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鏡花水月 花言葉の導②-2
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二人が再び大風車の辺りに差し掛かった頃、アリスが急に立ち止まった。その事に気づいたソロモンが振り向くと、アリスは腕の中に抱いたままのハート型のパズルに力を込めるように抱いた。
「…どうした?」
風がブワアア…と吹き抜ける。そして、二人の髪や服を揺らしていく。
「あの…」
アリスはソロモンの顔をじっと見つめる。
「…“魔女”って何ですか?」
そう聞いた瞬間、びゅうううーー!と強い風が吹いた。一斉に花びらが舞い、軽く視界を奪う。
その風の音に混じって、ぼすんぼすんと布を挟んで拍手するような音が聞こえた。
「クヒヒヒ…“魔女”とは概念だねェ」
耳に残る嫌味な笑い声も聞こえた。二人はこの笑い声の主を知っている。出来れば会いたくはない相手だ。
「…何故、お前がここにいる…バロウズ」
威嚇するような低い声で名を呼んだ。アリスの前に手を伸ばし、背中に隠れるように指示を出す。アリスは頷いてソロモンの背の方に隠れる。その様子を見ていた声の主は愉快そうに笑う。
「クヒヒヒ…。相変わらず愉快な反応で楽しませてくれるねェ」
宙に舞う花びらが街を彩る。だが、アリスとソロモンには目の前の男しか見えていない。この男は信用できないからだ。警戒を怠るわけにはいかない。
「…一体、何の用だ?オルなら今ここに居ない」
「クヒヒ。だろうねェ。姫ならさっき見かけたさァ」
「!お姉さんに会ったんですか!?それに、魔女が概念ってどういうことなんですか?…何かを知っているんですね?」
柄にもなくアリスが食いついたので、ソロモンもバロウズも面を食らったようだった。
「ふむ…。小さな坊やに免じて、少し教えてあげようかねェ」
キシシシと口元を覆いながら笑う。正直、この男の一挙一動に信憑性は無いが、バロウズが再び姿を現したことで、ソロモンはひとつ思い出したことがある。前にバロウズと会ったとき、この男はこう言っていた。
ー 幻想図書館ってのは魔女が作り出した空間移動型魔力収集装置さね ー
そうだ。そう言っていた。この男は、あの時点でどんな魔法なのかを知っていた。魔女が作り出したことも、幻想図書館の魔法的性質も。
「バロウズ、お前は魔女について何を知っている?」
この男が何処まで正直に話すかは判らないが、何かを知っているなら情報を聞き出す他ないだろう。
「クヒヒヒ…。せっかちだねェ…」
バロウズは、そう言って大風車の横に続く階段の上に座る。すっぽりと服の袖で隠した手をひらひらとさせる。
「…さァて、キミ達は、魔女について知りたいんだったねェ」
バロウズが座った階段の下から見上げるようにアリスとソロモンが立つ。
「…ああ、そうだ」
「それだけじゃないですよ、お姉さんを見かけたって言いましたよね?…何か変なことしてないですよね?」
アリスにしては、珍しくはっきりと牽制する言い方だった。これを愉快に思ったバロウズは満足そうに歯を見せて笑う。
「クッヒヒヒヒ…!いいねェ…その顔。クヒヒヒ…。まァ、姫を守る騎士殿には知っておいてもらわないといけないからねェ」
「…いい加減、その勿体ぶった言い方は止めてもらえないか」
「クヒヒ…。仕方ないねェ…。それじゃあ本題に入ろうかね。キミ達が心配しているようなことはしてないよォ。姫を見かけた。それだけさァ。話もしていない」
「…本当、ですね?」
「クヒヒ。信じる信じないはお任せするがねェ。…さァて、魔女のことだったねェ…」
「バロウズ、お前は魔女を概念だと言ったな?それはどういう意味だ?」
「簡単なことさァ。すべての世界にはとある概念が存在する。それは魔女だったり、神様だったりするねェ…。勿論、多くの人間はそんなものをいちいち感じちゃァいないねェ。だァけど、世界を構成するにはそれぞれの世界に共通概念があるものでねェ、それらを呼称するのに魔女やら神と呼ぶんだよォ」
「共通概念の呼称…?なんだそれは…?」
「ンー、そうだねェ。わかりやすく言えば、この世界の共通概念は魔法と豊富な大自然さね。誰もが知っているもの。これを魔女と称することができるねェ」
「…えと、ますますよくわからないんですが…。この世界に魔法があって、大自然が広がっているのはわかりますが…」
「ンンー?なァんだ。わかっているじゃァないか。そうやって誰もが認識しているこの世界の事象、構成する要素、そのものが世界の共通概念。それを、この世界では“魔女”と呼ぶのさァ」
「世界を構成する要素?それが魔女なのか?」
「ンー、そう言うことだねェ。だけどねェ、それだけじゃないんだよォ」
「え?それはどういうことですか?」
アリスがそう聞いた後、再びビュオオオ!と強い風が吹き、花びらが視界を奪うほど空に舞う。咄嗟に目を瞑ったアリスとソロモンが、もう一度目を開けた時、階段の上にはすでにバロウズの姿は無かった。
「あいつ…また逃げたな…」
「また、いなくなっちゃいました…」
「急に現れてはいつも中途半端に情報を寄越していくな…。何なんだ一体…」
風に乱れた髪をかき上げて金色の髪を整える。
「お姉さんに聞いたら、何かわかるかもしれませんよね?」
「あ?ああ、そうだな…。俺はもともとこの世界の人間ではないし、アリスも外については詳しくないからな」
「ですです。世界の構成とかはお姉さんの方が知っていると思います」
