガネの後輩。 ふたりは夜空に浮かんだホウキの上で、今夜も秘密の『実験』を続けていく――。 空を飛ぶ魔女たちの、もちもち百合ファンタジー・コメディ!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...