「だな…。それなら、オルを捜すとするか。…まだ、宿屋にいてくれると楽なんだがな…」
そう結論づいた二人は、ひとまず宿屋に戻ることにした。
「…どうした?」
風がブワアア…と吹き抜ける。そして、二人の髪や服を揺らしていく。
「あの…」
アリスはソロモンの顔をじっと見つめる。
「…“魔女”って何ですか?」
そう聞いた瞬間、びゅうううーー!と強い風が吹いた。一斉に花びらが舞い、軽く視界を奪う。
その風の音に混じって、ぼすんぼすんと布を挟んで拍手するような音が聞こえた。
「クヒヒヒ…“魔女”とは概念だねェ」
耳に残る嫌味な笑い声も聞こえた。二人はこの笑い声の主を知っている。出来れば会いたくはない相手だ。
「…何故、お前がここにいる…バロウズ」
威嚇するような低い声で名を呼んだ。アリスの前に手を伸ばし、背中に隠れるように指示を出す。アリスは頷いてソロモンの背の方に隠れる。その様子を見ていた声の主は愉快そうに笑う。
「クヒヒヒ…。相変わらず愉快な反応で楽しませてくれるねェ」
宙に舞う花びらが街を彩る。だが、アリスとソロモンには目の前の男しか見えていない。この男は信用できないからだ。警戒を怠るわけにはいかない。
「…一体、何の用だ?オルなら今ここに居ない」
「クヒヒ。だろうねェ。姫ならさっき見かけたさァ」
「!お姉さんに会ったんですか!?それに、魔女が概念ってどういうことなんですか?…何かを知っているんですね?」
柄にもなくアリスが食いついたので、ソロモンもバロウズも面を食らったようだった。
「ふむ…。小さな坊やに免じて、少し教えてあげようかねェ」
キシシシと口元を覆いながら笑う。正直、この男の一挙一動に信憑性は無いが、バロウズが再び姿を現したことで、ソロモンはひとつ思い出したことがある。前にバロウズと会ったとき、この男はこう言っていた。
ー 幻想図書館ってのは魔女が作り出した空間移動型魔力収集装置さね ー
そうだ。そう言っていた。この男は、あの時点でどんな魔法なのかを知っていた。魔女が作り出したことも、幻想図書館の魔法的性質も。
「バロウズ、お前は魔女について何を知っている?」
この男が何処まで正直に話すかは判らないが、何かを知っているなら情報を聞き出す他ないだろう。
「クヒヒヒ…。せっかちだねェ…」
バロウズは、そう言って大風車の横に続く階段の上に座る。すっぽりと服の袖で隠した手をひらひらとさせる。
「…さァて、キミ達は、魔女について知りたいんだったねェ」
バロウズが座った階段の下から見上げるようにアリスとソロモンが立つ。
「…ああ、そうだ」
「それだけじゃないですよ、お姉さんを見かけたって言いましたよね?…何か変なことしてないですよね?」
アリスにしては、珍しくはっきりと牽制する言い方だった。これを愉快に思ったバロウズは満足そうに歯を見せて笑う。
「クッヒヒヒヒ…!いいねェ…その顔。クヒヒヒ…。まァ、姫を守る騎士殿には知っておいてもらわないといけないからねェ」
「…いい加減、その勿体ぶった言い方は止めてもらえないか」
「クヒヒ…。仕方ないねェ…。それじゃあ本題に入ろうかね。キミ達が心配しているようなことはしてないよォ。姫を見かけた。それだけさァ。話もしていない」
「…本当、ですね?」
「クヒヒ。信じる信じないはお任せするがねェ。…さァて、魔女のことだったねェ…」
「バロウズ、お前は魔女を概念だと言ったな?それはどういう意味だ?」
「簡単なことさァ。すべての世界にはとある概念が存在する。それは魔女だったり、神様だったりするねェ…。勿論、多くの人間はそんなものをいちいち感じちゃァいないねェ。だァけど、世界を構成するにはそれぞれの世界に共通概念があるものでねェ、それらを呼称するのに魔女やら神と呼ぶんだよォ」
「共通概念の呼称…?なんだそれは…?」
「ンー、そうだねェ。わかりやすく言えば、この世界の共通概念は魔法と豊富な大自然さね。誰もが知っているもの。これを魔女と称することができるねェ」
「…えと、ますますよくわからないんですが…。この世界に魔法があって、大自然が広がっているのはわかりますが…」
「ンンー?なァんだ。わかっているじゃァないか。そうやって誰もが認識しているこの世界の事象、構成する要素、そのものが世界の共通概念。それを、この世界では“魔女”と呼ぶのさァ」
「世界を構成する要素?それが魔女なのか?」
「ンー、そう言うことだねェ。だけどねェ、それだけじゃないんだよォ」
「え?それはどういうことですか?」
アリスがそう聞いた後、再びビュオオオ!と強い風が吹き、花びらが視界を奪うほど空に舞う。咄嗟に目を瞑ったアリスとソロモンが、もう一度目を開けた時、階段の上にはすでにバロウズの姿は無かった。
「あいつ…また逃げたな…」
「また、いなくなっちゃいました…」
「急に現れてはいつも中途半端に情報を寄越していくな…。何なんだ一体…」
風に乱れた髪をかき上げて金色の髪を整える。
「お姉さんに聞いたら、何かわかるかもしれませんよね?」
「あ?ああ、そうだな…。俺はもともとこの世界の人間ではないし、アリスも外については詳しくないからな」
「ですです。世界の構成とかはお姉さんの方が知っていると思います」
「だな…。それなら、オルを捜すとするか。…まだ、宿屋にいてくれると楽なんだがな…」
そう結論づいた二人は、ひとまず宿屋に戻ることにした。
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